田辺聖子の描く清原元輔 | ricky321のブログ

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父は人を笑わせるのがうまく、それに肝太い、人を人とも思わぬところがあったようである。それも悪辣、したたか、といった意味ではない。恵まれた歌才を自分でも、もちあつかいかねるほどでありながら、公人としてはあまりに微小な身分なのであった。官位は遅々としてすすまず、年月は待ってくれなかった。父はそのうちに、この人生や人間に対してある種の達観や、開き直りを持ったらしい。(中略)官位こそ微禄卑小の身だが、手だれの歌よみで、洒脱で諧謔を弄する人、と世間に思われるようになった。
以上は田辺聖子『むかし・あけぼの~小説枕草子』の一部である。主人公は当然、清少納言(文中では海松子=みるこ と記されている)なので、父とは清原元輔のことである。なにげなく書いてあるが、リズミカルでからっとしたいい文章である。もちろん、枕草子と作者へのオマージュなのだが、登場人物として魅力があるのは、元輔と海松子の最初の夫である橘則光である。

話は脇へ逸れるが、書店で手に入ったのは角川文庫の上巻だけ。下巻はAmazonで中古品を買った。廃版は惜しいと思っていると、こんどは文春文庫から発売された。たまには文春も功徳を積むものだと、ちょっと見直した。上下巻ある書籍で、上巻は紙で、下巻はKindleでDLしたというのもある。
角川文庫の表紙絵は灘本唯人。田辺作品の挿し絵や表紙をしばしば受け持った(2016年没)。
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