これはもう、どんな事だろうと「私の意見」を聞く耳は無いな……と思った私は、その段階で本当にもう
「最低限、自分が言いたい事だけ『とにかく』言っておく」
…ことに徹する事にした。
『食材リスト』の話にしても、『ナッツ』と『クリ』に会った最初の頃は
「出来るだけ手に入りやすい、代用出来る素材で…」
…と考えていた。
しかしこの際だ。
日本食の複雑さというかコノ国で作る難しさを知らしめるのも良いだろうと思い、一般にも少しずつ知られて来た『抹茶』や『レンコン』ばかりでなく、コノ国では未だ完全に「特殊素材」と言えるような『ゆかり』や『山芋(=長芋)の粉』まで、ちゃんと購入先も記入して、微に入り細に渡るまでのリストを書き上げ『ナッツ』に返送した。
すると、今度は「ありがとう」どころか「受け取った」というような一行メールすら返って来ない。
まさに『欲しいモノ手に入れたら後はこっちのモノ』か?
ホント「判りやすい人」だな~、とは思ったが、その時点で私は『ナッツ』という人間と対等に、特に『経営者』と『料理長』として向き合う事に心から、本格的に疲れを感じ始めていた。
いや、『ナッツ』は最初から私と「対等」なんて思っていなかっただろうけど、元々「料理」さえ出来ていれば私は良くて、自分から『料理長』で申し込んだ訳でもない。
ある程度の時間数と、安定した「仕事」に就く事さえ出来ればアノ『職安』から解放される……それが私の中で「一番の目的」と言えただろう。
特に「今の私」には「地位」や「給料額」にも必要以上に執着も無い。
…もう、「主役」は『ミケ』に任せようか?
…ふと、そんな言葉が頭に浮かんだ。
それなりに料理が出来る「日本人」なのだから基本的な事は問題無いし、肩書だけであろうと『料理長』という立場は彼女に任せて、私は週30時間前後の『パートのおばちゃん』でエエんだよな……!
そうなれば『ナッツ』の尻ぬぐいをしている気分にもならないだろうし、『ミケ』の方にしても将来の為に出来るだけお金が欲しい、と言っていたのだから好都合じゃないか?
『ミケ』のアパート(日本で言うマンション)の詳しい住所は聞いていなかったが、場所はちゃんと彼女から教えて貰っていたし、何より買い物途中に簡単に寄り道出来る所だった。
今の私は運動と買い物と気分転換を兼ねて毎日のように出ている(車が無いので買いだめ出来ない&冷蔵庫が大きくない)から、『わざわざ出向く』という訳でもない。
『ミケ』は仕事に毎日行っている訳ではないが、行くとなったら早くても昼過ぎからだ、と言っていた。
明日、買い物ついでに誘いに行こう。
仕事が休みだったら彼女の家に招き入れてくれるかもしれない。
仕事があるなら一緒に街に出てまたコーヒーでも飲むの良いかな。
天気が良ければ、アパートの隣にある公園でも良いな……そんな事を考えながらその夜は眠りについた。
(これも今から思えば……だけれども、その夜の時点でメールなど送っていたらどうなったかな、と思う)