悪性症候群 | kyupinの日記 気が向けば更新

複数回、悪性症候群になる人

一度、悪性症候群を起こした人は再び悪性症候群になりやすいと言われている。悪性症候群はカタトニアのひとつの重篤なタイプなので、その視点では一度でもなった人は複数回なりやすいと言える。

 

この複数回、悪性症候群になりやすいと言う傾向だが、この概念が明らかになった当初は特別な副作用と思われていたのもあり、複数回悪性症候群を起こした事例は症例報告ものであった。

 

現在は悪性症候群を複数回起こす人は、個体側の脆弱性があるとされていて、悪条件が重なることで惹起しやすくなると言う考え方である。

 

この悪条件とは、薬側の要因、大用量の高力価抗精神病薬の服用やその急激な中断が挙げられる。薬以外では、ちょうど今のような高温環境、脱水、激しい運動、睡眠不足、低栄養状態などが悪条件となる。

 

例えば高用量を服薬していても悪性症候群にならない人はかなりいるように思われるので、個体側の脆弱性の要因は大きい。脆弱性のある人は低用量の抗精神病薬でも悪性症候群を惹起しうる。

 

精神疾患の要因として、例えば統合失調症や躁うつ病ではない人に対して大用量の抗精神病薬の投薬は注意を要する。とりわけ知的発達障害の人の精神病状態などである。同じ理由で発達障害の人もリスクが高い。

 

悪性症候群を起こしたら、マニュアル的には抗精神病薬を含め、向精神薬は中止するとされているが、僕はベンゾジアゼピン系の抗不安薬や眠剤は必要であれば処方する。なぜなら、その方が改善しやすいと思うからである。少なくともベンゾジアゼピンは悪性症候群の病態にそこまでマイナスに見えない。

 

この考え方だが、悪性症候群と言う病態がカタトニアの悪性タイプの1型とみなしていることがある。カタトニアはワイパックス(ロラゼパム)が推奨されている。

 

悪性症候群を生じたら、それまで服薬していた抗精神病薬を中止するが、これは即中止するのが基本である。悪性症候群は抗精神病薬の急激な中止により惹起しやすいと言われているが、既に悪性症候群が発生していれば急激な中止もやむを得ないということだろう。

 

悪性症候群に何が治療的かと言われれば、点滴が最も良い。軽い悪性症候群は点滴だけで治癒するケースもかなり多い印象である。点滴による補液は、悪性症候群に限らず、カタトニアのさまざまな症状を整え健康状態に向かわせる。使うとすれば治療薬はブロモクリプチンとダントリウムである。

 

なお、ダントリウムは添付文書に悪性症候群の治療薬として挙げられているが、ブロモクリプチンは、添付文書的には悪性症候群への適応がない。ブロモクリプチンはいくつか適応があるが、おそらくパーキンソン症候群の適応の作用が利用されている。ダントリウムは抹消に作用し、ダントリウムは中枢に作用する。

 

悪性症候群が改善すると、しばらく抗精神病薬投薬を中止か控えめに投薬するため、改善直後に再び悪性症候群になることはほとんどない。もし速やかに同じような病態になる人がいたとしたら、もはや悪性症候群とは言えず、むしろ悪性タイプのカタトニアを生じていると考えた方が合理的だと思う。

 

そもそも悪性症候群の直後は精神症状が改善することが多い。従って精神症状の清算のような時期で、薬もバランス的にあまり必要がないことの方が多い。

 

しかし統合失調症では、その霧がすっかり晴れたような病状は永遠には続かない。もし悪性症候群の後、ほぼ正常な精神状態となり、数年間、服薬も必要がない人がいたとすれば、実際そのような人も実在しそうだが、狭義の統合失調症ではなく、統合失調感情障害の方が親和性があると思う。

 

悪性症候群は熱中症と似た病態に見えるが、熱中症は血液検査でCPKが上がっていないか、上がっていても悪性症候群ほどの高値ではないと思う。熱中症は筋強剛があまりなさそうである。

 

治療者が、このような考え方をしていると、リスクのある人はそのようなスタンスで治療するので、自然と悪性症候群が避けられるのはある。

 

何も考えずに治療するのと、潜在的リスクを視野に入れて治療するのでは大きな違いがあると言ったところだと思う。

 

参考