経済と小説 | ricky321のブログ

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読書録
19-001 文藝春秋2018/12月号
 病院のロビーに置いてあったもの。小泉純一郎と安部龍太郎の対談(桶狭間と本能寺の変がメイン)が面白かった。

19-002 『ほかならぬ人へ』白石一文/祥伝社
 図書館の使い古し書籍。10円だった。筆者の直木賞受賞作。父の白石一郎と親子二代での直木賞は初めてだったとか。表題作と『かけがえのない人へ』の二篇からなる。
 スポーツ用品メーカーに勤務する男が主人公。北京五輪を前になかなかイメージキャラクターが決まらないが、敢えて北京五輪不参加を表明したアスリートをイメキャラに据え、中国共産党の人権侵害に反対の声明を出して世界中のユーザーの共感を呼ぶ、という策戦は非常に説得力があった。
 筆者の作品は初読ではないから、元編集者だという予備知識はあった。改めて著者略歴を見ると早稲田の政経卒とある。経済的な知識やアイデアがないと書けない小説である。
 登場人物が多過ぎるかな、という気がしないでもない。冒頭部分を忘れた頃に登場してくる人物がいるのが難点だろうか。
 
 これまで2回ほど、朝日新聞連載の『グッドバイ』(朝井まかて)を取り上げてきたが、白石のものと比べると経済に関する裏付けが脆弱で、茶の買い付け、加工場の整備など、とんとん拍子で話が進んでしまうところが、逆にもどかしい。司馬遼太郎の『菜の花の沖』の優れた点は、時代背景と流通の仕組みをつまびらかにした所にある。また、主人公/高田屋嘉兵衛の目論見の失敗(船上で鰹節の加工を試みる)についても触れている。
 回りくどくなったが、『菜の花の沖』は、政治経済を巧みに織り込んだ傑作なのである。