
私は、これまで信仰心の如く「運」にこだわることはなかったですし、これからもないと思いますが、先日、少しは立ち止まって「運」を考えてみようという気になりました。
それは、1月13日の水曜日にやっていたNHKの『あさイチ』で「運」のことを特集していたことがきっかけでした。
まず、その番組で「運」について話していたことを少しだけまとめておきます。
運には、「天運」と「自運」があるそうです。
「天運」というのは、人間の英知ではどうしようもない天が定めた道なので、自分でコントロールすることは不可能です。
「自運」というのは、自分が知恵を出せば何とかコントロールできる運勢のことで、「運をどうにかしたい」という場合の「運」とは、こちらの「自運」の意味になります。
しかし、自運に向けて自分ができることは、運勢全てのコントロールではなく、「天運を味方につけて自運の中に呼び込むための準備」だと言えるでしょう。(この部分は、番組で言っていたのではなく自説です)
番組では、「運が良い人の特徴」と「運が悪い人の特徴」を中心に話を進めていました。
それぞれの特徴をまとめると、次のようになります。
〇運が良い人の特徴
・予期後悔をしない・・・「予期後悔」とは、何かを行う前から、失敗して後悔することを想像してしまうこと。
・視野が広い
・あまり不安を感じない
・チャレンジ精神がある
・社交的
〇運が悪い人の特徴
・自分と他者を比較しがち
・予期後悔をする
・視野が狭い
・慎重な性格
・緊張や不安を感じやすい
・細かいことが気になる(神経質)
・失敗をおそれる
運が良いか悪いかの特徴を分けるキーワードの1つが「予期後悔」ですね。
そこで、番組では、予期後悔をするタイプかどうかを見極めるクイズを紹介していました。
[クイズ]
今、どうしても必要な家電製品があります。
2つの電器店を回ったら、どちらも本日のみの限定特価、98,000円。
まもなく営業時間終了です。あなたがとる行動は次の(1)~(3)のどれですか?
(1)98,000円で購入する。
(2)買うことは買うが、値切れないか交渉する。
(3)この日は買わない。
ここで、予期後悔をするタイプは(3)となります。
今どうしても必要なのに、「もっと安く買えるかも」「ここで買うと後悔するかもしれない」とあれこれ考えてしまうのが、まさに予期後悔なのです。
ある程度で妥協するということができず、あらゆる選択肢を網羅しないと気が済まない性格の人に多い傾向です。
(1)と(2)を選んだ人(その場で購入する人)は、予期後悔しないタイプです。
予期後悔してしまうタイプは、様々な選択肢を考え過ぎて、目の前のチャンスを逃しやすいので、なかなか幸運を掴みにくいということが言えるのかも知れませんね。
運が良いか悪いかの特徴を分けるもう1つのキーワードが「視野」ですね。
運が良い人は視野が広く、運が悪い人は視野が狭いとなっています。
この「視野が広い」というのは運が良いと思っている人、「物事を広く見る」というだけの意味ではなく、「物事を柔軟に考える」という意味も含むでしょう。
番組では、番組が独自に制作した何面もある新聞を、運が良いと思っている人と運が悪いと思っている人何人かに配り、「その新聞に掲載されている写真が何枚あるか数えてください」という課題を出す実験をしていました。
この新聞には仕掛けがあって、ある紙面の一番下の広告欄に、大きな囲みで写真が何枚あるか答えを書いた文字が掲載されていました。
運が良いと思っている人の中から、それに気づいて答えをさっと申告した人がいましたが、運が悪い人からそういう方は出ませんでした。
運が良いと思っている人でも、答えに気づかずに写真の枚数を数えてしまった人が大部分でした。
しかし、その次の質問への答えで、両者の際立った特徴の違いが出たのです。
「もし答えが書かれていた広告欄を見つけたら、すぐに申告するかどうか?」という質問が次に出されると、運が良いと思っている人のほとんどが「すぐに申告する」と答えていたのに対して、運が悪いと思っている人は、「広告欄の答えが本当かどうか確かめる」といった理由から、「すぐには申告しない」と答えていました。
この例は、慎重な性格、細かいことが気になる、失敗をおそれるといった、運が悪いと思っている人の特徴が集約されていて、それが運を掴むタイミングを逃してしまう要因になっていることを想像させる例ではないでしょうか?
ここからは、番組の内容と離れて、スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱するキャリア形成に関する理論から、「運と成功」について考えてみたいと思います。
教授の考え方は、自分のキャリアを意識的に計画的に立ててゆこうとする従来の考え方より、「人のキャリア(職業)は計画して決まるわけでなく、予期しない偶然の積み重ねで決まってゆく。よって、予期せぬ出来事をいかに自分にとってチャンスにするかが大事」という考え方です。
その考えの要旨は、
(1)人生の成功は予期しない偶然や出会い(一種の「自運」)によって大きく影響される
(2)つまり、その偶然や出会いが起きやすくなるように行動し、そのチャンスを察知することが大事
(3)よって、偶然を運命にかえて成功する人と、偶然がただの偶然で通り過ぎてしまう人の違いは、その人の心構えしだいとなります。
これによれば、「運」を掴むには「心構え」が大事ということになりますね。
それでは、その心構えとはどのようなものでしょう?
それには5つあるようです。
心構え1【好奇心】
端的に言えば、面白いと思ったこと、やりたいと思ったこと、今ひらめいたことなど、とにかく、興味がわいたことに対して躊躇せずに“やってみる”姿勢です。
さらには、知らない分野に対しては興味を持つ探究心も好奇心を刺激します。
大人は論理的に考えすぎて、なかなか行動に移せず、羞恥心や失敗への恐怖、プライドが心の邪魔をします。
ただ、興味を広げることはいくつになっても可能なのです。
心構え2【粘り強さ】
4回起業して、すべてのベンチャーを上場させたある経験者は、成功の秘訣を「どんな失敗や壁にぶつかってもあきらめずに粘ったことだ」と語っています。
彼が言うには、多くのベンチャーは同じような壁にぶつかるが、その多くは早くにあきらめすぎることで、成功を逸しているのだそうです。
成功していると言われている人は、異常なほどまでに粘り強いし、あきらめないことを是としているということですね。
心構え3【柔軟性】
「ピボット」という言葉があります。
「旋回軸」とか「てこの支点」と訳されますが、「バスケットボールやゴルフなど、スポーツでの軸足を中心とした回転」という意味にも使われます。
ベンチャー経営では、よくピボットという言葉が使われるそうです。
これは、創業当初の理念や目標にはこだわり続けながらも、その道筋は柔軟に変えてゆくという考え方です。
ピボットが、軸足を動かさずに、方向を変えるという動きであることに由来して、ベンチャー経営では多用されるのだそうです。
柔軟性とは、このピボットのようなイメージで行われるのだと思います。
心構え4【楽観主義】
どんな世界の成功者も、おおよそ楽観主義だと言います。
成功者の裏には、人並み以上の失敗と苦労があり、そのすべてに悲観していては、成功には近づけないということでしょう。
悲観を楽観に変換する回路を身につけることがことさら大事です。
欧米のスポーツの場では、ジュニア時代からポジティブ思考の実践により、オプチミスト(楽観主義者)をうまく生み出しているそうです。
気合と根性で練習を繰り返す以上に、頭の中で成功しているイメージトレーニングを繰り返すことで、体に良い暗示をかけ成功確率を上げると言います。
また、成功の結果に対しては、大げさに自分を褒めて、悪い結果に対しては、さらに良くなるための試練だというふうに、外的な要因にすり替えることで、すべての事象をプラスに転化してゆく思考法もトレーニングするようです。
対人とのやりとりでも、相手のネガティブな話を、ポジティブに変換して投げ返すそうです。
例えば、相手が「最近忙しいんだよね」と言えば、「忙しいのは幸せなことだよ」という具合に実践し、楽観思考回路を定着させているのです。
ちなみに、「楽観主義」と「楽天主義」は違います。
楽観主義は、現実を見据えた上で、どんなことが起きても何とかしようとする態度を言いますが、楽天主義は、何とかなると考えて結局何にもせず、何ともならないという悲観主義的考えも持たない態度を言います。
楽観主義は運を掴むための態度ですが、楽天主義は運が側にあっても気づかない態度なのです。
心構え5【冒険心】
積極的に挑戦する心、リスクを取る姿勢が冒険心です。
往々にして、大きな決断を必要とされる場合に、論理的な分析を重ねれば重ねるほど、行動がとりにくくなります。
分析や論評は、やらない理由や失敗する理由ばかりが先行するため、判断が先延ばしにされ、結局大きな意思決定が出来なくなるのです。
この「考えてから動く」タイプではなく、「動いてから考える」タイプである人は、直感と感性に従い、善かれと思ったことに冒険心を発揮し、成功のチャンスに巡り会えるのだと言います。
以上の5つが「運」を掴むための「心構え」だそうですが、これを全部備えている人はほとんどいないでしょう。
ですから、「運」という見えないものを見えるようにするために、この5つの心構えで、自分に足りないものを取り入れていく努力が必要なのだと思います。
このような心構えを自分に取り入れていくことは、言ってみれば、「自運」という家に「天運」様を迎え入れるために、「自運」の家の中を綺麗に掃除しておくようなものです。
掃除だけでは、「天運」様の訪問へのおもてなしとしては足りないかも知れないので、お茶やお菓子も用意しておく細心さが必要かも知れません。
「天運」様を最大のおもてなしでお迎えするために、家をどのようにすれば良いか英知を巡らせるのが「自運」だと言えるのではないでしょうか?
私たちができることは、「天運を味方につけて自運の中に呼び込むための準備」だけです。
そのために、運が良い人の特徴を全部備えていなくてはいけないとか、運を掴むための5つの心構えが全部なくてはいけないということではありません。
運が良い人の特徴を全て備え、運を掴むための5つの心構えを全て持っているからといって、天運に恵まれるということはないかも知れません。
運が良い人の特徴は半分しかなく、運を掴むための心構えも1つか2つしかない人が、舞い降りて来た天運をうまく掴むことができるかも知れません。
要は、天運を呼び込むための自運の準備をする中で、目の前の事柄1つ1つをどのように捉え、考えていくかということが、「運」を考える上で一番重要なことでしょう。
自分と他人を比較していないですか?
予期後悔をしていないですか?
好奇心を持っていますか?
柔軟性を持っていますか?
楽観主義でいますか?
今まで述べたこと1つ1つを自分に当てはめてみてください。
ほとんど自分には備わっていないことだと思って、落込む人も多いのではないでしょうか?
そういう人は今の自分を振り返ってみてください。
大きな病気をしたり、大きな事故に遭ったりすることもなく、家族は安泰に今日まで過ごしてきて、幸福とは言えなくても不幸でもない普通の生活が続いている・・・。
「無事之名馬」という格言がありますが、それだけで「運が良い!」と思えないでしょうか?
「無事之名馬」という「良運」にもっと味付けをするという意味で、上の「運が良い人の特徴」や「5つの心構え」があるのだと思っておくのが良いのではないかと思います。
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