エビデンスの序列
今回は、「こんまりさんの話」と少し関係がある。
パンフレットを整理していると、よく面白いものを発見する。長期的にみて読みそうにないパンフレットは、保存する前に捨ててしまうことが多いからである。
このブログでは、時々特に説明なく「エビデンス」という用語を使っている。
エビデンスとは、医療の世界では、診断を決定したりや治療法を選択する際に、確率や信頼性の視点で指針とされるものである。診断根拠や治療効果など、臨床に即したもので参考になる資料でもある。
エビデンスという専門用語は、「線維筋痛症、慢性疲労症候群、疼痛性障害」のテーマでよく出て来る。(例えば、参考1、参考2)
エビデンスは、直感的にはおかしいのでは?と思われるものもあるが、正直、これを全て無視していると、医療とは遠ざかり、まじないや奇妙な宗教に近いものになりかねない。
エビデンスのうち、これはちょっと・・と思われるものの1つに、双極性障害の治療における「3環系抗うつ剤を不適切としていること」が挙げられる。
日本うつ病学会の双極性障害ガイドライン2012では、双極性障害の大うつ病エピソードの治療として、
推奨される治療
セロクエル
リチウム
ジプレキサ
リーマス
その他の推奨されうる治療
リーマスとラミクタールの併用
電気けいれん療法(ECT)
推奨されない治療
3環系抗うつ剤の使用
抗うつ剤の単独治療など
を挙げている。このガイドラインを通して読むと、適応外処方も多く紹介されている(例えば上ではセロクエル)。国の保険適応を勘案せず、堂々記載されていることは、精神科の業界だけに留まらないが、今後考えていかねばならない種々の問題を孕んでいる。
その理由だが、日本の各地域の厚生局の指導では、適応外処方を厳しく取り締まっているからである。最悪、保険医の取り消しまでありうるため、そういうことに敏感な医師も多い。
実際、知り合いの年配の医師はセロクエルは統合失調症にしか使わないらしい。これでは患者は良くなるものも良くなるわけがないと言えよう。セロクエルは臨床では統合失調症に限らず、双極性障害や単極性うつ病、境界性人格性障害、反社会性人格障害、あるいは神経症や広汎性発達障害に至るまで広く処方されている。
上の双極性障害の大うつ病エピソードでは、推奨されない治療として、3環系抗うつ剤の使用と抗うつ剤の単独治療を挙げている。ところが、深い双極性障害のうつ状態では、ECTやアナフラニールの点滴は極めて有効である。しかも、アナフラニールの点滴には躁転もかなり稀である。
3環系抗うつ剤では躁転はアモキサンに多く診られる。
また、かつて1型躁状態のエピソードを認めているのに、長く数十年単位で安定しているルジオミールやアンプリット単剤の人は稀ではない。
なぜ、このように臨床経験との乖離が診られるかだが、たぶん双極性障害の母集団にはかなり不純物が混じっていることも関係ありそうである。また、やはり双極性障害も病期により、薬の反応性が変化していくこともあると思う。
操作的に診断する以上、このようなエビデンスに基づく資料で「これはおかしいと思えるもの」が混入するのはやむを得ない。
エビデンスの序列(信頼性の高い順)
①N-of-1 RCT
1症例に対して行われるRCT。1人の患者が治療薬とプラセボの時期をランダムに繰り返し、二重盲検のもとに評価する。
②RCTの系統的レビュー
妥当な臨床研究を系統的に収集し、批判的に吟味し統合したレビュー。
③RCT
無作為割り付け比較研究。
④コホート研究
未来に向かって調べる観察的研究
⑤症例対照研究
ケースコントロール・スタディ。
既に疾病に罹患した人を症例として選んで実施される後ろ向き研究。
⑥基礎医学
⑦非系統的臨床経験
このブログは、徒然なるままに臨床での個人的な意見を書き綴ったものなので、上のエビデンスレベルとしては最も信頼性の低い⑦非系統的臨床経験に位置している。
かといって、参考にならないかと言えば、またそれはまた別な話。同じような話は、神田橋條治先生の本にも出てくる。
このブログでは、上の信頼性の高い研究ではあまり発表されないような臨床での治療のヒントが多く含まれている。実際、過去ログでは「20%の人に有効で60%の人に有害な薬」というエントリがあるほどである。
僕は「プラクティカルであること」を重視しているからである。実際、過去ログの「統合失調症とトピナ」では、
精神科の薬物療法の進歩は、適応外処方の歴史の上に成立している。
と記載している。
参考
ドラッグラグと高薬価
リフレックスと夢
認知症のBPSDを抑えると言う意味
カタプレスのアメリカでの適応について
統合失調症とトピナ
パンフレットを整理していると、よく面白いものを発見する。長期的にみて読みそうにないパンフレットは、保存する前に捨ててしまうことが多いからである。
このブログでは、時々特に説明なく「エビデンス」という用語を使っている。
エビデンスとは、医療の世界では、診断を決定したりや治療法を選択する際に、確率や信頼性の視点で指針とされるものである。診断根拠や治療効果など、臨床に即したもので参考になる資料でもある。
エビデンスという専門用語は、「線維筋痛症、慢性疲労症候群、疼痛性障害」のテーマでよく出て来る。(例えば、参考1、参考2)
エビデンスは、直感的にはおかしいのでは?と思われるものもあるが、正直、これを全て無視していると、医療とは遠ざかり、まじないや奇妙な宗教に近いものになりかねない。
エビデンスのうち、これはちょっと・・と思われるものの1つに、双極性障害の治療における「3環系抗うつ剤を不適切としていること」が挙げられる。
日本うつ病学会の双極性障害ガイドライン2012では、双極性障害の大うつ病エピソードの治療として、
推奨される治療
セロクエル
リチウム
ジプレキサ
リーマス
その他の推奨されうる治療
リーマスとラミクタールの併用
電気けいれん療法(ECT)
推奨されない治療
3環系抗うつ剤の使用
抗うつ剤の単独治療など
を挙げている。このガイドラインを通して読むと、適応外処方も多く紹介されている(例えば上ではセロクエル)。国の保険適応を勘案せず、堂々記載されていることは、精神科の業界だけに留まらないが、今後考えていかねばならない種々の問題を孕んでいる。
その理由だが、日本の各地域の厚生局の指導では、適応外処方を厳しく取り締まっているからである。最悪、保険医の取り消しまでありうるため、そういうことに敏感な医師も多い。
実際、知り合いの年配の医師はセロクエルは統合失調症にしか使わないらしい。これでは患者は良くなるものも良くなるわけがないと言えよう。セロクエルは臨床では統合失調症に限らず、双極性障害や単極性うつ病、境界性人格性障害、反社会性人格障害、あるいは神経症や広汎性発達障害に至るまで広く処方されている。
上の双極性障害の大うつ病エピソードでは、推奨されない治療として、3環系抗うつ剤の使用と抗うつ剤の単独治療を挙げている。ところが、深い双極性障害のうつ状態では、ECTやアナフラニールの点滴は極めて有効である。しかも、アナフラニールの点滴には躁転もかなり稀である。
3環系抗うつ剤では躁転はアモキサンに多く診られる。
また、かつて1型躁状態のエピソードを認めているのに、長く数十年単位で安定しているルジオミールやアンプリット単剤の人は稀ではない。
なぜ、このように臨床経験との乖離が診られるかだが、たぶん双極性障害の母集団にはかなり不純物が混じっていることも関係ありそうである。また、やはり双極性障害も病期により、薬の反応性が変化していくこともあると思う。
操作的に診断する以上、このようなエビデンスに基づく資料で「これはおかしいと思えるもの」が混入するのはやむを得ない。
エビデンスの序列(信頼性の高い順)
①N-of-1 RCT
1症例に対して行われるRCT。1人の患者が治療薬とプラセボの時期をランダムに繰り返し、二重盲検のもとに評価する。
②RCTの系統的レビュー
妥当な臨床研究を系統的に収集し、批判的に吟味し統合したレビュー。
③RCT
無作為割り付け比較研究。
④コホート研究
未来に向かって調べる観察的研究
⑤症例対照研究
ケースコントロール・スタディ。
既に疾病に罹患した人を症例として選んで実施される後ろ向き研究。
⑥基礎医学
⑦非系統的臨床経験
このブログは、徒然なるままに臨床での個人的な意見を書き綴ったものなので、上のエビデンスレベルとしては最も信頼性の低い⑦非系統的臨床経験に位置している。
かといって、参考にならないかと言えば、またそれはまた別な話。同じような話は、神田橋條治先生の本にも出てくる。
このブログでは、上の信頼性の高い研究ではあまり発表されないような臨床での治療のヒントが多く含まれている。実際、過去ログでは「20%の人に有効で60%の人に有害な薬」というエントリがあるほどである。
僕は「プラクティカルであること」を重視しているからである。実際、過去ログの「統合失調症とトピナ」では、
精神科の薬物療法の進歩は、適応外処方の歴史の上に成立している。
と記載している。
参考
ドラッグラグと高薬価
リフレックスと夢
認知症のBPSDを抑えると言う意味
カタプレスのアメリカでの適応について
統合失調症とトピナ