背中の肉を抉り取られる
こういう症状を患者さんから言われた時、可能性のある薬物が多すぎて、どれから開始するか少し迷う。
その患者さんは、背中の特に肩甲骨の部位の奇妙な感覚(何かが埋まっていてゴソゴソ動くような体感幻覚)がみられていた。更に抉り取られるような酷い疼痛もある。これに加え、胸の辺りにもサワサワという奇妙な感覚が伴うことがあるという。
このような所見は器質性に由来すると思われるが、CTやMRIで何か異常所見が見られることはむしろ稀である。しかしクオリティがそうなのである。
その人の生活歴では長期にわたる大量飲酒が少し特別な所見であった。つまり大酒飲みである。違法薬物でもこのような奇妙な症状を訴える人が稀にいる。
酒は違法薬物ではないが、エタノールという化学薬品に他ならない。
最初はリボトリール、ルジオミール、デプロメールくらいで開始した。リボトリールは忍容性が高いし、抗てんかん薬でもある上、疼痛にも良さそうに見える。また後者2つも悪くない。いったん、これらの薬で収束するかに見えた。
症状はかなりエグイが簡単なものだな・・と思った。
しばらくは平穏な時期が続いた。ところがいったん2-0になったのだが、その後、逆転されたのである。
その後、その人はあらゆる薬を使ってみている。例えば、種々の3環系、4環系抗うつ剤、SSRI、トレドミンなどである。また非定型抗精神病薬6剤に加え、定型の薬物で効いておかしくない薬物、例えばクロフェクトン、クレミン、オーラップ、PZC、ホーリット、トロペロンやセレネースに至るまで処方している。
他にも、テグレトール、デパケンR、ガバペン、トピナ、ラミクタールなどの抗てんかん薬やカタプレス、グラマリール、ステロイドなども試みている。しかし、いずれも何がしかは効くが効果的とまではいえなかった。
そのうちリフレックスが発売され、この薬物の疼痛への作用を期待して使ってみた。しかし芳しくなかったのである。
あの人は画像こそ何も見えないけど、脳が相当にやられているのではなかろうか・・と思った。
だいたい長期間、あれほどの飲酒をしていて、発病まで何も生じていなかったのが不思議なほどである。僕だったら最初の数日で死んでいると思う。
そして、遂にサインバルタが発売された。たいして期待はしてはいなかったが、疼痛にも効果的といわれているので処方してみた。
サインバルタは劇的といえるほどの効果があったのである。サインバルタはあの奇妙な異常感覚、疼痛をかなりの水準で改善していた。トータルの症状の95%が消失した。
それに、この人は副作用も全くと言って良いほどなかった(この人はあらゆる薬の忍容性が高い)。また、リボトリールなどの併用薬も必要なく、サインバルタ単剤で十分だった。
サインバルタは世界各国の適応を見ると、6つの柱があることがわかる。それは、
①うつ病、うつ状態
②全般性不安障害
③糖尿病性疼痛
④腹圧性尿失禁
⑤線維筋痛症
⑥慢性疼痛
である。このうち例えば④腹圧性尿失禁はアメリカでは適応があるが、⑤線維筋痛症は英国で適応があるなど国により適応の範囲が異なっている。⑤と⑥の適応がある国は①や②に比べずっと少ない。なお、日本は①うつ病、うつ状態しか適応がない。
上の6つの柱で特筆すべきは②全般性不安障害にも有効なことと、疼痛性疾患に有効性があることであろう。特に慢性疲労系のうつ状態には試みる価値があると言える。
この人の治療をしているうちに、この人に似ているがやや軽い症状の人が初診した。全く奇妙な症状の人がいるものである。この人は色々な病院をまわっていたが、どこでも寛解状態には至らなかったらしい。
この人はいきなり2-0になり、そのまま終わった。なんと、リボトリールとジェイゾロフトのごく少量であっさり寛解したのである。この人もかなりの量のアルコールが原因のようであった(もちろん証拠はない)。
同じような所見でも、治療難易度はかなり個人差があると言える。
参考
小太りの妖精
J.F.ケネディ
誰か他の人からベッドの横で覗き込まれるような幻覚
頭のない人が歩いて来る
甲状腺と霊感
回転体
頭の中心に左右を分かつように板が入っている
その患者さんは、背中の特に肩甲骨の部位の奇妙な感覚(何かが埋まっていてゴソゴソ動くような体感幻覚)がみられていた。更に抉り取られるような酷い疼痛もある。これに加え、胸の辺りにもサワサワという奇妙な感覚が伴うことがあるという。
このような所見は器質性に由来すると思われるが、CTやMRIで何か異常所見が見られることはむしろ稀である。しかしクオリティがそうなのである。
その人の生活歴では長期にわたる大量飲酒が少し特別な所見であった。つまり大酒飲みである。違法薬物でもこのような奇妙な症状を訴える人が稀にいる。
酒は違法薬物ではないが、エタノールという化学薬品に他ならない。
最初はリボトリール、ルジオミール、デプロメールくらいで開始した。リボトリールは忍容性が高いし、抗てんかん薬でもある上、疼痛にも良さそうに見える。また後者2つも悪くない。いったん、これらの薬で収束するかに見えた。
症状はかなりエグイが簡単なものだな・・と思った。
しばらくは平穏な時期が続いた。ところがいったん2-0になったのだが、その後、逆転されたのである。
その後、その人はあらゆる薬を使ってみている。例えば、種々の3環系、4環系抗うつ剤、SSRI、トレドミンなどである。また非定型抗精神病薬6剤に加え、定型の薬物で効いておかしくない薬物、例えばクロフェクトン、クレミン、オーラップ、PZC、ホーリット、トロペロンやセレネースに至るまで処方している。
他にも、テグレトール、デパケンR、ガバペン、トピナ、ラミクタールなどの抗てんかん薬やカタプレス、グラマリール、ステロイドなども試みている。しかし、いずれも何がしかは効くが効果的とまではいえなかった。
そのうちリフレックスが発売され、この薬物の疼痛への作用を期待して使ってみた。しかし芳しくなかったのである。
あの人は画像こそ何も見えないけど、脳が相当にやられているのではなかろうか・・と思った。
だいたい長期間、あれほどの飲酒をしていて、発病まで何も生じていなかったのが不思議なほどである。僕だったら最初の数日で死んでいると思う。
そして、遂にサインバルタが発売された。たいして期待はしてはいなかったが、疼痛にも効果的といわれているので処方してみた。
サインバルタは劇的といえるほどの効果があったのである。サインバルタはあの奇妙な異常感覚、疼痛をかなりの水準で改善していた。トータルの症状の95%が消失した。
それに、この人は副作用も全くと言って良いほどなかった(この人はあらゆる薬の忍容性が高い)。また、リボトリールなどの併用薬も必要なく、サインバルタ単剤で十分だった。
サインバルタは世界各国の適応を見ると、6つの柱があることがわかる。それは、
①うつ病、うつ状態
②全般性不安障害
③糖尿病性疼痛
④腹圧性尿失禁
⑤線維筋痛症
⑥慢性疼痛
である。このうち例えば④腹圧性尿失禁はアメリカでは適応があるが、⑤線維筋痛症は英国で適応があるなど国により適応の範囲が異なっている。⑤と⑥の適応がある国は①や②に比べずっと少ない。なお、日本は①うつ病、うつ状態しか適応がない。
上の6つの柱で特筆すべきは②全般性不安障害にも有効なことと、疼痛性疾患に有効性があることであろう。特に慢性疲労系のうつ状態には試みる価値があると言える。
この人の治療をしているうちに、この人に似ているがやや軽い症状の人が初診した。全く奇妙な症状の人がいるものである。この人は色々な病院をまわっていたが、どこでも寛解状態には至らなかったらしい。
この人はいきなり2-0になり、そのまま終わった。なんと、リボトリールとジェイゾロフトのごく少量であっさり寛解したのである。この人もかなりの量のアルコールが原因のようであった(もちろん証拠はない)。
同じような所見でも、治療難易度はかなり個人差があると言える。
参考
小太りの妖精
J.F.ケネディ
誰か他の人からベッドの横で覗き込まれるような幻覚
頭のない人が歩いて来る
甲状腺と霊感
回転体
頭の中心に左右を分かつように板が入っている