ヤマハの南西事業部は拠点が幾つもあり、所属もバラバラだ。
鹿児島事務所、屋久島、硫黄島、諏訪之瀬島、船舶部門、航空部門、小浜島・・開発中もあれば既に体制が決まった部門もある。
それら事業所はヤマハ(株)の子会社の中日本観光が運営、後日ヤマハリゾートに社名変更した。
中日本観光本社はヤマハ(株)の本社内にあり、本社採用社員、現地採用社員、現地嘱託などに分かれている。
開発部門や船舶部門など、宿泊経営が主業務の中日本観光で維持出来ない部門にはヤマハ(株)が介入、これもまた本社採用社員、現地採用社員、現地嘱託に分かれ、給与面・転勤面等の待遇が異なる。 ヤマハ発動機からの出向社員もいる。
南西事業部はヤマハグループのモザイク国家となっていた。
野人の所属はヤマハ(株)の本社社員で、最も待遇面に恵まれていた。
屋久島、硫黄島に次いで諏訪之瀬島・小浜島施設の開発も終わり、完成・営業開始と共に社員の統一整理が必要になった。
問題になるのがヤマハ本社から派遣された社員達で、多くはないが各施設で重要な役割を担っていた。
運営をヤマハ子会社の中日本観光に統一して全員本社に引き揚げたら現場が困ることになる。
出来れば会社移籍してそのまま残って働いてもらいたいと言うのが会社の本音だが、こればかりは本人の意向が優先される。
会社名のブランドと待遇を重視すれば本社に帰りたいだろうし、現地の仕事への愛着を重視すれば子会社への「移籍」となる。
そのような話が持ち上がっていたのは知っていたが、野人にはどうでもよいことでありこの地でやるべきことが決まっている。
呼ばれた3人は通常の人事課ではなくじいさまが指定・自ら選んだ社員だった。 所属会社に関係なくこき使うじいさんだが、人事部はそうは行かない。
じいさまが使う社員は社内でも簡単に配属転勤出来ず、すべてじいさまの許可がいる。
まして会社名が変わるならなおさらで、人事担当重役はじい様に判断を仰いだのだろう。
野人も新入社員は最初の1年間は必ず本社と言われた。
本来はそれが決まりであり支社への転属はそれからだが、じいさまの一声で2か月で諏訪之瀬島へ配属された。
拠点の調査開発はヤマハ本社だが、運営は子会社になる。
人事担当重役から委ねられてじい様も相当困ったことだろう、じい様にとってはどうでもよい煩わしいことだが、当人にとっては会社が変わり、待遇も異なる一大事であり、単なる転勤、出向とは異なる。
それを辞令一つで一方的にやることはヤマハとしては出来ない。
3人の所属は人事担当ではなくじいさまが決めなければならないことだが、どうしてよいのかわからなかったのだろう。
それがじいさまの人間らしいところだな。
中日本観光はヤマハの子会社でもじい様が社長兼務なのだから一言「黙ってついて来なさい」と言えばよいのだ。
巨大なヤマハ発動機もじい様が作りじい様が初代社長だが、創生期は楽器会社ヤマハの子会社だった。
普通はヤマハ本社の正社員であることを誇りに思うだろうが、就職活動に関心がなかった野人はヤマハの社名に関心も愛着もない。 じいさまの指令なら孫会社でも別会社でも構わず、待遇などどうでもよい。
会社員などやる気のなかった野人が入社した理由は、大先輩の命令とじいさんへの関心だけ。
しかし他の2人はヤマハ本社という会社と業務内容で選んだはず、それが当然だからだ。
ヤマハグループの総帥であり、3万人の社員の頂点に立って世界中に強烈な号令を出し続けたじい様が、20代の末端社員3人の為に1日費やして悩み、一緒にサウナに入り、ゲームして食事をご馳走した。
適切な言葉が浮かばず、逃亡しながら考え続け、最後まで言い出せなかった。
社員への業務命令は激しいじい様も、個人の生き方の自由は尊重していた。
3人がいないとじい様は困り、技能を買われた他の2人と違い、じいさまの無理難題を一手に引き受ける野人の代わりは何処にもいない。
それでも、会社を選ぶか仕事を選ぶか、本人が決めることに口を出すべきではないと判断したのだろう。
「子会社に黙って移籍してくれ」と頭を下げることは出来なかったが、腰を下げることは出来た。
じい様の気持ちは伝わったしそれで十分だな。
それから数週間後に進退の選択をする面接会が持たれた。
場所は鹿児島空港内にある航空部門の子会社で、ヤマハ本社から人事担当重役自ら出向いてきた。
飛行機が遅れ、面接が最後になった野人は重役達を待たせてしまった。
事業の状況説明の後に会社選択、条件面などの希望を聞かれたが何もない。
「すべておまかせします」 その一言で終わった。
人事担当の高原重役は立ち上がって野人の手を両手で握りながら言った。
「ありがとう そう言ってくれたのは君が初めてだ」
野人の前に何人面接したか聞かなかったが、相当揉めたんだろうな。 疲れ果てた重役の様子からそれがわかる。
高原重役と会ったのは野人が社長室で面接した時以来で、野人が入社した理由とじいさまの真意を知っている。
最も野人に気を使っていた。
野人をこのまま現地に残す為に移籍後の給与の上乗せを考えていたようだが、そんなものは不要、子会社の規定通りでよい。
仕えた以上、所属会社や待遇や給与面で文句を言う気はまったくない。
野人が仕えたのは会社ではなく最初からじいさまなのだから。
重役にそのように伝えた。
じいさまの命令に従うが、命令に対する文句はじい様に直接言えばよい。 労働組合にも関心はなく入ることはない。
じいさまには誰も逆らえないのだからせめて野人が代表して抵抗しないとな。
抵抗し続けて「バカ~~
」の洗礼を誰よりも浴び続けたが、その程度で怯む野人ではない。
クソジジイ・・と言って 無視 指令は黙って実行すればよい
面接の結果はじい様に報告が行くはず。
「そうかそうか~
」と子供みたいに喜ぶだろうな。
少しは接待してくれたじい様への恩返しになるだろう。
じいさまの専用ジェット機 ⅯUー2 ムー![]()
飛行場 誘導係 デスパッチャー・むー![]()
何だか せすない な・・ 開発中はヒマで・・
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