半素人団体とはいえ
アングルというかシナリオが
よく練られていて、また
演技者(レスラー)も上手で、
我々のような一見さんでも
各試合でどちらが善玉で
どちらが悪玉なのか
すぐわかる構成になっていて、
そこらへん私は素直に感心しました。
また悪役たちもそれぞれ
ナルシスト・粗暴・卑怯者・
意地悪・性悪・本格的に怖い人、
みたいにちゃんと分担がなされていて
会場のお子様たちを飽きさせない。
お子様たちは多くが
小学校高学年くらいの年齢で、
彼らを見ていて私は何故
子供時代にテレビで
プロレスを観ることが
我が家では禁じられていたのか
深く理解したのですが
・・・私は単純な子供だったので
本当によくない影響を受けたと思う、
プロレスを楽しむにはある程度の
知性が必要だとつくづく思います、
ともあれ、中には
小学校低学年くらいの
非常に幼いちびっ子もおりました。
私の近くの席にいた男の子は
たぶん5歳とか6歳くらい、
それでも親に買ってもらった
応援グッズを手にリングを見上げていて
さてそこで本日のメインイベント。
まずは悪役レスラーが
仲間を引き連れて登場、
で、これがこの日最後の試合ですから
リングの周囲をぐるりと回りながら
この集団がきっちりとお客をいじる。
「負けろー!」と
声をかける子供には
「うるせえ黙れ!」と
いちいち反応し、
常連らしいお客には
「そろそろ俺たちを
応援する気になったかよお!」と
馴れ馴れしく話しかけ、
私はそのサービス精神に
舌を巻いていたのですが、
ここでこの悪役レスラーが
私の近くの席の6歳君に
「お前、俺を応援すんだよな?」
6歳君はちょっと怯えつつも
「う、ううん、しないよ」
と言いながら善玉レスラーの
応援グッズを見せる。
すると悪役レスラーは
「ああ?俺を応援しろよ!」
・・・で、悪役氏は
6歳君の手から
応援グッズをひったくると
それを観客席の
後ろのほうに放り投げたのです。
これ!
これは大人のファンからすると
「まあなんて手厚いサービス」
くらいの話じゃないですか!
でも6歳君にしてみたら
怖い顔をした凶暴そうなおじさんに
いきなり因縁をつけられて
お母さんに買ってもらった
大事な応援グッズを奪われ
放り投げられたという・・・
心優しき後部座席の人たちが
すぐに応援グッズを拾って
6歳君の手元に戻したのですが
6歳君は涙ぐんでいて・・・
そこに悪役軍団の中の紅一点、
今時不良娘の姿をした
女性新人レスラーが近づいて、
私は一瞬彼女が男の子を
慰めるのかと思ったのですが、
さすが新人基本に忠実、
『意地悪な悪役』という役割を
まっとうしようとしたのでしょう、
ものすげえ意地悪そうな顔で
泣き真似をして見せて
「やだあ~、僕、
怖くてないちゃったのお~?」
いやもうお見事の一言に尽きる
振る舞いだったんですけど
・・・6歳君はこれで本格的に
べそをかき始めてしまってですね。
悪役軍団もこれはまずいと思ったか、
そこから事態打開を図って
男の子にさかんに話しかけたのですが
・・・駄目だよ君たちまず見た目が
6歳児には怖くて仕方ないもん!
でも半素人とはいえ
流石プロレス団体、リング上から
事態を眺めていたレフェリーは
呼び出し係と何やら相談、
そこから楽屋に連絡が回ったらしく
次に登場した善玉レスラーと
その仲間役のレスラーは
リングサイドをぐるっと回って
すべての観客とハイタッチ、
泣きべそ6歳君のところでは
「今日は応援ありがとう!」と
笑顔で握手、でも
男の子は泣き止まない
(ほらメインイベンターだから
身体もデカくて、笑顔をみせても
『歯並びのいい微笑む野獣』風に
なってしまうというか、ねえ)、
試合開始前にリング上では
悪役たちがその『悪ぶり』を
誇示するお芝居を進め、
6歳君はそれにも怯えてしまって、
もうこうなると私は試合よりも
男の子の情緒のほうが気になっちゃう!
ゴングが鳴る直前に
善玉レスラーがわざわざ
リングサイドまで降りてきて
男の子の前に膝をついて
「僕は君のために勝つよ!」と
カッコよく決め台詞を
口にするものの
6歳君の涙は止まらない
(野獣は野獣ですから・・・)。
そして試合開始。
男の子を泣かせた責任者である
悪役レスラーは八面六臂の大活躍、
つまりリング上では
華のある暴れっぷりを見せつつ
機会あるごとに6歳君の前で
善玉から大技を喰らい苦しんで見せ
・・・でもその苦しむさまを見て
6歳君はますます怖がり、
ならばこれはどうだ!と悪役氏は
ロープの上から場外落下、
6歳君のお母様らしい女性に
しがみついて命乞いをしてみせ、
しかし6歳君の立場ではそれは
自分の大切なママが悪漢に
しがみつかれている修羅場、
もうなんというか・・・
これはなんというか・・・
私もお調子者だからわかるんです、
これはお調子者界に身を置く
人間にとっての悪夢の最果て・・・!
とうとう最後まで
6歳君の涙は止まらず、
でも悪役レスラーも
本当によくやったんですよ!
敢闘賞ですよ!
帰り際、わが夫(英国人)も
「今日一番面白かったのは
あの最後の試合でしたね・・・」
お客いじりは難しい、
という話でございます。
わがお散歩仲間の毒舌夫人に
この話を披露したところ
「それはあれね、
今時の6歳はデジタル世代、
怖いものも楽しいものも
エンタテイメントはすべて
スクリーンの向こう側に
存在するもの、そこで突然
実体を持った『怖い人』に
直接怖い目にあわされる、
それは私たちが想像する以上に
恐ろしい経験だったでしょうね」
ところでこんな
プロレス話を書いていたら
ハルク・ホーガン氏の
訃報が飛び込んできましたね
私は子供の頃彼に似ていると
以来勝手に親近感を抱いていたので
そういう意味でも残念でございます
・・・ホーガンに似ていた?
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