公園近くで動けなくなっていた《もりだくさん》を保護して今月で7ヵ月になります
公園にかかわる人間の仲間たちが言うのですよ
あの時は《もりだくさん》とはもうお別れだと思いましたよ、って
実際駆け付けた魔女も、《もりだくさん》の最期を看取るつもりで引き取ったのです
年齢19歳、この時の体重は1.8㎏
涎と目ヤニと鼻水で汚れた顔
毛がなくなって皮膚が顕わになった足
歩くのもおぼつかなくよたついていた《もりだくさん》
私はその顔ををお湯で拭き、骨ばった体を撫で続けたものです
当初は毎日横たわって窓から外を虚ろな瞳で眺めていた《もりちゃん》
もりだくさん 「ねえ、まじょ」
魔女 「なあに?」
もりだくさん 「わたし、ずっと ここにいるからね」
魔女 「わかってますよ」
もりだくさん 「わたしね、ここきて つかれてて ねてたとき そとみてて あれ? っておもった」
魔女 「そうなの?」
もりだくさん 「あめのときだった」
魔女 「あめのとき?」
もりだくさん 「ここ・・ あめ こない、って」
魔女 「そっか」
もりだくさん 「まえも いったけど ここには にんげん こない こーえんでは おきにいりのばしょでねてたって、にんげんがきたら にげた いちんち なんかいも にげた」
魔女 「そうだったね」
もりだくだん 「あついくて くるしいこともないし、 さむくて つらいこともない」
魔女 「そうだね」
もりだくさん 「おなかが へったら まじょが ごはんくれる ごはんの あとは おしりとんとんするでしょう ねるときは まじょと いっしょに ねるでしょう」
魔女 「そうね」
もりだくさん 「わたし、ずっと こうえんで くらして こんな くらしが あるって しらなかった」
もりだくさん 「だから わたし、そんと おもった」
魔女 「そん?」
もりだくさん 「ここで あきらめたら そん、と おおもった」
もりだくさん 「それで がんばったんだよ」
魔女 「そっか、えらかったね」
もりだくさん 「わたし、ずっと ここに いたい」
魔女 「ずっと ここに いなさい」
もりだくさん 「きにいらない ねこも いるけどさ ブツブツ・・」
気に入らない猫とは《じゃじゃ丸》のことです
先月ふたりは取っ組み合いの喧嘩をし
以来《もりだくさん》は一歩もこの部屋から出なくなりました
《もりだくさん》がリビングに来るのを黙認してきたのに
自分たちが《もりだくさん》の部屋に入るとすごい勢いで追い出されるのはおかしい
というのが《じゃじゃ丸》の言い分で
先月《もりだくさん》が魔女と一緒に2階のリビングに向かうところで《じゃじゃ丸》と諍いになり
取っ組み合いの喧嘩となりました
19歳のおばあちゃん猫が、2歳の図体の良い男子と取っ組み合い
事程左様に《もりちゃん》は元気です
体重は当初の倍になり、毛艶はシルクのよう
口内炎も治って食欲は旺盛
生きる気満々であります
《もりちゃん》が元気なのは素晴らしいことなのだけど
《もりちゃん》に、そもそも猫の保護部屋だった魔女の部屋を終の棲家と決められて
病気の猫や、里親募集の猫さんたちを引き取る部屋がなくなってしまいました
これには実に困り果てております
そんな魔女の困りごとをよそに
毎日魔女に引っ付いて寝るのが常の《もりだくさん》であります
・・・・・・
《あのこちゃん》こと《らっか》がご飯を食べに来なくなって5日になります
《あのこちゃん》がご飯を食べに来ないことなんて1日たりともなかった
心配で夜も眠れず、魔女は寝不足が過ぎて凄い顔になっています
毎日 「《あのこちゃーん》!」 とか 「《らっかー》!」 と呼びながら近所を歩きまわり
車道を隅から隅まで確かめるようにして行き来する魔女を
どうせまたそこらの人たちは 「あの人、やっぱおかしい・・」 と思っているのでしょうが
知ったこっちゃないわ
観音様に掌を合わせ 「《あのこちゃん》が来てくれますように、と強く願っています」 と祈っていたのが
昨日あたりから 「もう・・ ここに来ないならそれでもいいから どうか、どうか、無事でいてくれますように! とにかく無事ならそれでいい、と私は願っています」 と・・
それでもきっと、困ったらここに来てくれると信じて
今日も捜したし・・
今夜も眠れない
《あのこちゃん》・・ どこにいるの







