幻聴ではなくて、実際に聴こえます | kyupinの日記 気が向けば更新

幻聴ではなくて、実際に聴こえます

精神科医は、患者さんに幻聴や妄想について、深く詮索しないことが多い。しかし、たまにはそれについて触れないと、内面が良くなっているかどうかがわからない。

従って、幻聴や妄想について尋ねてはならないわけではない。

妄想については相手というか対象がある分、相対的なものと言える。従って別に聴かないでも、それらしい文脈が出てくる。

統合失調症や妄想性障害の妄想は所見として絶対的なものなので、「実際に真実だったから、妄想ではない」には必ずしもならない。

これはどういう意味かと言うと、ある患者さんが○○に抱いている「被害妄想」の過去のエピソードに、それらしい現実的なトラブルがあったとしても、その他の総合的な精神症状から、妄想と診断される。つまり、過去のエピソードの検証は必要だが、それがあったとして決定的に否定はされないのである。

その意味では、妄想だけでなく幻覚にしても、その人への浸透度が重要だと思う。つまり統合失調症であれば、本人の洞察の乏しさである。


ある時、ある患者さんが、

先生は幻聴と思っているでしょう?
実際に本当のことが聴こえているのだから、幻聴じゃないです。


と言った。現実的には、「その声体験の内容が真実かどうか」などあまり問題にならないのである。この人が、その体験について、ほんの僅かでも疑う姿勢がなく、自我異和的に語っていないだけで十分である。

また、「○○君がわざと発する電磁波で自分の健康が害されている」とか、「電波搭から電波を浴びせられて健康を害している」などの言動は、遠い将来、それが真実と判明したとしても妄想なのである。

極端なことを言えば、「地震はアメリカが発明した地震兵器によって起こった」という訴えが、100年後に実は本当にそうだったとしても、やはり妄想と判断される。つまりだが、いったん妄想と診断されたいかなる事象でも、100年後、それが真実と判明した後も、その診断は誤診に変更されない。

面白い話がある。今から40年以上前の患者さんだが、「自分の胃が悪いのは、胃の中に細菌がいるからだ」と訴えて、他の人が説得したりなだめても全く考えを改めない人がいたらしい。彼は慢性胃炎であった。しかも症状が重いのである。

しかしその後、何十年か経ち、胃の中に本当に細菌がいたことが判明したのである。なぜわかったかと言うと、本人が人間ドックに入って調べたからである。今は有名になったピロリ菌は、約30年前に発見されるまで、あの酸が強い胃の中で生息できるなんて皆、思わなかった。

彼は統合失調症の診断だったが、誤診されて入院させられていたわけでは全然ない。その理由だが、その妄想だけが根拠で診断されているわけではないから。

これに反論する人は、きっと同じような病理を持っている人だと思う。

今回の記事は、過去ログに似ているものがあったので、参考に再掲する。

幻聴は実は本当のことなのに、自分が幻聴と偽って年金を貰っているような気がする。先生たちに、これが現実なことだと知れた時が怖いです。皆にすまないと思っている。嘘をつき不正をしてお金を貰っているような気がする。

自分は自分のことがよくわからないんだけど、神経症的ではないかと思う。電波が聴こえ始めると、神経をすり減らすのできついです。

私が良くならなくてすいません。

参考
統合失調症に向き合うスタンスがないこと
ピロリ菌と除菌
強烈な印象の夢(2009年1月31日) 今回の記事の後に読むと、ブラックジョークも味わい深い。