息が、詰まる。
「レヴィ?」
「どうして……そんな顔をするの?」
「……さあな」
レヴィはゆっくり息を吐き、無理に微笑んだ。
「俺にも、分からない」
「……帰ろう」
「ええ。そろそろ冷えてきたわね」
リリーはふふ、と笑い、レヴィを見上げる。
「ほら、見て。黒い髪が、真っ白よ?」
「君こそ」
レヴィは指先で、彼女の銀色の髪に積もる雪をそっと払った。
その仕草は、何度も繰り返した記憶の中のものだった。
二人は並んで、神殿へと戻る。
雪を踏みしめる音が、一定のリズムで響く。
——今、ここにいる。
そう、確かめるように。
神殿に戻ると、リリーは祭壇の前に立ち、静かに祈りを捧げた。
今日のような穏やかな日々が、永く続くように。
レヴィも、同じ願いを胸に抱く。
何も変わらず、
このまま——
「……レヴィ」
声がした。
開かれた扉の向こう、
光の奥から、確かに。
「レヴィ……」
レヴィは、はっとして立ち上がる。
理由は分からない。
けれど、行かなければならないと、体が理解していた。
扉へ向かい、手を伸ばす。
そして、ふと振り返る。
「……リリー。俺は、行かないと」
リリーは何も言わず、
ただ、穏やかに微笑んでいた。
——引き留めない笑顔で。
「レヴィ……」
「レヴィ……」
「レヴィ!」
「起きて!」
強く呼ばれて、
レヴィは息を吸い込んだ。
目を開けると、
そこには百合夜が、心配そうに顔を覗き込んでいた。
——ああ。
記憶から、戻ってきたのだ。
レヴィは、静かに息を整えた。
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