魔女とレヴィ 第8話 闇を照らすもの 


(……疲れてるんだろうな、私。
 いまは、それだけでもう十分だ。)


「レヴィ! また上がった! 見て見て!」


 大樹の声が弾け、レヴィの髪がぐいっと引っ張られる。


「髪を引っ張るんじゃない。……痛い」


 レヴィが困ったように眉を寄せ、肩車の上で大樹がケラケラ笑う。


 百合夜は、その光景を胸の奥でそっと抱きながら、夜空を見上げた。


 大輪の花火がふたつ。
 その後ろを追うように、小さな花がひとつ。


 ほろりと夜にほどけていく光は、どれも優しい。


 盛大なフィナーレが空を彩りきり、余韻だけを残して花火大会は幕を閉じた。


 人々がざわざわと帰り始め、土手に静けさが戻る。


「ママ……レヴィ……眠い……」


 大樹は瞼をこすりながら、ぐずりはじめた。


「大樹〜、もう少し頑張れないの〜?」


 声をかけるけれど、大樹はふらふらと歩きながら、もう夢の半分に足を突っ込んでいる。


「……眠い……つかれた……」


 レヴィは無言で大樹をそっと背負い上げる。
 その動きは、ふだんの無表情より、少しだけ柔らかかった。


 百合夜はその後ろ姿に、静かに息をついた。


(変な縁ね。でも……悪くないな。)


 そう思うだけで、なんとなく歩く足取りが軽くなった。