東シナ海流64 おっさんの雄叫び | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

じいさんに野人を貸して欲しいと依頼したのは新しく赴任した総支配人だった。

南西事業所は鹿児島市内の天文館にある「鹿児島事業所」、鹿児島空港にあるヤマハが経営する航空会社「日本内外航空」、屋久島の宿泊施設と船舶部門、硫黄島の宿泊施設と私設飛行場と牧場、諏訪之瀬島の宿泊施設と私設飛行場と農園がある。

 

それらを統括する支配人は元ヤマハ発動機創世記の社員で、じいさんの下で働き、会社を辞めたその後は釣り道具店主。

じいさんとの交流は続き、たまに釣りに出かけていた。

 

諏訪之瀬島にいる時、一度じいさんと共に浜松から専用ジェットでやって来たことがある。

80キロを超える大男で顔もゴツイが態度も横柄。

最初の言葉は・・

 

「君が用心棒の野人か 腕前のテストだ」

 

と・・ いきなり股間に蹴りが飛んできた。

蹴るつもりはなく寸前で止めるつもりだったのだろうが、本能で反応した野人は手で蹴りを払いながらすくい上げた。

 

おっさんは軸足を中心にクルリと半回転、背中からドスンと地に落ちた。

すぐに立ち上がったおっさんは、何事もなかったように歩き始めたが、バツが悪かったようで振り向かなかった。

空手をやっていたらしく、飛行機の中で「テストするからまかせておいて」くらいのことをじいさんに言ったのだろう。

 

目の前で見ていたじいさんは 「ありゃ・・汗

そんな顔して何も言わなかった。

 

それ以来おっさんは野人を苦手として言葉使いも丁寧になったが、皆に対しては超が付くほど横柄だった。

石鯛釣りで礒に渡すと、当たりがあるたびに竿が折れそうなくらい思い切り竿を立てて合わせるのだが、毎回バックフラッシュでリールに巻かれた糸がグチャグチャのおまつり。

釣っている時間よりもリールを分解修理している時間の方が長かった。

じいさまへの釣りの講釈は延々と続くのだが、こりゃ何ともならんの大仏だな。

 

じいさまの心をどうやって動かしたのかはわからないが、とにかく総支配人に任命された。

たぶん・・じいさまは

「そこまで言うならやってみなさい」と承知したのだろう。

 

やがて島の各施設や一湊の船舶基地に大量の釣り具が送られて来た。

使い物にならない小魚釣りセットや浮きや「おつとめ品」と表示されたつまらないおもちゃがどっさり・・

釣り具屋を閉めて赴任する条件としてヤマハがすべて買い上げたのだ。

船舶課に就職したばかりの18歳のまむしの頭は、毎日のようにガラクタの整理に追われた。

 

野人は船舶課の船員ではなく宿泊施設に赴任した。

仕事柄行き来はあったが船舶課は船員法が適用、野人は労働基準法で船員ではない。

 

おっさんは張り切って釣り業務を活性化させ、実績を出そうとした。

現状のクルーザーでのトローリングや船釣りではなく磯釣りだ。

つまり釣り客を磯に上げるための「瀬渡し船」を作った。

本土と違って遮るものがない屋久島や硫黄島の磯は波が荒く、瀬渡しは大変で怪我・船の破損と言うリスクを伴う。

 

しかしそんな生易しいものではなく、トカラ列島に向けて遠征、秘境・無人島の大物を狙おうというのだ。

トカラまでは屋久島から6~7時間、数日がかりの釣りになる。

 

日本列島でも3本の指に入る荒海で避難港も中之島に一カ所しかなく、黒潮本流のど真ん中。漁船も少なく滅多に船も通らない。

黒潮本流からやや外れる屋久島硫黄島とはわけが違う。

屋久島の漁師もトカラへ行けば巨大魚がバカスカ釣れることはわかっていても誰も行かない。

大波だけでなくサメの宝庫であり、釣りあげる途中で食われて頭しか上がらないこともある。

危険度、燃費、その他リスクがあり過ぎるからだ。

 

声も顔もバカでかいし、何とも無茶なおっさんだな・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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