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 著者は、戦争で片足を失い、住友生命の社長を務めた方。古典とともに生きた世代の方。


【 『論語』 の真髄は 「忠恕」 】
 『論語』 の真髄はなんといっても 「忠恕」 です。孔子の道は忠恕一貫です。人間社会の基本的条件であると孔子はいっております。「忠」 とは良心に従って誠実に行動すること。「恕」 とは思いやり、愛といってもいいでしょう。 (p.41-42)

   《参照》  『声に出して活かしたい論語70』 三戸岡道夫 (栄光出版)

             【忠恕】 

 


【古典と歴史と経営学】
 「1960年代にオックスフォードに滞在していたときのことを思い出しました。その頃は、オックスフォード大学に経営学の講義がなかったので、どうしてないのかと、教授の一人に聞いたところ、『経営なんていうものは古典と歴史をしっかり勉強すればできるものだ。わざわざ教える必要はない』 というのが答えでした。アメリカ経営学を日本が盛んに輸入している頃でしたから、彼の返答が非常に印象的でした。イギリス人の痩せ我慢といってしまえばそれまでのことですが、やはり一つの見識で、いかにもオックスフォードらしいなと思ったものです」
 私は経営学は勉強したほうが良いと思います。しかし、「古典と歴史をしっかり勉強すれば経営なんてできるんだ」 という見識にも頷くところがあります。 (p.45)



【 「利」 と 「義」 】
「国は利を以って利となさず。義を以って利となす」 出典は『大学』。国家というものは利益を考えてはいけない。義、というのはちょっと難しいけれど簡単に言えば、正義、道義。
「利を見ては義を思う」 出典は『論語』。利益が自分のとこに近づいてきたら、それが本当に義であるかどうか、正しいことかどうかをまず考えなさい、と。 (p.160)

 日朝交渉で、拉致問題の解決を優先する日本は、「義」を重んじ、経済援助ばかりを口外する北朝鮮は、「利」を重視する。儒教精神に叶った国家がいずれであるかは言うまでもない。
   《参照》   『中国古典からもらった不思議な力』  北尾吉孝  三笠書房

             【 『利の元は義』 】


【松下幸之助さんが終生、考え続けていたこと】
 結局、松下幸之助さんは終生、みんなに生き甲斐、働く喜びを感じさせるにはどうしたらいいか、そればかりを考えておられました。 (p.182)

  松下幸之助・著の読書記録

     『人を活かす12の鉄則』

     『人生で大切なこと』

 


【感動と感謝】
[山下] 私、感動というのは感謝の気持ちが先になかったら起こらないと思います。
[新井] なるほど。
[山下] 現実をちゃんと認識して、ありのままの姿を受け入れ、それに感謝する。そうでないと感動はしないと思います。 (p.198)

 感動と感謝をこのように関連づける見解ははじめてである。少しく異様に感じないでもない。
 幸之助さんに抜擢されて松下電器の社長になった山下さんの見解に、関西を地盤とする企業人であるがゆえに、石門心学以来の伝統を感じ取ってしまう。しかし、感動と感謝が地域特性に依存するというのはありえないことである。もう少し、心学の根本を普遍的に考えてみる。
 人ではなく、物に出会って感動することがある。美しいものを見て感動することがある。この場合は、イデアの世界を垣間見たかのような喜びが、人をして感動させるのであることは間違いない。喜びは、おそらく、魂の記憶に秘められていた美しいものに再び巡り合えたことで生ずる。この心理機制を心学的に語るならば感謝ということになるのであろう。
 総じて、魂の気付きの感謝、魂の再会の感謝。これらのことが、時に喜びを介したり、あるいは涙を介したりして、感動となるのであろう。
 ならば、感動に満ちた人生を送りたい人は、感謝する心を常に備えておく必要がありそうである。
 自ら結論らしきものを導き出したところで素直に実行する。「神チャマ、アンガト」 

 

<了>

 

  新井正明・著の読書記録

     『心花、静裏に開く』

     『先哲の言葉』