テレビドラマや映画で人気のあった『孽子(Nièzi)』が舞台劇として演じられた。原作は白先勇の小説である。残念ながらもう終了している(國家戲劇院で2月7日から16日までだった)。公式HPはこちら。
白先勇は戦後大陸から移り住んできた「外省人」である。父親は国民党政府の政治家(高級軍人)、白崇禧で、一家は1952年(白先勇が15歳)に渡台した。台湾大学在学中に『現代文学』を創刊し、休刊までの13年間、台湾の多くの小説家が参加している(李昂も!)。
『講座 台湾文学』(山口守著/国書刊行会)による説明が一番わかりやすいので、そのまま引用させてもらう。
白先勇は外省人第一世代のそうした空間的・時間的ノスタルジアを核とした喪失感と闇を目撃し、戦後台湾社会に生きる第二世代として自らもアイデンティティ・クライシスに直面しながら、それを作品化していった作家である。(192p)
台湾のモダニズム文学についても次のような説明があって、わかりやすい。
1960年代台湾におけるモダニズム文学の特徴は、国民党による言論統制の下で、五四以降の中国近代文学や戦前期台湾の文学を継承する道を閉ざされていた若い世代が、中国古典文学を近代的に解釈しながら、西洋文学の受容によって閉塞状況を乗り越え、自分たちのアイデンティティ・ックライシスや喪失感を作品化していったことにある。(187p)
白先勇の小説には「紐約客」と「台北人」という二つのシリーズがある。前者がアメリカに渡った中国人、後者が台湾における大陸出身者を中心に描いたもので、やはり「喪失感」というものがキーワードとなっている。
わたしが今読んでいる『永遠的尹雪艷』は、「台北人」シリーズの中の一つ。それも女性を主人公にしたもので興味深い。前掲の書によると、
ノスタルジアによって滅びて行く男と、ノスタルジアの中を生き抜く女の姿が鮮やかに対照化されて描かれている。(p205)
ということで、なんか読み進めるのが楽しみになってきました。