魔女とレヴィ 第6話 見えぬもの達 

主な登場人物


風の妖精 レヴィ


炎の妖精 ライ


ウェールズ国随一の大魔女 シンシア



-1-


 新緑が光を吸い込むように濃さを増し、蒸し暑さが家の中まで忍び込む午後。


「レヴィ、その格好ほんと暑そうだよ〜!」

 大樹が団扇を仰ぎながら文句を言う。


「……これは“飾り”だと言っている」

 レヴィは眉ひとつ動かさず、黒いスーツの襟をつまんだ。


「スーツはダメよ。暑苦しいし……ねぇ、誰の趣味なの?」

 百合夜の言葉に、レヴィの指がぴたりと止まる。


 一瞬だけ、視線が写真立てへ吸い寄せられた。


 フレームの中には、優しく笑う“百合夜の夫”がいる。

 軽やかな青いシャツ、白いインナー――初夏の空のように軽やかな装い。


 レヴィのまつ毛がわずかに震えた。

 胸の奥で正体のつかめないざわりがゆっくりかき混ざる。


 それでも彼は何も言わず、静かに魔力を巡らせた。


 風がふっと巻き、衣服が変わる。

 青い半袖シャツに白いインナー、紺のパンツ。

 写真と同じなのに、どこかレヴィらしく控えめに距離を置いた再現だった。


「……似合ってるわ」

 百合夜が懐かしむように微笑む。


「レヴィ、パパみたいだよ!」

 大樹が無邪気に笑った。


 その言葉に、百合夜はびくりと肩を揺らし、

「ちょっと飲み物取ってくるわね」とそそくさとキッチンへ消える。


 その背中を、レヴィは静かに見送った。

 嬉しいのか、苦しいのか――

 自分でも読み切れない感情が胸の奥にひっそりと居座っていた。


 大樹と遊び始めたその時。


『レヴィ。仕事よ。至急。』

 シンシアの鋭い声が頭に響く。


 レヴィは長く息を吐いた。

 日常の柔らかな気配が、音を立てて閉じていく。



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第1話です。


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