単純に暑いと読書に必要な集中力がなくなるせいもある。読書量はこのところ、従来の半分以下だ。
「新潮文庫の100冊」「カドフェス」「ナツイチ」「河出文庫グランドフェア」とか、夏休みだからなのか、あるいは読書感想文の宿題対策なのか、一斉に書店で文庫本平積み大会が始まっているが、あんまり夏は読書に向かない。愚生は冷房が苦手なのだ。開き直って体力増強、毎日1万歩目安に歩いている。ただし、このブログでも触れてきたが、年中毎日1万歩歩いていたら膝を傷めるので決してお勧めはしない。
このブログを読む、読書感想文が課せられた小中高生がいるとは思えないが、感想文なんていうのは、1冊くそ真面目に読んで書いたりしなくてもいい。他の科目の履修に、あるいは部活に忙しければ、適当にページを選んで、「そこに書いてあることを経験したことはない」とか、「この表現は面白い」とか、「こんなことを考えたことはなかった」とか、適当に書けばいい。頭から尻尾まで全部詰め込まないほうがいい文章ができる。誤魔化しなさい。そのことに罪悪感を感じるかもしれないが、十代の子供に「この本を読んで思ったことを原稿用紙三枚にまとめなさい。」と課題を出す先生にこそ問題がある。
『雪の練習生』多和田葉子:新潮文庫19-117
★★★★★ノーベル文学賞が日本人に与えられるなら、村上春樹でなく、こっちじゃないかという気がする。海外の賞も取っているし、お膳立ては整った。
「ベルリンの壁崩壊、ソ連解体、環境問題、マスメディアの肥大化など、今日的な問題を織り込みながら、ホッキョクグマ3世代にわたる物語」という大河小説のようで、その実、コンパクトにまとまっている。普通の厚さの文庫本だ。3匹というより、3人といった方が適当だろう。各々の目線で見えるものを、ざっくりと切り取って描いている。無理に詰め込んだ感じがまったくない。長いスパンでなく、刹那刹那を取り上げて書いたことが成功要因だろう。ドライでシニカルな物語だが、ハッピーエンドが待っている。読者によってはちっともハッピーではないかもしれないが、雪の練習生というタイトルを裏切らない最後の一頁には温かみがある。
絞るということは書くという行為に不可欠のものである。絞ることが出来ずに失敗する、自分史を書くおっさんおばさんがぎょうさんおるで。プロの作家にだって大勢おるんやで。