トラマールとトラムセット | kyupinの日記 気が向けば更新

トラマールとトラムセット

非麻薬性鎮痛薬トラマールは、慢性疼痛系の疾患に対し、トラムセットという合剤で既に処方されていた。トラムセットはトラマールとカロナールの合剤で、それぞれ1錠中に

トラマール(トラマドール塩酸塩) 37.5mg
カロナール(アセトアミノフェン) 325mg


が含まれている。この2剤の割合では、疼痛に対する力価という点で等価と言われている。

トラマールは日本新薬、カロナールは昭和薬品化工株式会社の製品であるが、トラムセットはなぜかどちらも扱っていないヤンセンの製品である。(ヤンセンはリスパダール、インヴェガ、トレドミンなどを販売している)

トラムセットは黄色い長細いジェイゾロフトの25mg錠を大きくしたような形状で、1種類の剤型しかない。最高、1日8錠まで処方できる。

トラムセットは、非癌性慢性疼痛に処方されるが、初期に見られる最も出現しやすい副作用は、悪心・嘔吐、傾眠である。

5%以上の副作用
悪心 41.4%
嘔吐 26.2%
便秘 21.2%
傾眠 25.9%
めまい 18.9%
胃部不快感
肝機能障害
掻痒症
頭痛
異常感


ところが、精神科の患者さんでは、これらの副作用が信じられないほど出現しない。これはたぶん、一緒に服薬する他の向精神薬により抑制されているか、このタイプの副作用に対し脳が馴化しているのではないかと考えている。自分の患者さんで、「これは到底続けられない」と思った副作用は、重度の便秘であった。

トラムセットは海外では日本での発売前に既に上梓されており、商品名はウルトラセットである。日本ではおそらくウルトラセットでは困ることがあったのであろう。ウルトラセットも日本のトラムセットと全く同じ合剤比率なので、おそらく同一の錠剤だと思う。なお、ウルトラセットの催奇形性リスクはCである。

【C】
動物生殖試験では胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。注意が必要であるが投薬のベネフィットがリスクを上回る可能性はある(ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること)。


添付文書的には、1回1錠を1日4回投与するように書かれており、服薬は4時間以上空ける様に指導されている。最高は1日8錠まで。ただし、抜歯後の疼痛に対しては1回に2錠服用するように記載されている。

トラムセットは慢性疼痛には効果的であるが、なぜか頭痛にはさほど効かない。まだロキソニンの方が効くというのが結構多い。カロナールが非力なのと、偏頭痛系の人で、専門の偏頭痛薬でないと難しいのかもしれないと思う。

リリカに比べトラムセットが優れている点は、リリカはしばしば肥満を来たすのに対し、トラムセットはそれがないこと。むしろ嘔気・嘔吐・食欲不振になる人は体重が減少する可能性もある。また、リリカに比べるとトラムセットは認知機能への悪影響が少ない。つまり、リリカぼけしないのが良い点である。

また他の重要な点として、トラムセットには服用時に多幸感が全くない。まだ、デパスのほうがそれらしきものがあると言えるほどである。

2013年6月14日、トラマールは「慢性疼痛における鎮痛」が適応追加されている。それまでは、癌性の疼痛にしか適応がなかったが、広く処方できるようになったのである。日本新薬は適応追加に際し、

○鎮痛作用強度はNSAIDsとモルヒネの中間。
○モルヒネに比べると安全性が高い。
○麻薬指定を受けていない。


の3点を挙げてアピールしている。

癌性疼痛及び慢性疼痛治療薬のトラマールは、元々25mgと50mgカプセルしか販売されていない。つまり、25mgカプセルは、トラムセット1錠内のトラマドールより少ないことになる。癌性疼痛としてのトラマールは2010年9月から発売されていた。(ちなみにトラムセットの販売開始は2011年7月)

トラマールの作用機序であるが、元々、オピオイドはオピオイド受容体(μ、σ、κ)に特異的に結合することで鎮痛作用をもたらす。モスヒネはμオピオイド受容体に結合し、強いオピオイド作動性により鎮痛効果を発揮することに対し、トラマドール塩酸塩及び活性代謝物M1は主に、

①μオピオイド受容体に結合しオピオイド作動性による上行伝道路の抑制。

②ノルアドレナリンの再取り込み阻害。

③セロトニンの再取り込み阻害による下行抑制路の活性化。

の3つにより鎮痛効果を発揮すると言われている。

トラマールの用法・用量は、1日100mg~300mgを4回に分割経口投与する。ただし、症状により適宜増減するが、1回100mg、1日400mgを超えないこと。

現在、線維筋痛症に対し、リリカは適応を取得しているが、トラムセットも慢性疼痛系の疾患として処方されている。今後はこれにトラマールも加わる。

トラマールの線維筋痛症に対するエビデンスと推奨度であるが、

エビデンス Ⅱa
推奨度   B


とかなり高い評価である。これはトラムセットも本邦では同じ評価になっている。

エビデンスレベルⅠ~Ⅴについて
ランクⅠ 
Systemic review、メタ解析によるデータ。
ランクⅡa
1つ以上のランダム化試験によるデータ。
ランクⅡb
非ランダム化データによるデータ。
ランクⅢ
分析疾病学的研究によるデータ。
ランクⅣ
記述疾病学的研究によるデータ。(何例中何例が有効だったなど) 
ランクⅤ
患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見。


推奨度
A 行うように強く勧められる。
B 行うように勧められる。
C 行うように勧めるだけの根拠が明確でない。
D 行わないように勧められる。


トラマールはモルヒネの5分の1の力価を持つといわれる。

アメリカの二重盲検法では、50~400mgのトラマール経口薬は有意に疼痛を改善したという。また、アメリカの二重盲検法では、4錠から8錠のウルトラセットは有意に疼痛と生活の質を改善したと言われている。

参考
線維筋痛症と旧来の抗うつ剤
線維筋痛症の女性患者①
線維筋痛症とパニック②
線維筋痛症の薬物の推奨度と忍容性③
線維筋痛症と身体症状④