しかも一浪はさせずに、現役合格が絶対条件だという。
逆転合格を掲げる少し風変わりな個人塾にすっかり傾倒している様子だった。
客観的に見ればどう頑張ってもなかなか厳しい状況なのだが、彼女はそれを認めない。
東大合格は変えない、でも一浪もしない。
そんな矛盾する高いハードルのなかで滑り止め選定の相談をされたとき、頭をよぎったのは、今の大学受験が置かれているあまりにもシビアな現実だった。
うちの娘の受験のときは、滑り止め自体がかなり狭き門になっていた。
おそらく、昔のように幅広く受験生を受け入れてはいないのだと思う。
実際に娘が国立大学を受験する際、私立は相応校と安全校の2校に絞ったのだが、複数の試験形式を組み合わせても不安は尽きなかった。
我が家は浪人の選択肢がなかったため、安全校のさらに下まで受験するか葛藤した。
結局、予備校と相談して2校の私立大学にしたが、受験料は28万円近くかかった。
そして。
なんとか合格をもらえたから良かったものの、娘より確実に受かると言われていた優秀な子が全滅していくのはリアルタイムで耳にしていた。
昨年は、安全校ですら落ちた子が本当にたくさんいたのだ。
受験には絶対に、がないから怖い。
しかも、最近は私立大学で入学金の二重払い対策をする動きが本格的に始まっている。
一見すると親切な改革だが、これによって大学側は一般入試の合格者をギリギリまで絞り込むようになるはずだ。
「とりあえず入学金をもらう」というこれまでのやり方が通用しなくなり、さらに年内入試で定員を埋める動きが増えれば、一般の滑り止め枠はますます少なくなって狭き門になるだろう。
「現役で東大」という目標を崩さずに、この過酷な入試で確実に滑り止めを確保しようとすれば、安全校よりさらに下を何校か受ける必要が出てくる。
しかし、ノー勉で挑める共通テスト利用入試は上位層が枠を総なめにするため、偏差値30からのスタートでは滑り止めとして機能しづらい。
そうなれば、私立大学それぞれの独自試験を複数受けるしかなくなる。
試験を受ければ受けるほど受験料がかさむし、各私立大学ごとのテスト対策に膨大な時間を奪われることになる。
そうなると、一番時間を割かなければならない東大の二次試験対策に、思うように時間が割けなくなってしまうのだ。
怪しい塾の「奇跡の逆転」という言葉を信じ、現実に気づいていないママ友。
しかし、受験はそんなに甘いものではない。
今の過酷な入試制度だからこそ、根拠のない夢物語を盲信するのではなく、シビアな現実とデータを直視した確実な戦略だけが、最後に結果を手繰り寄せるのだ。
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