第2章 第2話 凍りついた扉 


レヴィは、胸に残った気まずさを振り払うように息を整える。

「……少し、出てくる」

「仕事?
何の仕事かは分からないけど……気をつけてね」

百合夜は、いつもの穏やかな笑顔を向けた。

「ちょっと待って」

そう言って奥の部屋へ小走りに消え、
ブラウンのコートと、柔らかなチェック柄のマフラーを抱えて戻ってくる。

「この前、セールで買ったの。
レヴィに似合うと思って」

嬉しそうに差し出され、
レヴィは一瞬、言葉に詰まった。

「……いや、わざわざ買わなくても――」

「いーの。
いつもお世話になってるし」

少し照れたように笑う百合夜に、
レヴィは観念したように頷く。

「……すまない。ありがとう」

袖を通すと、思った以上に身体に馴染んだ。
マフラーを巻けば、首元に柔らかな温もりが残る。

「……悪くないな」

その一言に、百合夜は満足そうに目を細めた。

凍える庭に出ると、
冷たい風が頬を刺す。

レヴィは足元に小さく魔法陣を描き、
フェアリーサークルを開く。

淡い光が広がり――

次の瞬間、
彼の姿はウェールズ、シンシアの屋敷へと転移していた。

レヴィは、シンシアの書斎へ向かう短い廊下を歩きながら、
ふと、思考を巡らせていた。

――なぜ、気まずかったのか。

ただ、普通にリリーのことを話せばよかったはずだ。
何も隠す必要なんてない。
事実を、静かに語るだけで済む。

それなのに。

口にしてはいけないような、
そんな感覚が、胸の奥に引っかかっていた。

なぜ、躊躇う。
何も、やましいことなどない。

ただ――
少し。

……少し、なんだ?

言葉にしかけて、
その「少し」が形を持つ前に、思考は途切れる。

その瞬間、
レヴィはシンシアの書斎の扉を開いた。


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魔女とレヴィ

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