脳の仕組みで理解するストレス問題 | ★こころノート★心の問題(心の悩み・心の傷・心の病)をいろいろな角度から考えるネットカウンセラーのブログ

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【ストレスとは何か】

みなさんは、「ストレスとは何か」と尋ねられたらどう答えますか?

いろいろな説明の仕方があると思いますが、ここでは、「ある刺激に対して生じる特殊で個別的な緊張状態」とでも説明しておきましょう。

ここで言う「個別的な」の例として、次ようなことを想像してご理解ください。


あなたは、仕事で失敗してムシャクシャしながらひとり歩道を歩いています。

ふとすれ違った男が「チッ!」と言って舌打ちをしました。

あなたはムカッとストレスを感じて男を見返しました。

別の日、デートでいい思いをした後にあなたはひとり歩道を歩いています。

ふとすれ違った男が「チッ!」と言って舌打ちをしました。

あなたは別段気にもとめずにその男をやり過ごしました。


これは、同一人物が違う状況で同じ刺激を受けながら反応を違えているという例です。

この最初の方の例で、すれ違った男がした舌打ちが、あなたに向けてなされたものではないのに、それを確かめずにストレスを感じたのなら、あなたはストレスを感じなくてもよい状況でストレスを受けていることになります。

このように、同じ刺激でも、人や状況によってストレスの受け方はかなり違ってきます。

ストレスをもたらす刺激のことをストレッサーと言いますが、ストレッサーは日常にあふれています。

なので、人がストレスを無くすということは絶対不可能ですよね。

そして心理的障害のほとんどはストレスから生じるといっても過言ではありません。



【ストレスと脳の前頭前野の関係】


ストレスを受けた時にその脳の中ではどんなことが起きているのでしょうか?

ストレスと脳は密接に関連しています。

基本的にストレスはすべて脳の中の出来事なのです。

脳には、ストレスの認識と、どう反応するかに関わる部分が3つあります。それは、扁桃体と前頭前野(前頭前皮質)に加えて海馬と言われる部分です。


最近の研究では、ストレスは霊長類で最も発達している大脳皮質前頭前野にも影響を及ぼし、高度な精神機能を奪ってしまうことが分かっています。

前頭前野は感情や衝動を抑制して支配する機能を持っていますが、ストレスはその前頭前野の支配力を弱め、視床下部などの進化的に古い脳領域の支配を強める状態を脳にもたらします。

人間がこうなると、普段は抑え込んでいる、欲望にまかせた暴飲暴食や薬物乱用、お金の浪費などの衝動に負けてしまうのです。

前頭前野は脳の中で進化的に最も新しく、高度に進化した領域です。


前頭前野には抽象的な思考に関わる神経回路があり、集中力を高めて作業に専念させる役割を果たしたり、精神の制御装置としての役割を担っていて、状況にそぐわない思考や行動を抑制しています。

このような働きによって、集中や計画、意思決定、洞察、判断、想起などができるわけですが、この脳の非常に高度な中枢は、大規模なネットワークを介して働きます。

ところがこのネットワークの回路は、不安や心配に対して敏感に反応し、非常に脆弱であることが最近分かってきました。


ヒトを対象とした研究により、ストレスに対する脆弱性は遺伝や過去のストレス経験などが原因であることが分かっています。

慢性的なストレスにさらされると、危険に備えるよう他の神経系に警告を発したり、恐怖などの情動に関わる記憶を強めたりする、古い脳領域である扁桃体が拡大し、前頭前野は萎縮します。

ストレスがなくなれば、前頭前野は再生しますが、ストレスが非常に強い場合には回復能力が失われます。

前頭前野の萎縮は、過去のストレス体験と関連していることも分かってきました。

ストレスによる脳内変化が生じると、以後のストレスに対してさらに脆弱になり、うつ病や依存症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの不安障害につながると考えられています。

ストレスがどのように前頭前野の自己制御領域を変化させるのか、さらに、なぜ脳がストレスにさらされると最も高度な認知機能を弱めるようなメカニズムをもっているのかといった疑問に対する答えはまだ得られていません。

このメカニズムが進化の過程で獲得されたものであることから、こうした原始的な反応が外敵からヒトの命を救ってきたのかもしれません。

幼少期に軽度のストレスに直面して何度もうまく乗り越えた経験がある動物は、ストレス対処能力に優れた能力を持つことが明らかにされています。

ヒトの研究でも、困難な状況への対応に成功した経験は立ち直る力を強め、対処につまずいた場合は成長してからストレスの重荷や落ち込みやすさを感じやすくなると報告されています。



【ストレスと脳の扁桃体・海馬の関係】


扁桃体の役割には、「情動の学習」と「記憶の調節」という大きく2つの役割があります。

「情動の学習に対する役割」というのは、不安や恐怖、怒りといった情動的な出来事に関連付けられる記憶の形成と貯蔵に関して重要な役割を担っているということです。

「記憶の調節に対する役割」というのは、学習される出来事に関する情報は、記憶固定と呼ばれる処理によって長期記憶へと同化されていきますが、この記憶固定において重要な役割を担っているということです。


まとめて言えば、不安や恐怖、怒りといった情動的な出来事は、扁桃体によって長期記憶へと同化されていて、日常の平穏時においては、前頭前野の理性がそれらを抑制しているということになります。


次に海馬について簡単に説明しておきましょう。

これは、大脳辺縁系の一部である海馬体の一部分です。

脳の記憶や空間学習能力に関わる脳の器官とされています。

心理的ストレスを長期間受け続けるとコルチゾールの分泌により、海馬の神経細胞が破壊され、海馬が萎縮することが分かっています。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)・うつ病の患者にはその萎縮が確認されています。


【ストレスと脳の視床下部・ストレスホルモンとの関係】


脳には視床下部と言われる、進化的に古い部分で、自律機能の調節を行う総合中枢があります。

動物がストレスを受けると、この視床下部が反応して、心拍数の増加や血液の上昇、食欲低下などをもたらします。

これらの変化は脳に生じる原始的な反応と言えます。



脳はストレス反応をコントロールする一方で、前頭前野や海馬の委縮のように、ストレス自体からの影響も受けることが最近の研究で分かってきました。

そして、その脳が受ける影響は、ストレスホルモンを介して体にも影響します。

扁桃体と前頭前野、海馬といった脳の3つの領域は、ストレスホルモンの分泌を調節し、心拍数の上昇といった関連反応を管理します。


体に影響するストレスホルモンにはいくつかの種類があります。

アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールは、危険に直面した時、適切に対処するのに必要不可欠なストレスホルモンです。

これらのホルモンは、学習や新しい記憶の形成には有益ですが、分泌量が多すぎると健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。

ストレスホルモンが血管を駆け巡れば、当然、体への影響は避けられません。

こうした状況がどのようにして起きるかを見てみましょう。

闘争/逃走反応は脳だけに起こるのではありません。

私たちの体全体も、この状態から、特にそれが長引いた場合には影響を受けます。

闘争/逃走モードになるとまず、末端への血流が減り、心臓、肺、足、背中への血流が増えます。

これは、実際に生きるか死ぬかの状況で必要な走ったり戦ったりする力を最大限に引き出す効果をもたらします。

しかし、脳内でアドレナリンのレベルが高まり、そこに血流の変化が加わると、危険が去ってからもしばしば体の震えが止まらなくなります。


私たちの体は、戦うか逃げるかといった場面では利用可能なエネルギーをすべて動員しようとするため、消化機能のようなエネルギーを消費する他のプロセスを止めてしまいます。

すると、既に体内に摂り入れた食物の消化も止まってしまうので、むかつきを感じ、場合によっては嘔吐して体液で食物を流し出そうとする反応が起こります。

強いストレスにさらされた時やその直後に気分が悪くなる理由がここにあります。

その反面、ストレスに立ち向かい、その影響を最小限に抑えるうえで、きちんとした食事を心がけるのは大いに効果的です。


強いストレスを感じて心拍数が急に上がる経験は誰にもあることです。

速くなった鼓動は、思考や判断をつかさどる脳の前頭前皮質にある信号を送ります。

その信号は、脳のこの領域に対して、一時的に機能を停止(思考停止など)して、中脳にその役割を引き継がせるよう求めます。

この状態では、理性的な考えや論理的思考よりも、本能や日頃の訓練がものを言うようになります。

中脳とは、大脳と脊髄、小脳を結ぶ伝導路ですが、同時に視覚反射および眼球運動に関する反射の中枢、聴覚刺激に対し反射的に眼球や体の運動をおこす中枢、身体の平衡、姿勢の保持に関する中枢などがあります。

ストレス耐性を強めるトレーニングなどは、概して前頭前皮質と中脳のこの部分に働きかけることに注力したものとなっているようです。


【ストレスの何が問題なのか?】


ここまで、ストレスと脳や体との関係を見てきました。

それでは、ストレスの一体何が問題なのでしょうか?

「ストレスは人生のスパイス」と言われるように、生活する上では欠かせないものとされていますが、私たちがストレスを悪く言う場合、一体何が問題とされているのでしょう?


ストレス状態とは「ストレッサ―から肉体的または精神的な刺激を受けることによって、生体反応に何らかの歪(ひずみ)が生じること」と言えます。

これは、ここまで見てきた脳や体とストレスとの関係から想像できると思います。


ストレスについては、よくゴムボールを例にして説明されます。

ゴムボールを思い切り握ると歪みが生じます。

この場合、握る手がストレッサ―で、ゴムボールが生体です。

握るのを止めると、ゴムボールは元に戻りますね。

このように、ストレッサ―からの刺激(ストレス)が強くても一時的で、刺激がなくなると、生体も元に戻るのなら何の問題もありません。


ところがゴムボールをずっと握り続けていたらどうなるでしょう?

ゴムボールは元の球形を保てなくなり、ひどいときはへこんだままとなります。

これはストレス状態が長く続いてしまう例として例えられます。

成人の場合、闘争/逃走状態は、せいぜい10分間程度のものが散発的に生じる程度と考えられていました。

しかし最近の研究から、戦時下では闘争/逃走モードが何カ月も持続する可能性があるという事実が明らかになっています。

ストレスは健康面にさまざまな形で影を落とし、長期間にわたる慢性的なストレスでは、特に影響が大きくなります。

免疫機能が低下して、たいてい、病気に感染しやすくなります。

高血圧や心臓病につながったり、日常的なうずきや痛み、体重の増加、不眠、性欲減退を引き起こしたり、じんましんや湿疹といった皮膚疾患の原因になったりします。


ストレスにとって一番問題なのは、「ストレス状態が長く続いてしまう」ということなのです。

現代は慢性的なストレス社会であるということが、現代においてストレスが問題になってしまう理由なのです。




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