リスパダール14mgだった人(その後) | kyupinの日記 気が向けば更新

リスパダール14mgだった人(その後)

これは「リスパダール14mgだった人」の続きである。

セカンドオピニオン」から。
また、ある小柄のまだ20歳代の少年にはリスパダール14mgとセレネース10mgが併用で処方されていたが、どうみても長期入院している患者さんの顔であった。このような処方は急には手がつけられない。下手に減らそうとすると急激に悪化することがある。この程度の大量処方は変更による悪化率がむしろ高い感覚がある。こういう風な多剤併用はエビリファイが合えば、かなり減らせると思う。数ヶ月かけてそうしてみるしかないと思った。 

診察後、処方箋を書いたが、その後外来看護師さんから連絡があった。なんと、その少年はハロマンスもしているのだという。その日は月に1度のハロマンス筋注の日であった。

工エエェェ(´д`)ェェエエ工

「あれだけ薬が出ているので、まさかそういうのまであるとは思わなかった。」


僕が初診した時は彼はジストニアや流嚥などの副作用がみられ、しかも幻視、幻聴などの陽性症状が治まっていなかった。その後、デパケンRの併用が奏功しある程度まで減量が進んだ。わりあい早くこのような処方になった。

コントミン   150mg
リスパダール  6mg
デパケンR   600mg
(コントミン換算値 750mg)
他、抗パーキンソン薬、眠剤、便秘薬


この後が大変だったのである。この処方は以前にあった流嚥、ジスキネジアを減少させ精神症状を改善しすっきりとした表情にしたが、幻聴、幻視、興奮がなお残遺しているのである。リスパダール14mgでも幻覚が改善していないのだからリスパダールが適しているとは言い難いとは言えた。リスパダールはなまじっかSDAの構造なので、多く飲めるのがいけないと思う。

また、彼はごく軽度の知的発達障害があるので、リスパダールのような薬は副作用が出やすい。脳に脆弱性がある人はリスパダールは辛いことが多いのである。また幻視は統合失調症には珍しい症状であるが、その病院では幻視が有る人をよく診る。まさに怪しさ満点である。それでも、彼は統合失調症なのは間違いなかった。

その少年のように、リスパダールをある水準まで減量するとそれに平行して副作用が減り見た目にはかなり良くなる。しかし幻覚妄想は少しはマシになるが、そこまで改善はしない。内面はまだまだなのである。そして6mgより更に減量するとかえって幻聴が増える状況に至った。ここで6mgが十分量と思うのはちょっとおかしい。陽性症状がけっこう残遺しているからである。こういう症状と薬物量の関係は非常に興味深いと思う。適正な薬物量を見極めにくくしているからだ。

最初は仕方なくリスパダール液を頓服で使用していたが、彼は頓用にしてもほぼ毎日服用してしまうので、実質的にリスパダールを7~8mgくらい服用しているのと変わりがなかった。これは以前の主治医が少年に勧めていたので習慣的なものも大きいが、それでも本当に悪くないなら飲みはしない。

このリスパダール液の扱い方はヤンセンも推奨しており、一般的なものだとは言える。しかし、僕はこのように不穏時にリスパダール液を追加で服用するやり方が嫌いなのである。それは日内の血中濃度が大きく変動することがリスパダールの薬理特性から良くはないというもある。だいたい、自分の病院ではリスパダールを処方しないわけではないが、リスパダール液は誰ひとり処方していないのである。

なぜ、この病院ではリスパダール液を使わなくてはならなくなるんだ?!

結局、この状況を打開するためには、何か特別な薬物が必要と感じた。最初、ルーラン8mgを併用したところ、あまりにも手ごたえがなく、興奮がかえって増えるようなありさまだった。本人がリスパダール液を毎日飲んでいるようなので、失望しつつ、しばらくして中止。その後、今度はジプレキサ5mgを併用したところ、これも幻覚妄想がかえって増えるような状態だったので、これもすぐに諦めた。

普通、このような人はクレミンなども候補に挙がるが、彼の過去のカルテを調べてみると、ある時期クレミンを100mg程度使ったことがあるようなのである。過去に不調だった薬を、僕が処方したら今度はうまくいくものなのかね? そんなこともあり、クレミンは試みなかった。

結局、何かを使ってみては、「リスパダール液に戻る」を繰り返した。リスパダール液を継続して使ったところで、根本的には何も前進しないことは明らかであった。今も幻覚妄想は活発なのである。しかし他に良い方法もない。

ある時、オーラップを使えば、リスパダールよりマシになるような気がした。オーラップもリスパダールに負けず劣らず強力な薬であるが、一風変わった決定力のある薬物だからだ。彼は軽度の知的発達障害があるのでリスパダールに弱いのである。最初、オーラップを1mgだけ追加し、次第にリスパダールを漸減してみた。オーラップは今までの薬物とは反応が違っていた。遂にリスパダール6mgの壁を突破したのである。

そしてこのような処方になった。
コントミン  100mg
リスパダール 4mg
デパケンR  400mg
オーラップ  1mg
ベゲタミンA  1T

他、不穏時、リスパダール液1~2ml
眠剤、カマグ
(コントミン換算値 550~750mg)


悪い時はリスパダール液は飲んでも良いと本人に言って聞かせている。彼は、オーラップを追加している状況ではリスパダールを減量し易かった。その後、デイケアの担当ナースによれば、かなりスッキリしてきたという。幻視、幻聴が特に減少し、もはや頓服のリスパダール液は使用していない。今はリスパダールは3mgまで減量し、リスパダール中止へ含みを持たせた形になっている。

あと、眠剤は2剤しか処方していないので、このような人にしてはわりあい少ない方である。リスパダールを減量するのに難渋したが、ようやく3mgまで減量できている。この結果、抗パーキンソン薬を一掃すること可能になった。まだ陽性症状が少し残遺するものの、幻視、幻聴は以前よりだいぶん減少しているのである。

最近の処方
コントミン  100mg
リスパダール 3mg
デパケンR  400mg
オーラップ  1mg
ベゲタミンA 1T
眠剤、カマグ
(コントミン換算値 450mg)


本人の感想。
まあまあ良いです。体は少し軽くなっている。水薬は全然飲まなくなった。水を飲む回数が減ってきた。

最終的に、リスパダール1mg、オーラップ1mgくらいの組み合わせでやっていければ良いんだけどね。