回転寿司騒動 | 想像と創造の毎日

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写真は注釈がない限り、
自分で撮影しております。

  誰にもオススメできないけど、毎年一度は様子を確認したくなる回転寿司屋さんがある。


  回転寿司というものが世に出始めた頃の家族向けの遊園地を模したファミレスのような外観そのままで、きっと一度も改装されることなく、時代に流されるまま廃れていく、ある意味、ノスタルジックなお店だ。


  みーちゃんが行きたいと言ったけど、私は何度かお断りした。

  ものすごく待つ。待つどころか、注文そのものを忘れるような店だから、せっかちなみーちゃんには耐えられないと思うと言ったのだが、我慢するから行きたいというので連れていった。


  一昨年もひどかったが、去年はもっとひどかった。昔ながらの注文用紙に食べたいメニューを記入するスタイルだが、去年はとうとうその中の半分も、食べられなかった。


  ボックス席には、不自然に座布団が置かれている。そっとそれをずらすと、ソファーの布地が思いっきり裂けていて、中から黄色のスポンジが顔を出していた。


  休日のお昼時真っ盛りだというのに、先客は一組。

  これなら、イケるかもしれない(何が?)。


  いいか。

  ここは、カウンターの中に寿司を握る職人のおじいちゃんが一人。バックヤードには、おばさんと少し若めの男の人の2人しかいない。


  普通のネタを載せるだけの寿司は、おじいちゃんが握るが、巻物やサイドメニュー、そして会計や案内はあの二人だけでやるから、まず出てこないと思った方がいい。

  客の少ない今が、勝負。

  とりあえず、本当に食べたいネタだけを先に一気に注文するぞ。


  本マグロの漬け、サーモンの漬け、しめ鯖、本マス(サクラマスだな)、まぐろのほっぺ、そして、ここは絶対ウニ。ウニの軍艦は今どき珍しい、2貫で550円だ。半分がきゅうりとか、そういうインチキじゃなく、輸入の冷凍ものでもない、前浜産だ。


  軍艦は、バックヤードだから先に頼め。いいな。


  するとスルスルと一発目の注文は滞りなくやってきた。今日は、イケるかもしれない。注文したもの、全部食べられるかもしれない。

  そんなドキドキ感を他所にわいわい呑気に食べていると、カランカランと入り口のドアが開く音がして、私は不穏な予感に苛まれる。


「すいません。注文してた持ち帰りのお寿司、できてますか?」


  一人のおじさんの心配そうな声が、静かな店内にこだまする。


「え?えーと、いつのですか?」


  おじいさんが、惚けた声で問いかける。


「午前中に頼んでたんですけど…」


  お、終わった…。

  オラ達の、寿司ざんまいの時間は終了だ。


  バックヤードから、にいちゃんとおばさんが出てきて、あたふたし始めた。


  第二弾に出した注文表は、よりにもよって、揚げ物、巻物、汁物だ。


  汁物は辛うじてすぐにやってきた。

  そこからピタリと、私たちのテーブルには何も置かれなくなる。


  おじいさんは、棚の下から大きな持ち帰り容器を取り出し、寿司を握り始める。おい!今からかい!


  注文していた客は、諦めた様子で(多分慣れてる)、近くのソファーに座った。


  バックヤードから、にいちゃんがその客にいちいち注文の確認をしに来るのだが、巻物の種類が間違っていたらしく、何度も平謝りしている。


  どうするよ。もう出てこないど。会計してもらうか?けど、揚げ物とかしてたら、申し訳ない。それを確認するために声をかけることも忍びない雰囲気だ。


  この騒動が収まるまで、2杯目のお茶を入れ、気長に待つ。

  

  おじいさんのHPは急激に減り始めたらしく、一つ握るごとに腰を伸ばして押さえ始めた。


「おい!準備中の看板下げとけ!」

  おじいさんの声で、にいちゃんか慌ててバックヤードから出てきて、扉の外に出る。おばさんは、何故か店に出て、容器の整理をし始める。後ろの席の客は、いつのまにかいなくなっていた。何台かの車が駐車場に停まるのを見たが、入口の看板を見たのか、通り過ぎていった。


  片付け終わったのであろうおばさんに、「すみません。さっきの注文はどうなりましたか?」とみーちゃんがすかさず声をかけた。


「えーと、注文?なんでしたっけ??」


「唐揚げとか、カキフライとかなんですけど。えと、作ってなかったらもういいんで、会計お願いします。」


「すみません。すみません。では、会計しますね。」


  愛想はいいのだが、惚けているおばさんだ。

  あの注文表、どこ置いた??


  しかし、あまりにも申し訳なさそうなので、いえいえ、お気になさらず。美味しかったです。と声をかける。


  店を出て、二人で大笑いした。

  だから、言っただろ?

  けど、今日はウニも牡蠣も食えたからラッキーだ。

  みーちゃんは、前もって聞いてから良かったけど、知らなかったら確かにイライラしてたわ。と言った。


  それから二人で、バックヤードの店員になったつもりで改善点を話し合った。

  あの値段からすると、これ以上の人は雇えない。

  あのにいちゃんは、コミュ障っぽいから、まず接客とじいちゃんとのやり取りを辞めさせ、調理に専念させる。

  

  おばさんは、注文表の管理。あと、忙しい時に余計なことしない。

  客が来る前に人気のネタやデザートやザンキ系は、レーンにあらかじめ流しとく。

  そもそも。持ち帰りの注文の多い日は、店をしめろ!

  

  ああ、ここで働きたいな。

  他に競合する店もないし、観光地だし、勿体ない。

  

  でも、なんでかまた行きたい。

  何より、職人のおじいさんは、寿司飯を作るのも握るのも、上手い。

  つか、バタバタしているのがヒヤヒヤするのになんか、面白い。と言ったらひどいかな。