向田邦子に感謝している | ricky321のブログ

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 私が(学生の時以来)絵を描きはじめたのはひとえに亡き母を喜ばせるためである。
 入居していた高齢者施設を病気のために退所し、入院した。当初は無聊を紛らわせるために本を読んで聞かせていた。とうに認知はあったが、本を読めば一応は訊いてくれた。その母は昭和9年の生まれである。特に少し母より早く生まれた田辺聖子と向田邦子の随筆を好んだ。特に向田の『父の詫び状』を読むと靴がなくなる場面でゲラゲラ笑った。
 しかしさらに認知が進んで、入院生活も半年過ぎると、もう理解できなくなった。そこで数十年ぶりにスケッチブックを買ったのである。
 それにしても向田邦子恐るべし。読んで聞かせれば中度の認知症の母を笑わせてくれた。
 大袈裟でもなんでもない。本というもの、文章というもの。すごいものである。
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