こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
5月最後の休日の午後になっていますね。
時間の経つには、とても早いものであると感じますね。
毎日の海外のニュースを読んでいますと・・・こんなに世の中が揺れ動いた時期は、私が生まれてからはなかったなあ〜などと思います。
「道(タオ)」を万物の根源とし、人為を排して自然のままにあること(無為自然)、争わず控えめであること(柔弱・不争)を説いた古代中国の思想家「老子」は、著書『道徳経』の中で、次のような言葉を残しています。
「飄風不終朝、驟雨不終日」
(つむじ風は朝じゅう吹き続けず、にわか雨は一日じゅう降り続かない)
という言葉で、天地(自然)の壮大な営みですら長くは続けられないのだから、人間が無理をして声高に主張したり、不自然な力みを行ったりしても長くは続かないと説いています。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
JTKクリニックでは、『メディカル・ダイエット』の診療を行っています。多くの方が体重を減らすことに成功し、また、道半ばの方もおります。
当院の特徴は、徹底した食事カロリーのコントロールと栄養の偏りをなくすことにあります。そのために外部施設の管理栄養士による食事指導もできる体制となっています。
今回は、日々の診療の中で、よく聞かれる内容についてお話をしてみたいと思います。
それは・・・「体重を減らせば動脈硬化は改善するのか?」ということになります。
「動脈硬化(アテローム性動脈硬化症)」は、血管壁にコレステロールを核とする病変(プラーク)が蓄積し、慢性的な炎症を伴いながら進行する疾患であり、心筋梗塞や脳梗塞といった致死的なイベントを起こしやすくなりますね。
以前にもお話をしたように「肥満」、とりわけ内臓脂肪の蓄積を認める「内臓脂肪型肥満」は、この病態を加速させる中心的な危険因子として確立しています。
では、『体重の減量(ダイエット)」に取り組むことは、以下の3つの項目にどのような影響を及ぼすのか?・・・を見てみたいと思います。
1)「動脈硬化」そのものの改善(進行抑制)
2) 既存の「プラーク」の縮小(退縮)
3) 「血管内皮細胞」の機能正常化
結論を先に言ってしまうと・・・体重を減量すること(ダイエット)は「血管内皮細胞」の機能を確実に改善し、「プラーク」の質的安定化を促進する一方で、
「プラークそのものを縮小させる」効果は薬剤ほど直接的ではな色されているのですね。
では、なぜ「肥満」、とくに「内臓脂肪型肥満」は、血管を痛めてしまうのか?・・・について、復習してみたいと思います。
「内臓脂肪」は、胃や腸などの周りに蓄積するわけです。つまり、腹腔内の腸間膜などに蓄積しやすく、男性や閉経後の女性に蓄積しやすい傾向があるとされています。
このような脂肪の組織が「白色脂肪組織」ということになりますね。
「白色脂肪組織」は、かつて単なるエネルギーの貯蔵庫と見なされていたが、現在では多彩な生理活性物質「アディポカイン(脂肪組織から分泌されるシグナル分子)」を分泌することが分かっているのでしたね。
このために「内臓脂肪」は、生体内最大級の「内分泌・免疫器官」と考えられているわけです (参考1)。
栄養の摂りすぎ(過栄養)により「脂肪細胞」が肥大化すると、細胞ストレスや「酸化ストレス(活性酸素種)」による細胞傷害が起きてくることが知られています、
その結果、「TNF-α」、「インターロイキン6(IL-6)」、「IL-1β」、「CCL2(単球遊走性ケモカイン)」といった炎症性サイトカインの局所的・全身的な上昇が生じ、これがインスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)の直接的な原因となるとされています (参考1)。
さらに、肥大化した脂肪組織には・・・
「細胞傷害性T細胞(CTL: CD8+T細胞)」が活性化して浸潤し、「単球」や「マクロファージ」などの免疫細胞が集積することで、組織内の「炎症」が自己増殖的に拡大していくことが分かっています(参考2)。
つまり・・・ 「内臓脂肪」は「炎症を発信する臓器」であると言っても過言ではないということになりますね。
ここで重要なのは、「皮下脂肪」よりも「内臓脂肪(VAT: Visceral Adipose Tissue)」が「動脈硬化」とより強く関連する点である。
なので、「皮下脂肪」であれば大丈夫ということではないので、注意が必要ですね。
ある論文が興味深いデータを示しています。
高齢者集団を全身の「MRI」を用いたアンギオグラフィー(MRA)で評価した研究では、「内臓脂肪量」は全身の「動脈硬化スコア」と有意に関連しており、その関連は「アディポネクチンの低下」と「インスリン抵抗性」が生じることで「動脈硬化」を生じていることが示されています(参考3)。
すなわち、「内臓脂肪」の蓄積は「血管壁」へ直接・間接的に悪影響を及ぼすというわけですね。
ちょっと、長くなってしまいましたね。
このお話の続きは、後日の話題にしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>6月2日
6月になりましたね。6月は英語で「June」ですが、ローマ神話に登場する女神「ジュノー(Juno)」に由来すると聞いたことがあります。
古代ローマでは、女神「ジュノー」にちなんで6月(ラテン語でJunius)を神聖な月として祝っていたのだそうです。
今回は、肥満とくに「内臓脂肪型肥満」が「動脈硬化」を引き起こすトリガー(引き金)となり、さらに「動脈硬化病変」を拡大・伸展させていくというお話をさせていただきました。
実は、「内臓脂肪量」が多いほど、頸動脈壁の厚さや容積など「動脈硬化」が強くなることが大規模画像研究で示されています (参考4)。
これは「内臓脂肪」の貯留により「アディポネクチン」の低下」を認め、このことが「動脈硬化」の進展に関与しているというお話をしたわけですが・・・この「アディポネクチン」は、脂肪組織が分泌する代表的な抗炎症性・抗動脈硬化性のアディポカインであるとされています。
アディポカインとは、脂肪細胞から分泌される生理活性タンパク質を総称して「アディポサイトカイン(アディポカイン)」というであり、健康な状態では2型糖尿病や動脈硬化に対して強い保護的役割を果たしていると考えられています(参考5)。
ところが肥満状態では、逆説的にこの「アディポネクチン」の分泌が低下し、代わりに「レプチン」や「レジスチン」といった動脈硬化を促進するアディポカインが優位となることが分かっています (参考6)。
この「アディポネクチン」の低下という「血管の守護者の喪失(そうしつ)」と「促進因子の台頭」という二重の不均衡が、血管壁における「慢性炎症」と「血管内皮機能障害」の温床となるわけです。
なので、ダイエットを行うことで、「内臓脂肪」を減らしていくことの本質的な意義は、まさにこの「アディポサイトカイン(アディポカイン)」環境を正常な方向へと巻き戻す点にあるわけですね。
この一連の事象を「分子レベル」で見てみると、次のようなものになります。
肥満に伴う「脂肪細胞」の肥大化は、局所的な低酸素状態を招くとされています。
これがマクロファージの集積を誘導し、集積したマクロファージは炎症を増悪させる「M1型(慢性炎症性)」へと表現型を変え、TNF-αやIL-6を放出して隣接する脂肪細胞のインスリンシグナルを障害するわけです (参考1)。
この悪循環の結果、「遊離脂肪酸(FFA)」の血中への流出が増大し、肝臓での脂質合成亢進、全身性のインスリン抵抗性、そしてプラーク形成の引き金となる「酸化LDL(悪玉コレステロールの酸化体)」の増加が連鎖的に生じるというわけです。
これらは、いずれも「動脈硬化」の上流に位置する病態であり、ダイエットによる「体重の減量」はこの連鎖を「脂肪細胞の縮小」という根本レベルで断ち切るアプローチでもあるということになります。
次にダイエットが「血管内皮細胞」にどのようなメリットを生じさせるか?・・・について、詳しくみてみますと以下のようになります。
その前に「血管内皮細胞」の機能が正常に機能しているのか?・・・を見るためには、血管のしなやかさや防衛力などを確認する必要があります。
その臨床的指標として広く用いられるのが、上腕動脈の「血流依存性血管拡張反応(FMD: Flow-Mediated Dilation)」という検査があり、血管内皮細胞の状態を知ることができます。
「肥満」は、この「FMD」の低下を特徴とする血管内皮機能不全と直結しているわけですが、ダイエットにより「内臓脂肪」を減らしますと、この「FMD」を速やか(すみやか)に改善させることが確認されています。
ある介入研究の解析によると、過体重・肥満成人において「減量幅」と「FMD」の改善には有意な比例関係が認められ、
体重が10 kg減少するごとに、「FMD」が約1.11%上昇すると推定されるという結果を示しています(参考7) 。
つまり、体重の減量を行うことで「血管内皮内皮細胞」の機能が改善
したわけですね。
「FMD」が約1%程度の上昇があったということは、あまりインパクトを感じない方も多いかもしれませんが・・・
一般に疫学研究では、「FMD」が1%上昇するごとに「心血管疾患リスク」が約8%低下するとされており、この「1.11%の改善」は臨床的にきわめて大きな意味を持つと考えられています。
また、超低カロリー食(1日580 kcal)を用いた6週間の短期集中減量研究では、体重が平均101 kgから90 kgへ減少(約11%の減量)すると同時に、「FMD」が5.5%から8.8%へ有意に上昇した(P<0.0001)ということが報告されています(参考8) 。
「血管内皮細胞」機能の改善が、動脈硬化の改善・進展抑制につながると考えてよい根拠は、「血管内皮細胞」の機能障害が動脈硬化のごく初期段階に位置するためです。
「血管内皮細胞」が障害されると、NO産生低下による血管拡張能の低下、接着分子(VCAM-1、ICAM-1)の発現亢進による単球の接着・浸潤、LDLの内膜透過性亢進と酸化、平滑筋細胞遊走などが連鎖し、これが「プラーク形成」の起点となります。
したがって、「血管内皮細胞」の機能が改善すれば、この上流の病態を抑えられるということになります。
実際に、「血管内皮細胞」の機能を示す指標である「FMD」の改善が、心血管イベント減少と関連することが多くの研究で示されています。
では、血管内の「プラーク」については、どうでしょうか?
「内臓脂肪」を減らすことにより、「プラーク」は小さく(退縮)なり、やがては、消失するのでしょうか?
「肥満」は「頸動脈プラーク」の「不安定化」と強く関連し、特に70歳未満男性では肥満で不安定プラークのオッズ比が約6倍と高い報告があります(参考9)。
また、CTでみた「内臓脂肪量」が多いほど、「冠動脈プラーク」全体量、とくに危険度の高い低密度非石灰化プラーク量が増えることが示されています(参考10)
つまり、肥満により「内臓脂肪」が増加すると。「プラーク」は形成されやすくなり、しかも危険性の高い不安定なプラークになる可能性があるわけですね。
不安定な「プラーク」は破裂して、血管を塞いで(ふさいで)しまうので、リスクが大きいということになります、これが心筋梗塞や脳梗塞の発症につながるから・・・ということになります。
しかし、「内臓脂肪」の減少そのものが、画像で確認される「プラーク」体積の消退や構造的安定化を直接起こしたと示す研究は、現時点の論文群にはなく、主役は依然として強力な「脂質低下療法」となります。
動脈硬化性プラーク(アテローム性プラーク)の安定化や縮小は、心筋梗塞や脳卒中などの重大な心血管イベント予防の鍵とされているのですね。
過去数十年で、「スタチン系薬剤」を中心とした強力な脂質低下療法がプラーク体積の減少や構造的安定化をもたらすことが、IVUS(血管内超音波)やOCT(光干渉断層法)などの画像研究で繰り返し示されています。
さらに、PCSK9阻害薬やエゼチミブなど新規薬剤の追加など多様なアプローチが登場しているのですね。
これらのスタチン系薬剤、PCSK9阻害薬やエゼチミブなど新規薬剤の追加療法などの強力な「プラーク」の退縮効果や強力な構造安定化作用については、またの機会にお話をしてみたいと思います。
さて、最後にひとつ質問をさせていただきたいと思います。
もし、あなたが「内臓脂肪型肥満」があり、頸動脈や冠動脈などに「プラーク」があると指摘されたとします。
あなたは、「内臓脂肪型肥満」を改善するための「ダイエット療法」と「スタチン系薬剤」を中心とした強力な「脂質低下療法」の
どちらから開始しますか?
そうですね・・・これらを同時に開始することが正解となるわけですね。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)Front Endocrinol(Lausanne). 2013 Jun 12:4:71.
Adipokines mediate inflammation and insulin resistance
Hyokjoon Kwonら
2)Front Cardiovasc Med. 2023 Aug 14:10:1235953.
Adipokines in atherosclerosis: unraveling complex roles
Jiaying Luoら
3)Altherosclerosis. 2009 Jul;205(1):163-7.
Visceral adipose tissue, adiponectin levels and insulin resistance are related to atherosclerosis as assessed by whole-body magnetic resonance angiography in an elderly population
T Hansenら
4)Commun Med (Lond). 2025 Oct 17;5(1):424.
Visceral adipose tissue and hepatic fat as determinants of carotid atherosclerosis
Russell J de Souza ら
5) Int J Mol Sci 2022 Nov 29;23(23):14982.
The Role of Adipokines in Inflammatory Mechanisms of Obesity
Tatiana V Kirichenko ら
6)Int J Mol Sci. 2022 Nov 29;23(23):14982.
The Role of Adipokines in Inflammatory Mechanisms of Obesity
Tatiana V Kirichenko ら
7) Atherosclerosis. 2015 Mar;239(1):21-30.
Weight loss improves fasting flow-mediated vasodilation in adults: a meta-analysis of intervention studies
Peter J Jorisら
8)Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2004 Jan;24(1):124-8.
Weight reduction with very-low-caloric diet and endothelial function in overweight adults: role of plasma glucose
Maria Raitakari ら
9) Nat Rev Cardiol. 2024 Jul;21(7):487-497.
Atherosclerotic plaque stabilization and regression: a review of clinical evidence
Ashish Sarrajuら
10)Lipids Health Dis. 2025 Oct 4;24(1):308.
Visceral fat area loss reduces 10-year atherosclerotic cardiovascular disease risk in Chinese population with type 2 diabetes mellitus: a prospective cohort study
Jingて Jinら
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理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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<今週、なんとなく聞いてみたい曲>
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<JTKクリニックからのお知らせ>
◯Zoomを用いた遠隔医療相談を始めました(内科関連疾患)
◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。
◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。
◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)
自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。
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