
高い技術をもつ優れた会社なのだけれど、トヨタ系列の企業なのでトヨタの下に隠れていて、ビジネス書の中で扱われることは、それほど多くないように思う。デンソーの本来の社名は “日本電装” である。2004年3月初版。
【小型ディーゼル用コモンレール】
《参照》 『ディーゼルこそが、地球を救う』 小川英之・清水和夫・金谷年展 ダイヤモンド社
ドイツ企業のボッシュは、欧州ナンバーワン企業である。かつて、デンソーはボッシュから多くを学びとっていた。
ボッシュ製のシステムを超えるものを想像もしていなかった世界の技術者の間で、2001年のフランクフルトモーターショーに登場したデンソー製の革新的なコモンレールが、驚きの想いで迎えられたのも無理はなかった。しかも、それが普通乗用車の小型ディーゼルエンジン用として大々的に公表されただけに評判の渦を巻き起こしたという次第である。(p.27-28)
コモンレールについては下記。《参照》 『ディーゼルこそが、地球を救う』 小川英之・清水和夫・金谷年展 ダイヤモンド社
【醜いアヒルの子の2つの短所】
1燃焼5回噴射のコモンレールでは、ほとんど間断なく燃焼が連続しているも同然で、独立した爆発音が断続的に繰り返されるのではなく、ガソリン車と同等といっていい燃焼音が続くようなぐあいだ。だから、気になるようなディーゼルエンジン特有の音がしない。同様に、これまた従来型ディーゼルエンジンでは気になるかもしれない振動も、ほとんど感じられない。(p.44-45)
1999年時点では、デンソーもボッシュも1350気圧のコモンレールを達成していたけれど、次にボッシュが1600気圧を目標としていたときに、デンソーは1800気圧を達成していたそうである。噴射回数5回もボッシュとの差別化ができる大きな長所だった。ドイツ企業のボッシュは、欧州ナンバーワン企業である。かつて、デンソーはボッシュから多くを学びとっていた。
【世界中に供給されているデンソー品】
いま世界でデンソー品を搭載しないで走っている車は、おそらく1,2社しかないと思われる。
トヨタ以外の自動車メーカーにデンソー品が供給されていることを、トヨタも容認している。それは黙認しているというより、むしろ奨励すらされている様子である。(p.54)
トヨタ以外の自動車メーカーにデンソー品が供給されていることを、トヨタも容認している。それは黙認しているというより、むしろ奨励すらされている様子である。(p.54)
【半導体分野への進出】
お役人も業界関係者も 「(デンソーの)IC製造を含むエレクトロニクス事業」 の構想を門前払いする有様だったとか。
「半導体なんて、すでに立ち上がっている電子産業にまかせておけばいい」、「だいたい自動車なんてメカに、エレクトロニクスは関係ないじゃないか」 という理解と反応だったのである。(p.59)
このようなお役所の言い分に従っていたとしたら、今日のデンソーなどなかったのは言うまでもない。当時、半導体分野進出のため、役所や関連業界を回って説得に明け暮れたという 「経営の力」 は凡人感覚ではない。
【ボッシュとの提携】
《参照》 『エクセレント・グローバリゼーション』 上之郷利昭 ダイヤモンド社 《後編》
ボッシュが技術提携先を海外に求めていたのは、冷戦下で東西ドイツの緊張が高まり、危機管理のために海外に資産や技術を移しておこうとの思惑があったらしい。それかあらぬか、ボッシュの技術ないしは情報の開示ぶりは、いくらロイヤリティの対価を取るからといって、全面的とさえ言って良いほどであるのに驚く。
・・・(中略)・・・ 。
ボッシュとの技術提携が日本電装にもたらしたものの大きさは、想像に難くない。それは多面的で日本電装の事業ウイングを広げ、また日本電装の有する潜在能力を刺激して技術・技能を深化させる契機となった。(p.65)
デンソーにとってのボッシュといい、横川電気にとってのフォックスボロといい、松下にとってのフィリップスといい、海外企業との技術提携がなかったら、今日の日本の主要企業の成長はなかったはずである。・・・(中略)・・・ 。
ボッシュとの技術提携が日本電装にもたらしたものの大きさは、想像に難くない。それは多面的で日本電装の事業ウイングを広げ、また日本電装の有する潜在能力を刺激して技術・技能を深化させる契機となった。(p.65)
《参照》 『エクセレント・グローバリゼーション』 上之郷利昭 ダイヤモンド社 《後編》
【フェアなフォックスボロ社】
それを思えば、現在、日本企業が、アジアを中心とする企業と提携して技術を提供してきたことは、かつて通ってきた道という思いもあるのだろう。そうでなければフェアな国際企業とは言えない。
【電気自動車】
電気洗濯機を販売したこともあったという。しかも、1950年代初頭でドラム式だったという。一時は総売上の2割近くに達したけれど、家電専門メーカーの販売方法や価格に押されて売れ行きは鈍化したとか。
それにしてもデンソーは、電気自動車とか、ドラム式電気洗濯機とか、その時代にあっては最先端技術を実現していたことになる。時代に先行しすぎていた天才企業と言っていいのかもしれない。
巻線技術からスタートした日本電装の事業だったが、なんと1950年には、電気自動車を製造販売している。(p.72)
鉛の値上がりと、ガソリンの統制撤廃によって、ガソリン車の普及という流れになり、電気自動車は50台限りの製造で終了したそうである。電気洗濯機を販売したこともあったという。しかも、1950年代初頭でドラム式だったという。一時は総売上の2割近くに達したけれど、家電専門メーカーの販売方法や価格に押されて売れ行きは鈍化したとか。
それにしてもデンソーは、電気自動車とか、ドラム式電気洗濯機とか、その時代にあっては最先端技術を実現していたことになる。時代に先行しすぎていた天才企業と言っていいのかもしれない。
とはいえ、戦前に電気自動車を作っていた会社もあった。
【技能オリンピック】
1962年の初参加から日本がメダルを独占する勢いが続いていたという。
この状況を記述している7ページほどを読む間は、本当に息を飲んでしまった。
1962年の初参加から日本がメダルを独占する勢いが続いていたという。
しかし、1980年代半ばまでだった。その頃から韓国や台湾を中心とするアジアの新興工業国が金メダル常連国として台頭してきた。 (p.89)
バブルに浮かれて、若者が製造業より金融業に就職するようになってから、日本の技能に陰りが見え出したということなのだろう。2003年の技能オリンピックで日本が獲得した金メダル6個のうち、3個はデンソーの社員によるものだという。
昨年の第37回大会(2003年)で金メダルを獲得した3人を含めて、これまでデンソーからは19名の金メダリストを輩出しており、日本の技能レベルを代表する企業として全世界に知られるところとなっている。(p.92)
34回大会(1997年)で、日本が金メダルを死守してきた精密機械部門に出場したデンソーの田上さんは、部品を組み立てる仕上げの段階で首をかしげてしまった。そして、 「設計図面の寸法に0.8ミリの表記ミスがある」 と指摘したそうである。審判団はこの事実を確認し、田上さんは金メダルを獲得したという。この状況を記述している7ページほどを読む間は、本当に息を飲んでしまった。
【若い女子従業員が支える「技能のデンソー」】
それは心臓部を固定する重要なネジで、何か異常があれば大変なことになる個所だった。
感覚的な判断は、あらゆる測定技術を以てしても発見できないものを発見できる、高度な技能である。
ある女子作業員が声を上げた。「変だ」 と、そして錫木に向かって 「今日のネジは変です」 というではないか。
どう変なんだと問うと、「ネジを締めても、その締める感じが違う」 と。(p.139)
ラインを止め、そのネジを切断して顕微鏡で断面を調べたところ、大部分のネジの首下にクラック(亀裂)が入っていたという。どう変なんだと問うと、「ネジを締めても、その締める感じが違う」 と。(p.139)
それは心臓部を固定する重要なネジで、何か異常があれば大変なことになる個所だった。
感覚的な判断は、あらゆる測定技術を以てしても発見できないものを発見できる、高度な技能である。
【「もっとアタマを鍛えたい」、「ウデを磨きたい」】
社長の深谷が 「技術者は、もっと勉強してアタマ(頭脳)を鍛えたいと思う。技能者は、まだ技能が足りない、もっとウデを磨きたいと思う。それがデンソー人間です」 と言う。育つ者、成長する者として、人を見るのだという。(p.193)
地方行政公務員の場合は、「職員は、まったくアタマもウデも鍛えたいとは思わない。管理職は部下共々、如何に上手にサボって出勤しないかを暗黙のうちに理解させ実行させる。馬鹿であってもなんら困らない。向上心など全くの不問。それが地方行政公務員です」 と言う。育つ必要のない者、成長する必要のない者として、人を見るのだという。だから、民間企業が、中途採用をする場合であっても、公務員としての職歴が記述されている人の場合、無職として扱うそうである。当然である。
【技術と技能】
技術は、すなわち図面に表せる。とどのつまり図面に表すことで、誰にも理解可能な共通言語となる。ようするに形式知なのだ、とも言う。
加古の口から 「形式知」 という表現が飛び出して、そうか 「対して技能は、暗黙知」 と言いたいのだと、すぐわかった。(p.202)
形式知:暗黙知 = 技術:技能。加古の口から 「形式知」 という表現が飛び出して、そうか 「対して技能は、暗黙知」 と言いたいのだと、すぐわかった。(p.202)
【Total ではなく Together】
全社的品質管理または総合的品質管理といわれるTQC(Total Quality Control)は、広く知られている。これをデンソー流に 「経営と品質管理」 とアレンジしたのがTQM。また、TPMは Total Productive Maintenance、総合的生産保全。
そして、これは最も日本人に適した在り方である。外国人にはこれがなかなかできない。日本人は一人一人が比較的高度な霊性を備えているからこれができるのである。
全社的品質管理または総合的品質管理といわれるTQC(Total Quality Control)は、広く知られている。これをデンソー流に 「経営と品質管理」 とアレンジしたのがTQM。また、TPMは Total Productive Maintenance、総合的生産保全。
深谷が言うのは、こうである・・・・「TQCも、TQMも、またTPMも、そこの冠せられているTはトータルの意味だけれど、ウチではね、誰もトータルなんて思ってないんじゃないかな。みんな together だと思っている」 と。
つまり、デンソーは 「みんなで一緒に考えよう。一緒にやろうよ」 という合意形成ができる会社なのだ、と。(p.207-208)
「一緒にやろうよ」 なんて幼稚園児みたいに思えてしまうけれど、これは “1は全体で美しい” という宇宙の真実に繋がる考え方であって、集団をもっとも効果的に機能させるには最適な在り方のはずである。つまり、デンソーは 「みんなで一緒に考えよう。一緒にやろうよ」 という合意形成ができる会社なのだ、と。(p.207-208)
そして、これは最も日本人に適した在り方である。外国人にはこれがなかなかできない。日本人は一人一人が比較的高度な霊性を備えているからこれができるのである。
<了>