第2章 第1話 凍りついた扉
登場人物
風の妖精 レヴィ
炎の妖精 らい
ウェールズの大魔女 シンシア
アイデバーン市長
エドマンド ノーラン
(1)
冬の重たい空が落ちてくるような、古くからある大きな都市。
夜毎、黒い影が街をうろついていた。
「市長……数が、どんどん増えています」
「市民も不安がっております」
市長は深く椅子にもたれかかり、短く息を吐いた。
「……ふむ。これは、もう限界か」
一拍の沈黙。
「――魔女を呼べ」
………………
東の国の冬は、とても寒い。
外はひどく明るいのに、
冷たい風が窓を叩くように吹きつけていた。
街を吹き抜ける乾いたからっ風は、
今日も容赦なく、大地の熱を奪っていく。
百合夜は、少し残念そうに窓の外を見ていた。
「あぁ……今日も庭仕事はお休みね。
少しだけ、バラを剪定しようと思ってたのに」
「仕方ないだろ。
この寒さじゃ、外に出れば風邪をひくだけだ。
俺が代わりにやってこようか?」
「大丈夫。
自分の庭は、自分で手入れしたいの」
「……そういうものかもしれないな」
レヴィはそう言って、湯気の立つ紅茶をひと口すする。
喉を通る温もりを、どこか懐かしむように。
「ねえ、レヴィ?
誰を思い出してるの?」
百合夜は、不思議そうに振り返った。
レヴィは一瞬、言葉に詰まり、視線を逸らす。
「……古い知り合いだ」
「ふぅん、そう」
それ以上は踏み込まず、
百合夜はまた窓の外を覗き込む。
白く曇ったガラスの向こうで、
風が木々を揺らしていた。
「はぁ……」
その後ろ姿を、
レヴィはどこかぎこちなく見つめている。
――そのとき。
頭の奥に、冷たい音が響いた。
『レヴィ。レヴィ。
仕事よ』
シンシアの呼び出しだった。
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