成年後見制度 | kyupinの日記 気が向けば更新

成年後見制度の欠陥と2026年の民法改正

 

 

2025年9月に上記の稀代の悪法、成年後見制度と言う記事をアップしている。この成年後見制度だが、2026年の民法改正で全てではないが、現在の問題点が改善される見通しである。以下はビジネスジャーナルの記事である。

 

 

この記事のポイントは、

 

成年後見制度は2000年の導入以降、後見人による横領被害が2011~2024年で累計311億円(年平均約22億円)に達し、利用率も潜在需要約1300万人に対し約2%に低迷。終身制や報酬の不透明さなど構造的欠陥が指摘されるなか、2026年の民法改正で期間設定や限定支援型への転換が盛り込まれ、「終われる制度」への再設計が進む。

 

この制度の大きな問題点の1つは、一旦始まったら終われないことだった。親族から見て酷い後見人に当たったとしても解任も容易にできない。後見人の横領なども巨額であり、近年では皆が成年後見制度を避けるようになり利用率も低迷していた。なんらかのこの制度のアップデートが必要とされていたのである。

 

成年後見制度といえば認知症の患者さんを対象としているように思いがちだが、精神科医が関わるケースでは、重い精神病患者さんもそこそこある。近年こそ高齢者の認知症患者さんが増えているが、かつてはむしろ精神病の患者さんの方が多かったように思う。上の記事から抜粋。

 

制度上、本人の判断能力が不十分な場合、預貯金の解約や不動産の売却といった法律行為を行うには「成年後見人」の選任が不可欠となる。

 

極稀に50億円くらい資産があるような重い精神病の患者さんがいるのである。しかも本人はそれだけ資産があることも認識できないレベルの重さである。判断能力がない患者さんには後見人の選任がどうしても必要になる。

 

このような際、精神科医は診断書を書く機会があるのである。現行制度以前、1990年頃は比較的しっかりとした精神鑑定書だったが、今は簡易的な診断書になり報酬もかなり安くなっている。以下参照。

 

 

上に挙げたビジネスジャーナルの記事以外も、成年後見制度の問題点についての記事がある。下は今の施設から他の施設に移ることも出来ない事例である。

 

 

この記事のポイント。

 

同制度をめぐっては、これまで

⚪︎一度後見開始が決まると、本人の判断能力が回復しない限り制度の利用を終了することが難しい。

⚪︎後見人に不正が発覚しても解任しにくい。

⚪︎後見人は包括的な代理権・取消権を持つため、本人の自己決定が制限される。

といった課題が指摘されてきた。

 

「本人の判断能力が回復しない限り制度の利用を終了することが難しい」という条件は何言ってるの?という世界である。

 

上の記事から、改正のポイントは、

 

⚪︎家庭裁判所の判断により、途中で制度の利用を終了できる規定を新設する。

⚪︎従来、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3段階に分けていた後見制度を、「補助」に一本化する

⚪︎包括的な代理権の付与を廃止し、代理権や同意権は必要な範囲に限って個別に付与する

⚪︎「本人の利益のため特に必要がある」という事由を設け、補助人の交代を容易にする

⚪︎本人の意向把握を必須とし、本人の意思尊重義務をより強化する

⚪︎一方で、事理弁識能力を常に欠いている状態の人に限って、類型的取消権を有する「特定補助人」を付する制度も例外的に設けるとしている。

 

また、以下はゴールドオンラインの記事である。

 

 

記事より抜粋。

 

成年後見人となったある弁護士が、利用者の財産から報酬を受け取ることについて「利益相反行為で違法」と提訴されました。これまで「家庭裁判所が決めた報酬なら問題ない」とされてきた常識が覆された瞬間でした。ポイントは「家庭裁判所の後見人に対する報酬を与える旨の審判は、後見人に請求権を与えるだけで、利用者に支払い義務を生じさせるものではない」というのです。この判決は、成年後見制度の報酬システムそのものに疑問符を突きつけました。専門職の間に走った衝撃は大きいものでした。実際、この訴えが認められれば、今後専門職が後見人に就任することは、極めて慎重、かつ難しい判断に迫られることになってしまいます。

 

この中で、利用者の財産から報酬を受け取ることは利益相反行為で違法、という部分は重要だと思う。

 

この「利益相反行為」だが、精神科に限らず医療業界ではしばしば出てくるワードである。例えば、製薬会社の研究費用提供で、その製薬会社の薬の有効性などを研究すると忖度が起こりやすい。研究者に製薬会社の期待に応えないといけないなどの心理が生じるからである。簡単に言えば、八百長でその薬の有効性の誤った結果が出やすくなる。

 

例えば、DSMは製薬会社の援助を受けると利益相反行為になりかねないのでそれらを排除し、研究コストが上昇。その理由で容易にDSMの診断基準が検索で上がって来ないのである。(書籍を出版することで費用を回収)

 

朝日新聞のサイトに以下のような記事が上がっていた。

 

 

この記事のポイント。

 

最高裁は、全国の家裁が昨年7~12月に決めた約10万2400件の後見人や保佐人などの報酬額を集計した。①後見人らの属性②管理する預貯金や有価証券など流動資産の額③対応が困難な場合に上乗せされる「付加報酬」を後見人らが求めたか――に応じてグループ分けした。

 

①親族以外(弁護士ら)②1千万円未満③求めありでは、報酬は年20万円台~30万円台が約8割を占めた。②が1億円以上になると、年20万円台~30万円台は1割弱にとどまり、年100万円以上が約2割いた。

 

この報酬の年間20万から30万円の金額だが、後見人になる人と本人の家族に感覚の乖離があることが問題の1つと言われている。

 

親族以外の後見人は、弁護士、司法書士、社会福祉士がなることが多いが、この20万から30万円は弁護士にとって大した額ではないが、親族にとっては決してそうではない。10年経てば200円から300万円ほどの費用になるからである。これは2000万円以下で相続争いが起こりやすいことを見てもわかる。

 

医療従事者から見て、長期入院中の重いレベルの精神病の人の後見人にはほとんど仕事などない。どのような時に仕事があるかと言えば、例えば身体疾患で中核病院に転院、入院や手術の際に同意書に署名するために病院に出向かなければならない。逆に言えば、精神病以外に身体病がないなら、電話対応くらいで時間を取られることはあまりないのである。

 

上の朝日新聞の記事で、1億円以上の資産がある人の年間報酬では、100万円以上が約2割いたとある。これだけの資産があっても、そもそも相続権利がない親族ではない後見人に対し、年間100万円以上渡すのは嫌だと思う。

 

資産の額により、年間報酬のここまでの差が生じるのも変と言えば変だと思う。仕事の多寡はそのようなところで決まらないからである。

 

ところで、後見人は親族以外の弁護士、司法書士、社会福祉士がなることが多いと錯覚しやすいが、後見人の90%以上は親族である。つまり、上に挙げた横領などの違法行為は事例数、金額とも親族の方が遥かに多い。ある司法書士の人がXで指摘している。

 

 

ただし、これに対して親族が横領するのと、親族以外が横領するのでは意味が違うという意見もある。

 

最後に、現在の成年後見制度がいかに問題があるか、象徴的な出来事があった。最初のビジネスジャーナルの記事から、

 

そこには制度設計上の致命的なミスがある。まず、現行法は「終身制」を前提としており、期間限定の利用を想定していない。また、制度には「後見・保佐・補助」の3類型があるが、実際には最も制限が強い「後見」が全体の約7割を占める。これは、家庭裁判所や実務家が「管理のしやすさ」を優先し、本人の残存能力を活用する「補助」などの柔軟な運用を避けてきた結果とも言える。

 

さらに、報酬基準の不透明さも根深い。報酬額は「家庭裁判所の裁量」で決まり、地域や担当官によってバラツキがある。利用者は事前に「いくらかかるか」を正確に把握できないまま、ブラックボックスに足を踏み入れることになる。

 

こうした現状に対し、国際社会の視線は厳しい。2022年、国連の障害者権利委員会は日本に対し、「代行決定(後見人による決定)」から「意思決定支援(本人の意思を尊重した支援)」への転換を強く求め、現行制度の廃止を含めた勧告を出した。

 

「日本の成年後見制度は、25年前にドイツなどの制度を参考に作られましたが、運用の硬直化が最大の問題でした。本人の尊厳よりも『財産の保全』、つまりマイナスを出さないことばかりに目が向き、本人の生活の質(QOL)を向上させるためのお金の使い方ができなくなっていたのです。今回の改正は、まさにその『硬直した歯車』を回すための劇薬となるでしょう」(社会保障の専門家で社会福祉士の高山健氏)

 

国連からも現行の成年後見制度を廃止するように勧告されているのであった。

 

(おわり)