
世界を支える技術力を保有している日本の中小企業はいくつもある。その中の一つ、小型モーターの技術力で世界を制するシコー技研。著者が社長である。
【インテルが驚いた二つのポイント】
インテルのバイヤーがシコー技研に来たときの会話。
「シコー技研においでになって、どんな印象をお持ちですか」
「驚いたことは二つあります。まず一つは、品質の素晴らしさです。二つ目に驚いたのはシコー技研の本社があまりにもオンボロだということです。まさか、インテルの倉庫よりひどい建物で研究開発しているとは思ってもいませんでした」 (p.32 p.34)
現在のシコー技研は綺麗な社屋なのであろうが、1994年当時は、優れた技術を持ちながら、国内のメーカーには見向きもされず、プレハブ社屋で研究開発をしていたそうである。
アメリカ企業は純粋に品質で評価するけれど、日本企業は社名で評価するというヘンな習慣があるので、高い技術力を持ちながら埋もれているシコー技研のような会社は、アメリカ企業に発掘してもらわなければなりません。(?!?)
【シコー技研のファンモーターは、ペンティアム動作保障の条件】
シコー技研のファンモーターはペンティアム・プロセッサ(コンピューターの心臓部)の標準部品に採用され、正式にマニュアルに記されてペンティアムの動作保障の条件となったというニュースは業界内では驚くべきものとして受け取られた。 (p.56)
ペンティアム・プロセッサの製造技術は、日本人の大見博士によって提供されたものであることは、既に、『復活!日本の半導体産業』 の中に書いています。製造ラインも動作保障も日本の技術なくして世界最高品質PC市場はないということですね。
【トヨタ車にも搭載】
自動車には最低でも20個ほど、高級車などになると70個程モーターが使われる。これだけのモーターの重さを全体で30%軽くするための実験を行い、すべてのトヨタ車に搭載されるモーターを、トルクを落とさずに小型軽量化するのに一役買ったりもした。 (p.142)
世界の技術潮流は、基本的には脱回転の方向へ向かっている。
シコー技研は、回転軸を用いないリニアモーターなどの技術開発ですら、既に高度なレベルを達成しているらしい。
【白木学と黒木遊】
私は、仕事がオフの時は、白木学ではなく 「黒木遊」 と称して思いっきり遊ぶ。 (p.276)
こうは書いてあるけれど、著者の努力してきた過程は尋常ではない。東大受験に2度失敗したことから、それを埋め合わせるために積極的に努力することを志したという風に書いている。努力する才能は、どう見たって凡人並ではない。
なお、シコー技研の 「シコー」 とは、「思考」 のことだという。
【岡野雅行】
白木さんと同様、世界一の特殊技術をもつ中小企業経営者。『俺が、つくる!』 (中経出版) という本を書いている。白木さんと岡野さんの人柄はやはり似ている。しかし著書から伝わってくるエネルギーは岡野さんの方が上かもしれない。
岡野さんがカンブリア宮殿に出演していた時、確か 「同じことを20年続けろ」 といっていた。30年だったかも。これだけで引いちゃいそうな気分になるけど、情熱を燃やし続けられる期間の長い人は、やはり素晴らしい仕事をしている。
凡人は3日かせいぜい3週間。3ヶ月続く人は少なく、3年の人は稀、30年となれば間違いなく世界一になっている。
岡野雅行・著の読書記録
<了>