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 日本はガソリン車が主流だけど、西欧はディーゼルが大半を占めていることを知ってはいたけれど、その理由が知りたくて手にしてみた。
 ついでに、ディーゼル・エンジンに関する意外な事実が見えてくる。おそらく、私同様に、多くの日本人は、醜いアヒルの子が美しい白鳥に成長していたのを知らずにいる(た)のである。 2004年4月初版。

 

 

【欧州のディーゼル車の比率】
 日本ではディーゼル乗用車のガソリン車に対する比率はわずかに0.4%なのに対し、欧州では何と乗用車の約40%をディーゼル車が占めているのである。(p.5)
 そうなった主な理由。
 大陸でつながっている欧州と国土の狭い日本では走る距離は前者のほうが圧倒的に長い。・・・中略・・・。つまり(日本は)あまりスピードを出せない都市型交通の国であることから、欧州ほどディーゼル車の良さである効率や耐久性を実感することができなかったのだ。(p.9)
 東京都の条例でディーゼル車が締め出された理由。
 非常に長持ちするというディーゼルの貴重な長所のために、古い粗悪なディーゼル車がいまでも走り続けていることがあだとなってしまったのだ。(p.3)
 現在では技術が進化して白鳥ディーゼル車が多いのに、数少ない醜いアヒルのディーゼル車がまき散らす黒い排気ガスが、東京都の条例制定を後押しする決め手になってしまっていたらしい。

 

 

【ルドルフ・ディーゼル】
 石畳の往来を馬車が行き交う1858年のパリ。まだ肌寒い3月18日に、革製品製造業を営むドイツ人夫妻は男の子を授かった。ディーゼル夫妻は子どもにルドルフという名前をつけた。
 ルドルフの名前で分かるように、パリで生まれたと言ってもドイツ人である。
 ちなみにダイムラー は1843年生まれ、ベンツ は1844年生まれ、1858年生まれのルドルフよりも14、15歳年上である。(p.39)
 ちなみに、日本で初めてディーゼル車が、いすゞ自動車によって発売されたのは、1961年である。

 

 

【ガソリン vs ディーゼル】
 実用上(圧縮比)は17前後が最適とされる。ディーゼルエンジンは、まさに圧縮比は17前後であり熱効率上最適となっているのに対し、ガソリンエンジンでは8から10程度と低く、これが熱効率の低い1つの要因となっている。(p.58)
 圧縮比の高いディーゼルは高温になるため自然発火であるけれど、ガソリンの場合は人為的なプラグによる着火である。エンジンの大きや耐久性などの違いは、この圧縮比に絡んでいる。
 また、ディーゼルエンジンは、 “ブタの胃袋” にたとえられるという。ガソリンエンジンは、ガソリン以外の燃料は受け付けないけれど、ディーゼルエンジンはバイオ燃料などでも代替可能である。これも圧縮比が要因だろう。

 

 

【醜いアヒルの子の2つの短所】
 ディーゼルエンジンには、100年の眠りを宿命づけられた眠り姫のごとく、生まれた時からの呪縛があった。それはNOx(窒素酸化物)とPM(粒子状物質)を同時に削減できない、トレードオフの呪いである。どちらかを減らせば、必ずどちらかが増える。 (p.70)
 NOxは、石油から軽油を精製する過程で、サルファフリー(脱硫黄)化しておけば解決するものなのだけれど、それはそれで精製にコストがかかり、消費者が購入する燃料費が高くなってしまう。
 醜いアヒルの子を救って白鳥にした皇子の名前は、コモンレール。あんまりカッコイイ名前ではない。
 コモンレール式ディーゼルとは、その名のとおり、高圧燃料を畜圧室(コモンレール)に蓄え、エンジンの運転状況に応じて最適な噴射量と噴射タイミングをコンピュータ制御で決定し、電磁式のインジェクション・ノズル(燃料噴射弁)から噴射する方式である。(p.89)
 コモンレールの技術によって超高圧の多段階噴射を行い、「予混合圧縮着火 (p.122) 」をおこなうことで、ディーゼルエンジンの2つの短所がある程度同時に克服できるのだという。このコモンレールの技術には電子制御に大きな鍵があるという。生みの親であるルドルフ・ディーゼルの時代では到底成しえなかった技術である。

 

 

【欧州ディーゼル車のエンジンはいすゞ製】
 欧州の 「ユーロ4」(排気ガス規制値) を初めてクリアしたディーゼル車はオペル・アストラ1.7リッターCDTIであったが、実はこのエンジンを開発、生産、供給しているのもいすゞである。ルノー、サーブなど欧州の錚々たる乗用車に、いすゞ自動車のディーゼルエンジンは搭載されている。高い評価を受けているのである。(p.104)

 

 

【石油から見たエンジン・バランス】
 原油からは、ガソリン、灯油、軽油、重油といった石油製品が精製時に一定のバランスでつくられる。この中で改質によって水素を取り出すことが比較的容易なのはガソリンと灯油で、これらの改質機はすでに実用化されているが、ディーゼル燃料の軽油は改質して水素を取り出すことが大変難しい。したがって水素を取り出しやすいガソリンはなるべく燃料電池車用の水素に、水素を取り出しにくい軽油はそのままスーパークリーンディーゼルエンジン用として使っていくことが望ましい。 (p.181)
 ディーゼル車の多いドイツでは、ガソリンが余り、軽油が不足する、という事態になっているらしい。ガソリン車とディーゼル車は、石油からの精製比率に応じて、世界中の自動車会社は互いに生産量を調整してゆくことになるのだろう。
 

【VWはディーゼル主体の戦略】
 VWとはフォルクス・ワーゲン社のこと。
 VWは短期中期の環境戦略として、ディーゼルエンジンは欠かせない重要な技術と位置ずけている。私とのインタビューでも 「ハイブリッドにはあまり興味がなく、同じコストをかけるなら、クリーン・ディーゼルが優先する」 と明言していた。 (p.186)
 ホンダのハイブリッド・インサイトが二人乗りで、リッター当たり33キロなので、VWのプロトタイプディーゼルエンジンがリッター当たり112キロも走るとは、ハイブリッドも真っ青である。(p.190)

 

 おおかたの日本人は、この事実を知らないだろう。見栄っ張り程高額なハイブリッド車を購入したがるけれど、要は知性がないのである。現実的な経済性(燃費、整備費)を考えたら、圧倒的にディーゼルである。

 

 

【ディーゼルの軽自動車】
 660ccのディーゼルにすれば、今の車よりももっとトルキーなクルマになるはずです。そうすれば、軽自動車のあの安っぽい走りがプレミアになる可能性があります。それで値段が5万から10万高くなっても、新しい乗り味が提供できれば必ず新しいマーケットがつくれると私は信じます。 (p.216)
 VWは1300cc3気筒のディーゼルエンジンでリッター33kmを実現しているというから、660ccのディーゼル軽自動車ならば、単純計算で約倍のリッター66km程度は走るということになる。であれば、軽自動車大国日本の消費者も、おしなべてディーゼル軽自動車に買い替えるだろう。

 

 

 環境問題の進展で、既にアメリカでは、最高速度200km、フル充電での走行距離350kmの電気自動車が市販されているけれど、高緯度の寒冷地方では、決して電気自動車は実用的ではないはずである。エンジンで熱エネルギーに変換されてしまう分が、貴重な暖房効果を担っているからである。 電気自動車で冷暖房を賄うためには、バッテリーのさらなる大型化・重量増が必要になってしまう。
 
 
 
<了>