大事件
これは「リスパダール8㎎でも悪いということ」の続き。
彼女は退院後、ほぼ毎日デイケアに参加していた。時々体調不良を訴えるが、たいていトロペロン1~2Aを筋注すると急回復していた。
トロペロン筋注でごまかしつつ、リスパダールを減量していた。置き換えたのは主にトロペロンであるが総量も少しずつ減量し、トロペロンとクロフェクトン主体の処方になりつつあった。トロペロンはセレネースと同じような薬物ではなく、セレネースほどはうつ状態にさせないのでかなり感覚が違う。彼女の減量の細かい経過は長くなるし面倒なので省略(今回のエントリの主題ではないので)。
そのうち、彼女にとって大事件が起こるのである。
エビリファイの発売である。
これを3~6㎎加えたところ、それまでの虚脱のようなうつ状態が改善し、不安感、猜疑心、邪推すること、幻聴がかなり抑えられるようになった。彼女にはもともとうつ状態の波がみられていたが、エビリファイを追加することでそれが目立たなくなった。しかし少しだけトロペロンが必要で、たまに幻聴が出現した時は筋注すると改善する。またテンションが低くなると、やはりトロペロンを筋注すると改善するのであった。そのうちにトータルの薬物量が減少していった。
彼女はトロペロンを併用する条件下で、エビリファイは非常に有効であることがわかった。言い方を変えれば、エビリファイの投与下ではトロペロンが極めてエフェクティブになるのである。(参考1、参考2)
最近の処方
エビリファイ 6mg
トロペロン 3mg
クロフェクトン 50mg
デパケンR 400mg
アキネトン 1mg
レキソタン 10mg
他、下剤の漢方薬
眠剤は必要ない
不安時にワイパックス服用。
(コントミン換算505㎎)
読者の皆さんには彼女は普通の統合失調症の患者さんとは少し違うのがわかるだろうか?
彼女は統合失調症ではあるが決して典型的ではなく、予後良好の病型なのである。というより、予後良好の病型のはずだったのである。
この処方になる前後から、この数十年間の彼女と見違うようになってきていた。それはエビリファイが表情を改善していたのももちろんある。たぶん、普通の人には彼女を統合失調症とは見抜けないと思う。陰性症状が目立たず、非常に快活な人のように見えるからだ。
このような人をみると、統合失調症はいかに機能的疾患であるかがわかる。彼女は20年以上、ずっと悪い状態だったのである。彼女は薬を全く飲まない時期もあったらしいので、薬が病状を悪化させていたわけではない。彼女には自然治癒がなかった。
統合失調症はおそらくハードが壊れたようなものではなく、たぶんソフトか、悪く言ってもOSの問題なのであろう。だからこそ改善する余地が見かけ以上に大きい。また精神病とはいえ、いったん良い方向に歯車が回り始めるとどんどん良くなるのであろう。
彼女は上の処方で幻聴が完全に消失していたわけではなかった。ふだんは完全に消失しているが、何かストレスがかかるとそれが再燃するのである。またそのストレスも特定の場所、環境が多い。その意味では彼女はやはり統合失調症的ではない。しかしそれがトロペロン1Aで速やかに消失することが多く、その点でもやはり彼女は統合失調症的ではなかった。
あの幻聴は被害妄想的内容ではあるが、フラッシュバック的なのである。
不調和に見える所見は、彼女が統合失調症に至った経過が大きく関係していると思っていた。彼女は偶然、統合失調症になった人だからこそ、そういう風に見えるのであろう。もう少しオカルトを廃した言い方をすれば、やはり病前性格が統合失調症的ではないのが良かったのかもしれない。
そのような文脈からすれば、彼女はバッチフラワーがフィットしてもおかしくはなかった。
(続く)
参考
①新興宗教と統合失調症の話
②リスパダール8㎎でも悪いということ
③大事件
④統合失調症とバッチフラワーレメディ
彼女は退院後、ほぼ毎日デイケアに参加していた。時々体調不良を訴えるが、たいていトロペロン1~2Aを筋注すると急回復していた。
トロペロン筋注でごまかしつつ、リスパダールを減量していた。置き換えたのは主にトロペロンであるが総量も少しずつ減量し、トロペロンとクロフェクトン主体の処方になりつつあった。トロペロンはセレネースと同じような薬物ではなく、セレネースほどはうつ状態にさせないのでかなり感覚が違う。彼女の減量の細かい経過は長くなるし面倒なので省略(今回のエントリの主題ではないので)。
そのうち、彼女にとって大事件が起こるのである。
エビリファイの発売である。
これを3~6㎎加えたところ、それまでの虚脱のようなうつ状態が改善し、不安感、猜疑心、邪推すること、幻聴がかなり抑えられるようになった。彼女にはもともとうつ状態の波がみられていたが、エビリファイを追加することでそれが目立たなくなった。しかし少しだけトロペロンが必要で、たまに幻聴が出現した時は筋注すると改善する。またテンションが低くなると、やはりトロペロンを筋注すると改善するのであった。そのうちにトータルの薬物量が減少していった。
彼女はトロペロンを併用する条件下で、エビリファイは非常に有効であることがわかった。言い方を変えれば、エビリファイの投与下ではトロペロンが極めてエフェクティブになるのである。(参考1、参考2)
最近の処方
エビリファイ 6mg
トロペロン 3mg
クロフェクトン 50mg
デパケンR 400mg
アキネトン 1mg
レキソタン 10mg
他、下剤の漢方薬
眠剤は必要ない
不安時にワイパックス服用。
(コントミン換算505㎎)
読者の皆さんには彼女は普通の統合失調症の患者さんとは少し違うのがわかるだろうか?
彼女は統合失調症ではあるが決して典型的ではなく、予後良好の病型なのである。というより、予後良好の病型のはずだったのである。
この処方になる前後から、この数十年間の彼女と見違うようになってきていた。それはエビリファイが表情を改善していたのももちろんある。たぶん、普通の人には彼女を統合失調症とは見抜けないと思う。陰性症状が目立たず、非常に快活な人のように見えるからだ。
このような人をみると、統合失調症はいかに機能的疾患であるかがわかる。彼女は20年以上、ずっと悪い状態だったのである。彼女は薬を全く飲まない時期もあったらしいので、薬が病状を悪化させていたわけではない。彼女には自然治癒がなかった。
統合失調症はおそらくハードが壊れたようなものではなく、たぶんソフトか、悪く言ってもOSの問題なのであろう。だからこそ改善する余地が見かけ以上に大きい。また精神病とはいえ、いったん良い方向に歯車が回り始めるとどんどん良くなるのであろう。
彼女は上の処方で幻聴が完全に消失していたわけではなかった。ふだんは完全に消失しているが、何かストレスがかかるとそれが再燃するのである。またそのストレスも特定の場所、環境が多い。その意味では彼女はやはり統合失調症的ではない。しかしそれがトロペロン1Aで速やかに消失することが多く、その点でもやはり彼女は統合失調症的ではなかった。
あの幻聴は被害妄想的内容ではあるが、フラッシュバック的なのである。
不調和に見える所見は、彼女が統合失調症に至った経過が大きく関係していると思っていた。彼女は偶然、統合失調症になった人だからこそ、そういう風に見えるのであろう。もう少しオカルトを廃した言い方をすれば、やはり病前性格が統合失調症的ではないのが良かったのかもしれない。
そのような文脈からすれば、彼女はバッチフラワーがフィットしてもおかしくはなかった。
(続く)
参考
①新興宗教と統合失調症の話
②リスパダール8㎎でも悪いということ
③大事件
④統合失調症とバッチフラワーレメディ