東シナ海流39 魚介の王国 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

諏訪瀬島は国内最大の僻地だが人が住む島では最大の魚介の王国だろう。黒潮本流に突き出た島は幾つかある、伊豆七島に小笠原、屋久島もそうだ。諏訪瀬島が王国たるゆえんは漁船も避難港もないと言うことだ。つまり、漁師がいないのだ。他の島は漁業が盛んで昔に比べれば漁獲量は減っている。この島は護岸やテトラからも数十キロの魚が釣れ、伊勢海老は掃いて捨てるほどいるのだ。遠く宮崎や熊本の牛深辺りからも漁に来て、船倉の水氷には巨大カンパチやキハダがゴロゴロ詰っている。船釣りで20号のハリスが何度切られたかわからない。おそらく小牛ほどのクエもいるだろう。リーフに伊勢海老の網をかけたことがあるが、1キロ~2キロの伊勢海老がゴロゴロかかるのだが、珊瑚岩で網はボロボロになり一回で止めてしまった。食べるだけ潜って獲って来たほうが良い。巨大なイシダイやイシガキダイも多かった。カッポレ、またはガーラというヒラアジに至っては40キロ級がいつも磯近くを周遊していた。巨大ヒラアジを突くには水中銃にヒモをつけてピトンで海底の岩に固定、待ち伏せれば必ず通る。魚に引っ張られて持っていかれないようにする為だ。ただ、そんなデカイモノ突いても食べきれないし旨くない。ヒラアジは数キロのものが旨い。歩いて行ける磯に至っては、その釣果は桁外れだ。ヤマハの飛行場は50m近い崖の上にある。比較的傾斜のマシな場所にロープを垂らし、磯に降りられるようにしていた。昼間、船で行って冷凍ムロアジの撒き餌をしておいた。夕方から暗くなるまで二人で磯釣りの調査をしたのだが体力的に参ってしまった。サオを4本出したのだが、魚に持って行かれないように岩にピトンを打っている間にも先に仕掛けを入れたサオが「ジャー!」っと唸りをあげる。つまり入れ食い状態でゆっくり座って待つ時間もない。ヒラアジやハタ類も混じったがそのほとんどが2キロから10キロのフエダイの仲間だった。エサはムロアジの切り身で、ハリス18号で海底への単純なぶっ込み釣りだった。2時間で釣りを断念したのはクーラーもないし持ち帰れる量の限界だったからだ。帰りは急な崖をロープで登らなければならない。何度も切られたから一匹がけのゴツい仕掛けでやれば巨魚も釣れるだろう。収穫は全部で80キロ、平均4キロで20匹だ。二人で40キロづつ背負い崖を登るのはキツかった。魚はそのまま冷凍庫行きで社員の食料になる。ここは半自給自足の島で、マリン担当は「食料確保係り」でもあるのだ。これで調査と同時に一か月分の魚は確保したが船釣りのほうがはるかに楽だ。ジープで港へ行って潜って突いてもヒラアジ20キロは軽い。それ以来「徒歩の磯釣り」は二度とやらなかった。重労働以外の何者でもない。しかし寝泊りしている飛行場のクラブハウスから歩いてもすぐ近くの場所でその調子だ。そんな「爆釣磯」は日本中探してもないだろうと思っている。味にうるさい野人は、磯臭い魚は遠慮した。食うのはカンパチ、シマアジ、カツオ、マグロだけと決めてそればかり狙っていたのだ。ところがそんなものばかり食べていると本土の小魚が無性に食べたくてたまらなくなる。毎月三日間滞在する鹿児島の天文館では「炉端焼き」へ直行、食べるのは決まって「キビナゴ」「イワシ」の刺身、「カレイ」「メバル」の煮付け、カマスの塩焼きだった。その味は天国そのもので、飽きずに毎日でも食べられるのは高級魚ではなく「小魚」だとその時に悟りを開いた。