(懐妊)
岩穴の山椒魚の悲しみと別のほとりで昼寝する君
海水に似るといわれる羊水のいとなみやまず我は船酔う
よれよれに横たわる我の胸元に気高き飛沫放つレモンか
陰鬱なグレーの空に閉ざされても笑え笑えと人の声する
とろとろと朝な夕なに眠るだけ胎児身ごもる冬と思えば
もて余す時間がふいに流れ出し星回りなど数えはじめて
きれいなるものを見たしと網膜があるのかもしれぬ臨月のいま
吾が庭のうす闇に立つ情熱のゼラニウム赤/命燃やして
できかけの命ながらに頼もしきキック力で胎児主張す
ひ弱さを抱えしままに母となる明日はもっと強くと思いて