第2章 初雪の日の記憶  


「……中へ入ろう」


促され、二人は部屋へ戻る。


レヴィは百合夜の脱いだコートを受け取り、
ストーブのそばのハンガーに掛けた。


その間に、百合夜はキッチンで湯を沸かしている。


「はい」


差し出されたカップから、
カモミールとエルダーフラワーの甘い香りが立ちのぼる。
ミルクを添えた、やさしいハーブティー。


ひとくち含むと、
穏やかな甘さが胸に広がった。


——自分の好みを、覚えてくれている。


「あの頃と、同じだな……」


「レヴィ? どうかした?」


不思議そうに見つめる百合夜に、
レヴィは小さく首を振る。


「……何でもない。美味い」


「よかった」


レヴィはふと、窓の外へ目を向けた。


雪は変わらず、静かに降り積もり、
大地を包み込んでいる。


——記憶とともに。


だが今、
その雪を眺める隣には、百合夜がいる。


彼女の笑顔を見た瞬間、
胸の奥に小さな痛みが走り、
そこから、温かいものがじんわりと滲み出した。


ゆっくりと、
凍っていた心を溶かすように。