①20年越しのリベンジ【NewFace!ひろこの居酒屋奮闘記】
②20年越しのリベンジ【NewFace!ひろこの居酒屋奮闘記】
③20年越しのリベンジ【NewFace!ひろこの居酒屋奮闘記】
つづきです。
勤務5日目。
東京は雨の予報だったが晴れていた。暑い。湿気が多い。立ち並ぶ飲み屋街をテクテク歩く。今日は人出が多いぞ。前回のようにヒマではないかもしれない。今日こそフル回転で働けるかと期待しつつ店の暖簾をくぐるも、店に客の姿はない。なーんだ、今日もヒマなのか。私はゆったりした気分で、本日最初の仕事である「おみくじの補充」を始めた。
勤務開始10分が経過したところで大将から「レジ打ちの練習をしましょう」と声をかけられた。やっとレジ打ちだ。楽しみ。レジをトレーニングモードに変更し、過去の伝票データを打ち込んでいった。レジ入力の方法はなんてことない簡単なものだった。だけど、伝票に書かれた「省略語」が難しい。「PS」「LHB」それって何?当たりをつけながら入力をしていく。伝票には合計金額が書かれているので、私が入力したデータの金額とそれが合えばOK。1枚目は合ったけど、3枚目が合わない。なぜだ?大将に答えあわせをしてもらうと、私は「ゆかりS」を「ゆかりスカッシュ」と入力していた。でも答えは「ゆかりサワー」。「どっちも頭文字Sやないかい」と心の中でつぶやくも、「サワーはSと書いて、スカッシュはスカって書きますから」大将にそう言われて、ぐうの音も出ない私なのでした。
そうこうするうち、次なるお客様が顔を出しました。「こんばんは!いらっしゃいませ!」年配の男性3人組です。どうやら常連のよう。「常連さんなんですか?」大将に聞くと、「うちはだいたい常連だよ」そんな返事が返ってきました。そんなもんなのかなと思っていたら、またお客様がいらっしゃいました。「こんばんは!いらっしゃいませ!」お客様の顔を見るなり「あ!」彼は私の知り合いなのでした。
一人で来てくれた彼を、カウンター席にお通ししました。飲み物を伺って少し話をします。もっと話したかったのですが、大将から「レジ打ちの続きを」と言われてしまい、あまり話ができませんでした。いつもは空いている店内が、今日は割りと混んでいて、息をつくヒマもありません。でもヒマより忙しい方がいいですね。忙しく立ち働くことこそ、生きている実感が湧くというものです。
その後も次々お客様がいらして、店内は半分以上が埋まりました。ホールスタッフは私だけなので、あちこちから声をかけられます。レジを打ったり注文を伺ったり、飲み物を運んだり料理を運んだり。今日はこの店に来て一番忙しい日でした。いろいろな出来事がありました。
1.ドレッシングはどっち?
「よゐこのサラダ」というメニューがあります。そのサラダは「和風」か「シーザーサラダ」どちらかドレッシングが選べます。今日はどういうわけかこのメニューが売れまくり、私はその度にドレッシングの種類を聞き忘れるのでした。「ドレッシング、聞いてきて」このセリフを3回言った後、大将がこう言いました。「聞き忘れること多いので、ちゃんと聞いてね」「はい、ごめんなさい」3回はさすがに忘れすぎですね。焼き鳥の味を聞き忘れることがなくなったと思いきや、今度はドレッシングです。次回は絶対に確認しよう。そう心に誓うのでした。
2.「和民から来たの?」
若い男性二人組のお客様から、こんなことを聞かれました。「和民から来たと言いますと?」そう聞き返すと、「和民をやめてここに来たの?」と言うのです。なぜそう聞くのだろうと訝しむと同時に、「いいえ、ど新人ですよ」と回答していました。「ど新人なんだ」とお客様が笑います。あの質問の意図は何だったのでしょう?真相がとても気になります。
3.仏頂面の一人客
30代後半と思しき男性が、カウンターで一人で飲んでいました。彼は濃い目のハイボールをしかめっ面で飲み干します。注文を聞きに行った時も、どちらかというと仏頂面。何かイヤなことでもあったのかしら?と思わず聞きたくなる雰囲気です。そんな彼が会計を済ませて外に出ようとした時、いつもお配りしている「おみくじ」を手にして、「勝手にもらったよ」と言うのです。その時、彼は笑顔でした。「大大吉だったよ」さらに笑顔の花が咲く。その顔がとても良くて、思わず「大大吉おめでとうございます!いいことありますよ!」そう言って見送ると、彼は右手をあげて、お店を去って行きました。「なんか、いいなあ」仏頂面からのあの笑顔。思わず惚れそうになりました。
4.せっかく来てくれたお知り合い
せっかく来てくれた知り合いと、話がしたいじゃないですか。なのに私はあちこちから呼ばれ、なかなか彼のそばに行けないのです。空いたお皿を目ざとく見つけては「お下げします」と言いながら、ちょこちょこっと話をしたりしました。彼の隣があいた時テーブルを拭きながら「いつもはこんなに忙しくないんですけどね」などとぼそぼそ告げ口をしました。タイミングを見計らって、「料理、美味しいですか?」そう聞くと、彼は「すごく美味しいのに、お店少し空いてるよね」そう言います。たしかに、店内は半分ほどしか埋まっていません。私にとっては「結構混んでる」認識なのですけどね。美味しいのに空いているのはおかしい、そんなニュアンスで話をしてくれたことが嬉しかったです。だって私もそう思うのですから。
5.新人は、ツッコまれると答えられない
先に述べたように、私は勤務5日目のど新人です。突っ込んだ質問をされると答えられません。今日はある4人組のお客様からそんな質問を何度かされました。「七輪で焼けるものって、これの他に何かある?」そんなことわかりません。私はできうる限りの笑顔を作り、「確認してきます」そう答えると、彼らもつられてニーっと笑ってくれるのです。その寛大な笑顔が嬉しいですね。笑顔は人を幸福にします。
6.料理を間違って持っていく
ど新人は、料理を持っていく場所を間違ったりします。「ポテトサラダお持ちしました」そう言ってテーブルに置こうとすると、お客様が一つの皿を指さし「もう来てるよ」それを聞いた私は、一拍置いてニコッと笑う。ごまかしの笑顔ですが、お客様から「ナイス笑顔!」と褒められました。褒められると嬉しくて頭が回るのか、「あ、これは隣のテーブルだった」と思い出し、同じ笑顔のまま隣のテーブルにポテトサラダを置いてきました。お客様に笑ってもらえるとすごく嬉しいですね。ここでもやはり、笑顔は人を幸福にするのでした。
あっという間の3時間がすぎ、家に帰って『333』(バーバーバー)というベトナムのビールを飲みました。お客様が飲んでいる生ビールがうまそうで美味しそうで、ついつい飲みたくなってしまうのです。呑米酒場『ありの』で働いた日はビールを飲んでしまいます。1本飲み終わったから、2本目にいこうかしら。働いた後のビールは美味しいですよね。
さてさて、次回の勤務は9月10日(土)
この日も友達が来てくれることになっています。どんな一日になるやら。次回の奮闘記もどうぞお楽しみに♪