ジプレキサとセロクエルは糖尿病では原則禁忌に変更してほしい話 | kyupinの日記 気が向けば更新

ジプレキサとセロクエルは糖尿病では原則禁忌に変更してほしい話

現在、診療報酬上、ジプレキサとセロクエルは糖尿病に禁忌とされている。しかも、糖尿病の既往があるだけで禁忌と言う厳しさである。

日本でジプレキサが上梓された時は、まだ糖尿病には禁忌ではなかった。しかし、その後、糖尿病が著しく悪化し死亡例も出たため、禁忌とされたのである。この際に、同じ系統のセロクエルも禁忌となった。

ジプレキサ及びセロクエルが糖尿病の軽重に関係なく、須らく禁忌というのは臨床上、非常に困る話。

自分たちは精神科医なので、患者さんの診察時、一見して糖尿病だとはわからない。よほどのケースでも、外観だけでは糖尿病とは診断できないのである。(黄疸のようにわからないという意味)

しかし、患者さんの診察時、一見して「ジプレキサが合いそうだ」というのは比較的わかるのである。(参考1参考2)ジプレキサが合うと思える人は、処方後、体重も減る傾向がある。多少増えたとしても激太りはほとんどない。

ある時、病状が重いため、生涯、入院させておいてほしいと言う高齢の女性患者さんが転院してきた。彼女の処方は向精神薬はリスパダール2mgのみ処方されていた。しかし、糖尿病を合併していたのである。

彼女は、肥満しているが、一見してジプレキサが合いそうな患者さんであった。そこで、療養病棟に入院させ、しかも糖尿病食を処方しなかった。(主食を小盛程度にした。)

療養病棟の処方内容はレセプト上、表に出てこない。しかし、糖尿病食を出してしまうと、診断が表面に出てしまう。

そうしてジプレキサを5mgだけ処方しリスパダールを中止し経過を観察したところ、みるみるうちに糖尿病の検査値が正常化した。以下はその推移である。

HbA1cの経過
入院時 NGSP 7.0 JDS 6.6
1ヵ月後 NGSP 6.7 JDS 6.3
2ヵ月後 NGSP 6.4 JDS 6.0
3ヵ月後 NGSP 6.3 JDS 5.9
5ヵ月後 NGSP 6.1 JDS 5.7

HbA1c の正常値
(NGSP) 4.6-6.2
(JDS) 4.3-5.8

NGSPとJDSの相違だが、NGSPは日本糖尿病学会が2012年から採用した国際標準値。JDSはそれまで日本で使われていた日本の基準。日本の基準で論文を書いた場合、NGSPに訂正するのに時間がかかり、貴重な発表でも1歩立ち遅れるリスクがあるため、国際標準値に統一されたのである。

本人の体重もこの間にいったん7㎏くらい減少し、次第に少しずつ増えて入院時より4㎏減で落ち着いた。このように患者さんによっては、明らかに薬が合っているのに、使えないというハンデキャップは大きい。

この人は精神科の入院患者の話だが、リエゾンでもジプレキサとセロクエルが糖尿病に禁忌と言う制約は非常に困る。

と言うのは、精神科以外でも今の入院患者さんの平均年齢は高く、糖尿病の合併はずっと多くなっているからである。

例えば、何らかの症状性精神病状態で、全く食事を摂らない患者は稀ではない。このような人は経口摂取が出来ないため、ずっと点滴か経管栄養で管理されている。

このように、拒食に加え認知症のBPSDや老年期のうつ病などによる昏迷などが合併している際に、糖尿病があるからと言って、ジプレキサが投与できないのは非常に痛い。その理由は、全く食べない状況だからである。

食欲をアップさせそうな薬で、糖尿病にも使える薬は、

ドグマチール
リフレックス
リリカ
3環系抗うつ剤
4環系抗うつ剤
抗ヒスタミン薬


くらいで、実際にドグマチールなどが処方されているのを見る。しかし、ドグマチールは老人に対し食欲増進にまったく効果がないことも多い。選択肢が多い方が治療の幅が広がるのである。

ジプレキサとセロクエルを禁忌としているのは、現場感覚が欠如している。

もう少し柔軟に治療できるように、禁忌ではなく「原則禁忌」に変更することが望ましい。

参考
リエゾンでは糖尿病をチェックする