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 養老さんの書籍は、どこの図書館に行っても必ず置かれている。難しい書き方をしていないから、誰であっても読みやすいだろう。2010年9月初版。
 副題のように書かれている「三方よし」については、下記リンクを。
     《参照》   『風の谷のあの人と結婚する方法』 須藤元気 (ベースボール・マガジン社)
              【『私たちが』が幸せになる】

 

 

【死も武器も美学】
徳川  昔の日本の武士にとって、戦うことも、討ち死にすることも美学の一つだったのでしょう。己の美学を全うするためには、武具も美しさの一部を担う必要があったのです。やがて戦争が終わって世の中が平和になると、美の部分だけが残った。その結果、武具が美の世界に足を踏み入れるという不思議な現象が起こったのだと思います。
養老  たとえ武器であっても、美しいものに反応するのは日本人の感覚です。 (p.24-26)
 「命を懸けて、○○をする」というような表現は、諸外国にはないらしい。

 

 

【英語教育は全員に必要か?】
養老  英語を公用語として使うべきかどうか、僕はよくわかりません。英語の教育を等しく全員に行うより、プロフェッショナルの技として考え、国際会議やビジネスで外国人と渡り合うような「戦闘部隊」を養成するしかないのではないでしょうか。(p.33)
徳川  いよいよ小学校で英語の教育が始まるようですが、 ・・・(中略)・・・ 多くの子どもたちに苦手意識を持たせるくらいなら、むしろ日本史の時間を増やして、子どもたちの自国に関する知識を教えたほうがいいと思います。(p.45)
 両者の意見に、まったく同感。
 日本人は日本語だけで生涯を生き切った方が、世界の中ではよりユニークな日本文化がなお一層深みを増すだろう。日本語の特殊性について、現在の科学は完全解明の域に達していないけれど、それが明確になった場合、早期から英語教育を施したことで失ったものの大きさに愕然とするはずである。
   《参照》   『言霊はこうして実現する』 大野靖志 〈七沢賢治〉 (文芸社)
             【DNAに働きかける日本語】
   《参照》   『日本人の美徳』 櫻井よしこ (宝島社新書)
             【英語教育を始める時期】
   《参照》   『英語は勉強するほどダメになる』 栄陽子 (扶桑社新書) 《前編》
             【これで「英語をモノにした」と言えるのか?】
養老  言葉を交換することで、お互いに意思や感情の疎通が可能であると安易に思うのは、じつは危うい考えではないか。極論をいえば、むしろコミュニケーションの相手が異質であるほど、外国語は下手な方がよいのではないか。
徳川  痛いほどよく分かりますが、 ・・・(中略)・・・ (p.47)
 (中略) の部分には、片言でもいいから、英語を怖がらないようにする教育は必要だと思います、と書かれている。そんなことなら、学校でわざわざ時間を割かなくても、いまどきの若者は自分で十分できるだろう。後付けで習えることである。若い世代は、世界とほぼ対等に戦えるようになった日本人スポーツ選手たちの活躍を見ているから、オジサン世代のように諸外国に対してもはやコンプレックスなど持っていないのだから。

 

 

【「文化国家」こそが日本の夢】
徳川  利の世界で一流になるということが、はたして日本の夢だったのか。私の記憶では、終戦後の日本人がひたすら経済発展をめざしたというのは、間違いです。終戦直後から、日本人はむしろ「文化国家」を目標としていました。
 1950年代から60年代の初めごろまで、「文化」という言葉が世間で増えました。学校祭や学園祭が「文化祭」になり、「文化包丁」から「文化住宅」に至るまで、何でも「文化」の時代でした。
 高度成長期になった60年代の後半以降、「経済」という言葉が全面で出て、「文化」という言葉が後退してしまったのだろう。
 既に豊かさを実現している日本が、これ以上「経済立国」をめざしても意味がない。日本は、世界が進むべき方向の雛型となるために、意識的に「文化国家」へと舵を切るべきだろう。

 

 

【礼儀と多様性】
養老  最近の日本が老いも若きも非常に堅苦しくなってきて、社会が多様化していないことが心配です。世の中、少し外れている人がいてもいい。その点、昔はよくできていました。礼儀作法がきちんとしていたので、それぞれの個人的事情は礼義の中に隠すことができた。人間社会が成り立つ程度の礼儀作法さえきちんとしていれば、あとはいろいろで構わない、ということになります。(p.64)
     《参照》   『美人の仕事術』 中谷彰宏 (ぜんにち)
              【礼儀正しいことの目的】

 

 

【あとは「よきにはからえ」と】
徳川  江戸時代には、上に立つ武士階級に対して徹底的な儒教教育が行われました。しかし、面白いことに、彼らは剣術以外、算数や技術などの実学をせず、ひたすら「人の道とは何か」を学んでいました。そういう人たちがリーダーになり、実務は民に任せたから、江戸の社会はうまくいった。その意味で、あまり行政組織や法律を細かくしてはいけないんです。
養老  大枠をつくり、あとは「よきにはからえ」と。
徳川  まさにそういうことです。 (p.124-125)
 なんでもかんでもルール化して、それを守ってさえいればいいと思うようになると、「よきにはからおう」とする知恵が磨かれなくなってしまう。知恵が磨かれなくなると、本当にバカバカしいことや無駄の多い社会になってしまうのである。
     《参照》   『探そう!ニッポン人の忘れもの』 フジテレビ (扶桑社)
               【「規制・規則・法律には絶対に従うべき」と思い込む愚かさ】

 江戸時代の武士階級は、今で言うなら官僚である。
 今の官僚は、自分らの利権を固めるために複雑な法整備をしているだけで、儒学なんてあっちの世界事なんだろう。ノーパンしゃぶしゃぶに通っていた段階でモラル不在だったのだけれど、それを契機に、今や日本の国富をアメリカに流すための国賊集団である。
    《参照》   『日米「振り込め詐欺」大恐慌』 副島隆彦 (徳間書店) 《前編》
               【大蔵落城】

 

 

【貧乏でも暮らせる社会】
養老  そもそも貧乏でも明るく暮らせる社会が江戸だったわけです。ぼくは江戸の小咄のなかでも貧乏話が一番好きですね。あれは本当に貧乏を笑い飛ばしているんですよ。
 たとえば、尾羽打ち枯らした浪人が二人で日向ぼっこしていた。一人の浪人が「金はかたきじゃ」と切り出すと、もう一人がしみじみと、「本当に」といって、そのあとに「久しくかたきに巡り合わない」という、仕舞いのセリフをいうわけです(笑)。(p.134)
 今は貧乏だと暮らせない社会になってしまっていて、小咄で笑い飛ばせるような状況じゃあないけれど、小咄すら忌避されるような社会では、本当に息苦しくなってしまう。
 最終的な解法はマネーフリー社会の実現しかないだろう。それを実現するにはフリーエネルギーの社会定着が必須である。未だに、フリーエネルギーの実現を阻んでいる連中が世界を支配しているけれど、その支配が終われば、マネーフリー社会は今から遅くとも20年以内に実現するだろう。それまで、なんとか生き延びよう。

 

 

【江戸の職人たち】
徳川  だいたい江戸の職人たちは、一日に6時間ぐらいしか働いていなかったようです。一応、明日のメシが食えて、ちょっとお酒が飲めて、ゴロッと寝ることができればそれでいい、と彼らは思っていたのです。・・・中略・・・彼らはあまり金持ちになるために、あくせく働く気持ちがなかったのではないかと思います。(p.136-137)
 現在の若者たちの精神指向は、江戸の職人に近いだろう。
     《参照》   『夢がなくても人は死なない』 三浦展 (宝島社) 《後編》
               【週三日労働でいい】

 というより、高度成長期を生きた大人たちの精神指向の方がむしろ、日本精神史上例外なはずである。

 

 
【「男女生存機会均等法」を】
養老  僕は以前『京都新聞』に、男女雇用機会均等法を叫ぶなら、同時に「男女生存機会均等法」もつくってほしいと書いたことがあります。
徳川  それは面白いご意見だ(笑)。
養老  ご承知のように、日本では男性の寿命が女性に比べて一割程度短い。ぼくはこれを「社会的に視て異常な現象だと思っています。・・・中略・・・。つまり、男性側に大きなストレスが掛かっている日本社会の現状を放置していることが問題で、本音を聞くと、女性にもっと働いてほしいという。大学に行くとよくわかりますが、とにかく男子の学生に元気がない。(p.170)
 近年の日本の若い女の子には専業主婦願望が増えているそうだけれど、一方で、若い男の子は社会に出る意欲をなくしているらしい。しかし、自由なニートやフリーター生活が長くなり、守ろうとする何ものかがないと、生きる気力が膨らまないだろう。家族を守るために社会に出て働こうとする精神の核をなくした元気のない男たちは、守るもの(家族)に変わる新たな価値を独自に見出さないと、より一層短命になるような気がする。

 

 

【「宗教からの自由」がある日本は、きわめて例外的な国】
養老  作家のC・W・ニコルさんは「日本に住んでいてよかったことを一つ挙げてください」と質問されたとき、「宗教の束縛からの自由があること」と答えました。つまり、「宗教からの自由」があるのはきわめて例外的な国だということです。(p.185)
     《参照》   『こんなにすごい日本人のちから』 日下公人 (WAC)
              【日本の文化がトップなのは・・】

 

<了>
  養老孟司・著の読書記録