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 日本語を研究する学者さんである金田一(きんだいち)さんと、バラエティー系の芸能人である柴田さんの対談。こういう本が、大学の図書館にあっても、決して悪くはないだろう。
< 台湾・元智大学図書館 にあった本 > 

 

【新聞を読むのに必要な語彙数】
金 : フランス人がフランス語の新聞を98%理解するのに必要な語彙は、5000語くらいです。それが日本語の場合、・・・(中略)・・・、1万語くらいとされています。(p.18)
 この違いに驚くけれど、実質は数字ほどの違いはない。
金 : 知っている漢字は普通2000字くらいですが、5000語から先の語彙は漢字同士の組み合わせになります。2000の漢字を知っていることによって、僕らは膨大な量の語彙を持っていることになるわけです。(p.19)
 漢字文化圏以外の国の人々が日本語を学ぶ場合には、まず漢字2000語の理解、というのが最初の高~いハードルになってしまう。

   《参照》  『一年で社説が読めた』 斉藤次郎編 (研究者出版)

             【悪魔の言葉】 【漢字ノイローゼ】

 

 

【日本語は 「音」 がやさしい】
金 : 基本的に日本語はやさしい言語であるといえます。難しい言語ではありません。
 発音がとても容易で音がやさしいというのは、決定的にやさしいことにまります。数えたかにもよりますが、日本語の音は105とか101などといわれています。英語は3万を数えて、やめたといいます。音の種類がやたら多いんです。韓国語も中国語もそうです。
 たいていの言語は、そんな単純な音でできていません。日本語の音が約100というののは、驚くべき少なさです。ポリネシアやハワイの言葉も同様に音が少ないのですが、それは、世界的にはとても珍しいことです。(p.27-28)
 ここでも日本語とポリネシア語の共通性が語られている。
    《参照》  日本文化講座⑩ 【 日本語の特性 】 <前編>

           ■ 日本語と日本人の脳の特異性 ■

 一般に日本語は難しいといわれているけれど、それは漢字文化圏以外の国の人々にとって難儀な漢字を主たる障害として言っているだけのことである。 中国人や韓国人が日本語を習うより、日本人が中国語や韓国語を習うほうがはるかに難しいのである。

 

 

【季節と文化】

 挨拶の後に添える季節のことについて話しつつ、世界各国には季節に応じた行事が日本ほどない、という話題の中で、
柴 : フィリピンもないみたいですよ。パブの踊り子さんと友達になったんですけど、「ずっと日本に住みたい」 「日本ではおしゃれができる」 って。春夏秋冬季節があるから。
「冬はこんな洋服が着られる、春はこんなものが着られる」 しかもさらに 「その間の微妙なときも別なものが着られるから楽しい」 と。(p.82)
 世界中で四季があるのは日本だけではないけれど、亜熱帯地域の国々から日本に来た女性は、たいていこれと同じことを言う。
 5月6月といった今頃は、日本では花盛りの季節だけれど、台湾では赤色系と黄色系の花をせいぜい2つか3つ見かけるだけである。気候に多様性がないと彩り豊かになれないのは人間ばかりではない。
 ということは、日本語の繊細さや多様さは、移り変わる季節にも依存しているということである。

 

 

【敬語に関して】
 日本の学生にアンケートをとったら、およそ3割の学生は、目上の人には敬語を使うべきと答えているそうである。(アンケート対象が韓国人の学生なら99%そうだろう)
金 ; 妥当な結果だと思いますよ。問題を起こしたくないという気持ちが働くから、今の若者は。・・・(中略)・・・。
柴 : 昔のフォークソング世代や権力に反抗する時代の人たちのほうが、敬語は尊敬できる人にしか使わないと言いそう。それで、敬語が使えなくなって・・・・・その子どもも・・・・・って、あれ?
金 : でも、それを見てきた反動からか、今の子どもたちは、やたら保守的。敬語は使わないければいけないと信じています。(p.107)
 反動保守で敬語を使うというのではあまり感心しない。基本は誰に対してであれ “敬意を持つ” ということが先にあるべきなのだろう。一流の人々なら、年齢性別を問わず相手に対して敬意を持っている。ところが、若者が誰に対しても敬意を持たず、目上に対して名前を呼び捨てにするなどというのであれば、一体全体、どのようにして社会の秩序が保てるというか。
    《参照》  『みんなのためのルールブック』 ロン・クラーク (草思社)

              【ルール1】

 

 

【上下関係】
柴 : 今の若い子は、同期が誰であるとか、きっちりしていますね。先輩方の前では、私も若手に戻ります。芸能界は、上下関係はきっちりしていると思いますよ。・・・(中略)・・・。
 でも、変な言い方ですけど、上下関係があることで人間関係の摩擦が少なくなるという面はあります。
 個性的な人が多くても、「生意気なんじゃないの、あの子」 っていう方にはなっていかない。
金 : もう、ピタッというか、なんというかな・・・・。
柴 ; だから、今の若い人たちは、そういうのが上手かも知れない。(p.112)
 上下関係があるからこそ、人としての向上心が生じ、それに応じた敬語という繊細な言語空間もあるのである。
     《参照》  『美人の仕事術』 中谷彰宏 (ぜんにち)

            【礼儀正しいことの目的】

 上下関係を、支配被支配とか優劣というマイナスな概念で考えてしまう人というのは、 “敬意” がもつ高度な意味をまったく知らない人々である。
     《参照》  『アミ3度目の約束』 エンリケ・バリオス (徳間書店) 《前編》

             【叡智と敬いの気持ち】

 

 

【中国人と韓国人】
金 : 韓国の人は、すぐ敬語を勉強したがります。韓国語には敬語がありますから。敬語はとても大切だという意識もあります。だから、「です」 「ます」 で話したがる。
 一方、中国の人は、「です」 「ます」 みたいな敬語がないんです。だから、「行くか」 「やるぞ」 みたいな表現をする。
 教室で僕らが居ないときに、韓国人と中国人が日本語で話すことがあると、話していくうちに韓国人は怒り出すそうです。韓国人は 「です」 「ます」 で話すのに、だんだん中国人は 「です」 「ます」 を使わなくなってくるから、「お前の日本語は汚い」 と。ケンカしたいわけではないけれど、やっぱり腹が立つんだって(笑)。
 異文化摩擦の例であるけれど、日本人同士の場合であっても、上下関係とか敬語という形式に即して、“敬意” を理解していると、韓国人のような反応になる。
 あらゆる人に対して “自ずからなる敬意” を示すことができる人って、精神的にも霊的にも進化している人なのである。 “敬意” の意味がわからない人は、上下関係とか敬語といった形式に従っておくことが最も無難なのだろう。いまどきの若者のように。形式を踏襲することで、いずれその内実を知るという順序も、学ぶ(真似ぶ)という正当な道順である。

 

 

【バイリンガルの効用】
 外国の、全然違う思考形態に触れ、そっちで考えたら、うまくいくことがあるかもしれません。例えば、バイリンガルの人は、英語で考えて困ると、日本語で考えて日本語で解決する。日本語で考えて困ると、英語で考えて解決する。異なるやり方を知っているから、ものの処理の仕方や考え方で、困ることが少なくてすむ。
 日本語ばかりで考えると、グチャグチャになることでも、ドイツ語で考えたら、するする解けたとか。(p.167)
 ドイツはヨーロッパの中でも最も多く外国と国境を接する国だから、言語も意味不明性を回避するために論理的にならざるを得なかったのだろう。日本人からみたら、スイスとかドイツの言語のロジカルぶりは 「アホとちゃう、おまえは機械か!」 っていうほどの感じである。だからこそ、ドイツで厳密で重厚な 「哲学」 が興隆したのである。
    《参照》  『頭がよくなる思考術』 白取春彦 (Discover)

            【静かで確実な改革】

 日本語に堪能な台湾人も 「日本語を話していると日本人でいられるけれど、北京語で話していると台湾人になっちゃう」 と言っている。チャンちゃんがニヤッとすると、「でも、台湾人のお喋りは楽しい騒がしさ。中国人なんてケンカしてるみたいな騒がしさですよ」 と言っていた。
 いずれにせよ、言葉は思考や行動形態と不可分なものである。
    《参照》  日本文化講座⑩ 【 日本語の特性 】 <前編>

 

 

【富山弁と韓国語】
柴 : 電車に乗っていて、富山弁と似たイントネーションが聞こえてきたから、「あれ、富山弁じゃない?」 って、近づいていったの。・・・(中略)・・・。
 そしたらね、韓国語だったの。びっくりしちゃいました。
金 : 確かに、似てますね。あのイントネーション、似てますよ。
柴 : 私ね、韓国で、富山弁と韓国語でケンカしたことあるもん。・・・(中略)・・・。同じイントネーションだから、だいたいケンカできたんですよ。
金 : で、向こうもその気になっちゃうんだ。
柴 : 怒っていることは分かるから。(p.176)
 富山弁って聞いたことないけれど、韓国語って確かにケンカ向きであるのは、日本人なら誰でも思うところである。
 ところで、若者が使っている俗語のチャリンコって、自転車のベルの音から連想された呼び名だと思っていたら、韓国語の自転車であるチャルンケやチャジョンコがルーツだろうと言われているそうである。意外。
 
<了>