馬酔木と書いてアセビ、またはアシビと読むのだが、まったく読めないから当て字もはなはだしい。アセビは万葉の時代から人々に愛され、スズランのような花の美しさと枝ぶりの風情から庭木などの観賞用にされ、寺社でもよく見かける。
成長が遅く硬いので、杖や床柱などにも使われる。アシビ名の由来は、枝葉に「アセボチン」と言う有毒成分を含み、馬や鹿などの動物が食べると酔ったようになって足腰が砕けるようになるところから、「足痺(あしじひ)」と呼ばれ、そこからアシビ、アセビとなったようだ。馬酔木は馬の様子をたとえた完全な当て字だ。人は昔から薬草も毒草もうまく利用し、アセビもまた殺虫剤として使われた。同じ仲間の、幹がねじれて成長する「ネジキ」もまた汲み取りトイレの「うじ殺し」になる。野人は二年前まで今にも倒れそうな木造倉庫の一部を知人からタダで借りて個人事務所に使っていたが、外にある誰も入る気がしない年代物の便所にネジキの葉を使っていた。本当によく効く・・・。そこは小さな地震でも、社員や友人達から「生存確認」の電話が入るくらいひどいと言われていたが、野人はまったく気にもならなかった。どうせ窓は年中開けっ放しだし、屋根と壁があればそれでよかった。蚊もムカデもサソリも野良猫も自由に出入りしていた。外出時もカギは滅多にかけないが、泥棒も入る意欲は沸かない。ブロックの上に六畳間を作り、炬燵と本棚とテレビを置いて、毛布だけで床にごろ寝していた。雨漏りもひどく、壁も歪んできたので壊す事になり、昨年、今の快適な個人事務所に引っ越してきた。以前は銭湯か、会社のシャワーか、渓流での水浴びだったが、今は風呂と洋式トイレの便利さに感激している。
ツツジ科には毒草が多い。しかし、馬が本当にアセビを食べたのだろうか?本能が発達しているはずなのだが。山の草原などは鹿も食べないアセビやレンゲツツジだけが残っている。自然界の道理とは言え、風情を楽しむ人間にとってはその眺めは素晴らしいようだ。