メマンチン | kyupinの日記 気が向けば更新

強迫性障害とメマンチン

今日は前回の「ジスキネジアとゾルピデム」の一連の記事である。メマンチン(商品名:メマリー)はエビデンスレベルこそ低いが、強迫性障害を改善することがあると言われている。その理由について。

 

メマンチンは、日本では中等度〜高度のアルツハイマー型認知症の薬である。メマンチンは、神経細胞の過剰な興奮を抑え、記憶・学習障害の進行を抑制する。

 

臨床感覚として、メマンチンは認知症の患者さんの怒りっぽさ、イライラ感を抑え、穏やかにする印象である。メマンチンは鎮静的な薬なこともあり、アリセプトのように処方したために、かえって症状を悪化させることはあまりない。

 

強迫性障害はグルタミン酸作動性シグナル伝達の異常が関与していると言われており、前帯状皮質でのグルタミン酸濃度の低下と、線条体・眼窩前頭皮質でのグルタミン酸シグナルの過剰状態が指摘されている。

 

メマンチンはNMDA受容体拮抗薬として、このグルタミン酸系に作用し過活動を抑制することにより強迫性障害を改善させるメカニズムを持つとされている。

 

小規模RCTやメタ解析ではSSRIが効きにくいタイプの強迫性障害に対し、メマンチンを併用することで改善率が上がったと言う結果が見られる。一方、併用しても有意差がなかったという否定的な結果もみられる。

 

過去の調査はいずれも症例数が少なく大規模試験は行われておらず、エビデンス的には弱い。メマンチンは強迫性障害に対し適応がある薬になり得ず、難治例に対して併用の選択肢があると言ったところである。

 

文献的にはメマンチンは、SSRIでは部分反応、チック合併、ASD合併、強い反復性思考優位型の患者さんに対して改善の可能性があるとされている。なお、いずれも単独処方ではなく、SSRIとの併用である。

 

前回の「ジスキネジアとゾルピデム」の記事の中で、以下のように記載している。

 

逆説的だが、ゾルピデムは眠剤であるために適応外処方しやすいことはあると思う。

 

適応外処方の可能性として、ゾルピデムとメマンチンは決定的な差がある。それはメマンチンは認知症の薬であるために、若い人に処方などできないことである。そういう意味で、メマンチンの強迫性障害への処方は絶望的にハードルが高い。

 

なお、過去にアメブロメールで強迫性障害の患者さんから、メマンチンについて相談を受けたことが何度かあった。適応外処方は無理という返信をし推奨したことは一度もない。理由の1つは、当時、メマンチンはジェネリックなどまだ発売されておらず、個人輸入するにはかなり高価な薬だったこともある。

 

ところが、相談した読者の人の数名は海外からメマンチンを個人輸入し、なんと強迫性障害が改善したと言うのである。文献的には十分あり得ることだと思った。

 

過去には抗てんかん薬のゾニサミドが、パーキンソン病への適応が認められトレリーフと言う商品名で発売された歴史がある。ゾニサミドは古い抗てんかん薬でジェネリックで安価だが、トレリーフは全く構造式が同じだが、先発品で高価という相違がある。

 

メマンチンは強迫性障害に対し国内で治験が行われたかどうかは知らない。

 

将来、メマンチン強迫性障害の適応追加になるというより、異なる構造式のNMDA受容体拮抗薬が、治験を経て強迫性障害の適応を持つ新薬として発売される可能性があると思う。

 

参考

 

 

抜粋

トレリーフというレボドパ賦活型パーキンソン病治療薬がある。これは、元々、抗てんかん薬のゾニサミドがパーキンソン病にも有効なことから適応拡大し、他の商品名として発売されたものである。そのため、エクセグランに比べかなり薬価が高い。また、エクセグランを抗パーキンソン薬として適応外処方してはならないルールになっている。