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 表紙の写真に惹かれて、新幹線の車内販売というお仕事をしている23歳の女性の日々を読んでみた。販売額が第一位になったことで、新聞社の取材を受け、この本まで出版されることになったらしい。
 仕事がら常に綺麗な言葉を使っている方だから、文章も綺麗で読んでいて気持ちいい。2007年3月初版

 

 

【8時間3分ぶりの帰京】
 東京駅に戻ってきたのは17時6分。8時間3分ぶりの帰京です。大阪よりも日の入りが早い東京、空はもう真っ暗です。(p.18)
 このお仕事ならではの文章である。大阪では90分ほど自由時間があるらしい。
 東京と大阪は経度が10度ほど違うから実際には40分ほど時差ある。帰路は夕闇に向かって爆進してゆく感じなんだろう。

 

 

【サービス業】
 著者が通っていた高校には実社会の仕事を体験する 「課外授業」 があったという。
 体験したホテルでの実習は、想像以上に楽しいものでした。お客様とのちょっとした会話のやり取りが楽しく、「ありがとう」 と感謝していただくことが嬉しかったのです。(p.30)
 著者には接客業があっていたのだろう。質の高いサービスがしたいという望みが叶って、一流ホテルに就職できたけれど、所属した課には、 “お客様によってサービスに差をつけるという風潮” が蔓延していたのが堪えられず辞めてしまったのだという。 「お客様によって差をつけるなんて、サービスの本質が崩れている」 と感じることのできる人って、極めて高い精神性を持っている証拠だろう。それこそ本当の日本精神である。立派!立派!

 

 

【言葉遣い】
 新幹線パーサーの研修にて、
 講義のなかで、印象に残ったインストラクターの言葉があります。
 「 『言葉遣い』 の遣うには 『人にお仕えする』 という意味も含まれていると思いませんか? 仕事をする上ではこのことを頭に入れて、言葉を使ってください」 (p.56)
 “男女同等” だとか “女性差別” だとかいうことにこだわるのは、精神性の次元が低い証拠である。男女という性別に関わりなく、高次元の精神性を有する人なら、自ら敬愛に近しい思いで何者かに仕えることを喜びとするもの。このような言葉が印象的に思えるということは、笑顔が美しいばかりではなく、先天的に精神性が高いという証拠である。
   《参照》   『アミ3度目の約束』 エンリケ・バリオス (徳間書店) 《前編》

              【叡智と敬いの気持ち】

 

 

【絶対に言ってはいけない言葉】
 パーサーの仕事は、お客様との会話なくしては成り立ちません。まず、絶対に言ってはいけない言葉として、
「こちら、お釣りのほうになります」
「このお弁当でよろしかったでしょうか」
 の二つが挙げられました。
「○○のほう」 というのは今ではよく接客の際の誤った言葉遣いの例として挙げられていますが、確かに意味不明の不要な言葉です。
「○○でよろしかったでしょうか?」 がいけないのは、「よろしかった」 となぜか過去形になっているうえに、語尾が疑問形になっていて聞き苦しいという理由です。これらの言葉の代わりに 「ございます」 という言葉を遣えば、次のように簡潔で丁寧な言葉になると指導されました。
「100円のお返しでございます」
「 『21世紀出陣弁当』 でございます」 (p.57-58)
 コンビニやスーパーのアルバイトにも、是非このようなきちんとした指導をしてほしいものである。
   《参照》   『日本人の知らない日本語』 蛇蔵&海野凪子 (メディアファクトリー)

              【バイトの敬語は困りもの】

 

 

【プラスの発電機】
 これも新幹線パーサーの研修にて、
 「マイナスのイメージではなく、プラスのイメージでお客さまに接すること。そうするといつも楽しい気持ちでいられて、お客様に対して自然と温かい気持ちが湧いてくる。そいうパーサーにならなければいけないんです」
 これはこの講義の締めくくりに、インストラクターからいただいたアドバイスです。(p.62)
 プラスの雰囲気を醸し出している発電機みたいな人が側にいたら、もうそこはほとんど “ヘヴン・ウィス・エンジェル!” である。 接客業であるか否かに関わらず、全ての人にとって目標とすべき在り方だろう。

 

 

【お弁当のベストスリー】
 第1位は定番の 「彩り駅弁 幕の内弁当」 です。(p.88)
 第2位は愛知万博に合わせて発売された 「日本の味博覧」。
 第3位は、駅弁コンテストグランプリを受賞した 「21世紀出陣弁当」 だそうです。
 日本の駅弁は見た目が綺麗で美味しいのは当たり前だから、それが普通と思っているけれど、海外で駅弁を経験すると、日本の駅弁は本当に良くできていると思うものである。
 上掲の写真は台湾で食べた80元(240円)の駅弁。見栄えはこんな感じで、味はまあまあだけれど、太い細いの骨付きでムチャクチャ食べにくいのなんのって、「犬用?」って思えてくるような代物なのである。(チャンちゃんにはピッタリだけどね) 駅の売店で買ったものだったけれど、笑顔の綺麗な新幹線ガールから買ったお弁当がコンナンだったら、男たちは泣いちゃうかうつ病になるか死んじゃうかですよ。

 

 

【ちくわ】
 おつまみでいちばん人気なのは 「ちくわ」 です。男の人ってなんでこんなに 「ちくわ」 が好きなのだろうと、なんだかおかしくなるほどよくお求めいただけます。(p.94)
 そんなによく売れるんなら、「組み合わせちくわの5本セット」 でも企画して販売すればいいのに。チーズ味、明太子味、わさび味、タバスコ味、普通のちくわの5本セットなんていいかも。「タバスコ味ちくわ用にドリンクも合わせてお買い求めください。普通のちくわはストローとしてもお使いいただけます」 なんて言いながら販売してくれたら、チャンちゃんクラスのアホ人間は、瞳ランランで絶対買い!である。

 

 

【鉄ちゃん】
「鉄ちゃん」という言葉を知っていますか? 私はこの仕事を始めるまで知らなかったのですが、いわゆる 「鉄道マニア」 の方々を指す言葉です。マニアの方のなかでも実際に乗車するのが好きな 「乗り鉄さん」、 写真の撮影が好きな 「撮り鉄さん」 などに分かれると聞きました。(p.108)
 へぇ~~~、知らんかった。

 

 

【パーサー泣かせの日】
 新幹線が非常に混み合うのは、高校野球がある時、そしてそれを上回るのが東京ドームで行われる都市対抗野球がある時、さらにそれを上回るのが鈴鹿でサーキットが行われる日なのだという。
 皆様に共通するのは車中でも本当に楽しそうなお顔をされているということ。(p.114)
 都市対抗野球なんて、おそらく交通費は会社持ちなんだろうから、その分、お弁当やビールやおつまみがバカ売れするんだろう。いいなぁ~~~。

 

 

【万歩計で計ったら・・・】
 記録はなんと4万歩! 参考までに、ビジネスマンの方の1日に歩く平均歩数は五千歩前後と言われています。 ・・・(中略)・・・ パーサーの仕事を続けている限り、運動不足になる心配はなさそうです。(p.122)
 これは繁忙期の記録だというけれど、通常でも新幹線の7車両分をワゴンを押しながら3往復、往復で6往復するそうです。

 

 

【ひきこもりやニートへ】
 この書籍の一番最後に書かれていること。
 パーサーの仕事を皆さまにお伝えするだけでしたら、私よりももっとベテランの先輩方がたくさんいらっしゃいます。たかが2年ほどの経験を積んだだけで、この仕事のすべてを分かったように語り尽くすことはできません。だったらいま23歳の等身大の私が、日々どんなことを感じながら仕事をしているのか、ありのままをさらけだそうと思いました。新幹線パーサーは時間も不規則で、体力的にも厳しい仕事です。でもそんな仕事を天職だと感じて毎日頑張っている23歳の普通の女の子がここにいます、と皆さまにお伝えしたかったのです。
 私と同じ世代にはひきこもりやニートと呼ばれる方々がたくさんいて、社会的に問題になっています。読者の方のなかにも、もしかしたらそうした方がいらっしゃるかもしれません。私も就職先を1年足らずで辞めた身。偉そうなことは言えません。ただ一つ言いたいことは、「一度でいいから働いてみて!」 ということ。すぐに辞めたっていいんです。きっと何かが変わると思います。
 最後に、この本を読んでくださったすべての方々が、新幹線のことを大好きになってくれればとてもうれしく思います。皆さまのご乗車をパーサー一同、心からお待ち申しております。(p.189-190)
 新幹線パーサーさんって、お客様のためにより質の高いサービスを追求しつつ、誇りをもって輝いている方々なのだということが良く分かりました。新幹線の中で乗客として会ったのでもないのに、読むだけで幸せになれた気分です。素敵な本を読ませていただきました。ありがとう。

 

 

<了>