成年後見制度の鑑定書 | kyupinの日記 気が向けば更新

成年後見制度の鑑定書

成年後見制度という用語は一般の人はあまりピンと来ないかもしれない。これはかつて禁治産者とか準禁治産者などと呼ばれたもので、最近、この診断書のニーズが高まり、診断書を書く精神科医が不足して困っている。これは全国的にもそうだと思われる。

この診断書は普通は精神科医が書くものだと思う。精神科医ではない人も書ける人がいるのかもしれないが、僕は詳しくない。

僕が最初に書いた禁治産の診断書は、指導医の先生に裁判所から依頼があったものである。その患者さんの診断書は僕が代わりに書き、添削してもらって完成し連名で提出した。随分前の話だ。

その人は脳卒中のため失外套症候群に至っており、家族はその診断書がないと非常に困る状況であった。

当時の診断書だが、基本的に犯罪の精神鑑定書と似た形式であり、そこまで長くはないといったところ。この患者さんに限れば脳神経外科医か神経内科医の方が神経所見などは明快に書けそうであるが、いわゆる判断能力の鑑定書なので、やはり精神科医の仕事なのである。僕は当時、脳神経外科病棟に出向いて診察し書いた。

今やその診断書すら残っていない。診断書は縦書きだった。(今の診断書はほとんど横書きである。)横書きで書き、縦書きで印字するのである。

この診断書は印字がとてつもなく遅い東芝ルポで書いた(参考)。そのフロッピーディスクたるや、今のフロッピーとは規格が異なる上に、特別なフォーマットなので、今や読むことすらできない。このルポの残されたフロッピーには、いくつかの精神鑑定書と、非定型精神病とトゥレット障害の学会発表のスライド画面と原稿が入っているが、死んでいる状態なのである。

現在、フロッピーディスクですら陳腐化しようとしている。コンピュータのすべての記録メディアはきっとそういう運命なんだろうと思う。

この最初の鑑定書だが、鑑定書料は16万円くらいだったような気がする。ひょっとしたら20万円だったかもしれない。これは任意に決めて良いものであるが(希望金額を言える)、家族が支払うものなのであまり高い額は請求できない。なぜなら、わずかな田んぼの相続のためにその診断書を書いてもらわざるを得ないこともあるからである。

その後月日が流れ、統合失調症の人の鑑定書を書く事が多くなった。やはり以前は、統合失調症の人の鑑定書を精神科医が書くというパターンが多かったと思う。

この成年後見制度の診断書料の目安だが、現代社会では5万円である。これが今の常識的な額で、もちろんこの費用は家族が支払う。自分の患者さんではなく、他病院に出向いて知らない患者さんの診断書を書く場合は、もう少し高い額を希望しても良いと思われる。(7万円くらいか・・)

結局、この安さが成年後見制度の診断書の書き手の少なさの原因ではある。

僕は近年はいつも5万円で書いている。この額に比べ、医療観察法の診断書料はずっと高い。(まあ時間がかかるし結構長いので当然だと思う。お金の出所も違うし)

最近は、もう少し書き方を簡略化した書式が裁判所のサイトでアップされている。煩雑だと皆しようとしないからである。興味のある人は診断書の例も提示してあるので、参考にしてほしい。

僕は未だに古典的なスタイルで書いているが、項目の並びは裁判所のサイトを参考にしている。

先日、統合失調症の人の鑑定書を書いたが、1時間半で書き上げるという新記録を樹立した。しかも簡略化しておらず、結構しっかり書いているのである。なぜできたかというと、いつもこのブログを書いているのでタイプが非常に早いのと、その人は既にサマリーを書き上げており、それを参考にすれば良いというか、実質コピペで済む部分が大きかったからだ。

鑑定料については、僕が上に書いていることを示す内容もアップされている(>>サイト)。

鑑定の費用については,鑑定料が5万円を超えて10万円以下のものが最も多く全体の約65%を占め,次いで5万円以下のものが全体の約25%となっており,10万円以下で鑑定を行ったものは全体の約90%を占めている。旧制度下における実情と比較すると,鑑定費用は低額化している(平成7年度では,鑑定料が10万円未満のものが約38%,10万円以上20万円未満のものが約34%であった。)。

むむ、これを見ると、5万円はかなり良心的だ。5万円以下というのは、たぶん5万円のことだと思う。3~4万円だったら誰もしないと思うから。5万円はたぶん最低額であろう。

精神科医の立場からすると、自分の入院患者さんなら、当然自分が書くべきだと思う。

なぜなら、自分以上にその患者さんを知っている人がどこにいるんだと言いたい。

ただ、他所の病院の患者さんは基本的には断ってもかまわないと思うのだが、成年後見制度の診断書は有料のボランティア的色彩が強いので、頼まれた場合は、できるだけ受けてあげたいと思う。

僕の場合、リエゾンで他所の病院に行っていることもあり、そこの家族(あるいは主治医)の依頼を受けることもある。最近は日本は高齢化が進み、認知症の人の鑑定が増えていると思われる。

参考
成年後見制度のサイト(裁判所)
どうしても「を」が入れられない件