北斎 広重 ふたりの富士、それぞれの富士 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

今年11月にめでたく開館10周年を迎えるすみだ北斎美術館。

それを記念して、今年度は例年以上に、

スペシャルな展覧会がラインナップされています。

その第2弾として現在開催されているのが、

開館10周年記念 北斎 広重 ふたりの富士、それぞれの富士”という展覧会。

浮世絵界における2大トップスター葛飾北斎と歌川広重、

それぞれが描いた富士の絵にフォーカスした展覧会です。

 

北斎と広重、ふたりの富士展
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

意外にも、すみだ北斎美術館で、

北斎の最大のライバル(?)である広重を、

真正面から取り上げるのは、開館以来初めてとのこと。

まさに、開館10周年記念に相応しい展覧会といえましょう。

 

さて、本展の1章で紹介されているのは、北斎の富士。

北斎による富士といえば、何と言っても「冨嶽三十六景」シリーズです。
北斎が70代で発表した代表作中の代表作で、
36図に加えて、のちに10図が追加されたほどの人気を博しました。

本展では、そんな「冨嶽三十六景」シリーズ46図を、

前後期で入替をしながら、実に4年ぶりに全点公開しています。

 

北斎 広重 ふたりの富士 展覧会

 

 

なお、「冨嶽三十六景」シリーズの中でも特に人気の高い3点、

通称「三役」に関しては、作品を入れ替えて前後期とも出展予定とのこと。

 

冨嶽三十六景「山下白雨」の浮世絵

葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》 すみだ北斎美術館蔵 同タイトル作品に入れ替えて通期展示

 

北斎 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏 浮世絵

葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》 すみだ北斎美術館蔵 同タイトル作品に入れ替えて通期展示

 

 

ただし、《山下白雨》の変わり図は、前期のみの展示となっています。

レアなバージョンの《山下白雨》の実物を見たい方は、是非前期へ!

 

北斎 冨嶽三十六景 山下白雨
葛飾北斎《冨嶽三十六景 山下白雨(変わり図)》 すみだ北斎美術館蔵 前期展示(後期はパネルでの展示)

 

 

続く2章は、広重のターン。
こちらでは、広重が描いた富士にスポットが当てられています。
広重といえば、「東海道五十三次」シリーズ、
あるいは、「名所江戸百景」シリーズで知られていますが、
広重は晩年に、『富士見百図』の制作に取り組んでいました。
 
image
歌川広重『富士見百図』 すみだ北斎美術館蔵(通期展示・半期で頁替あり)
 
 
その序文には、広重のこのような言葉が掲載されています。
「葛飾の卍翁(=北斎)は、絵組(=構図)のおもしろきを専らとし、
 不二(=富士)は其あしらひにいたる(=添え物になっている)も多し」。
と、そのように37歳年上の先輩を若干ディスった上で、
自分は実際に目の当たりにした富士の写生をもとにし、
たとえ細部は省略したとしても、ありのままの風景を描いた、と続けました。
北斎と広重の作風の違いは、この辺りにあるようです。
 
なお、絵本だけでなく、広重はその生涯で、
富士を主題にしたシリーズを2つも手掛けていました。
1つは、「冨嶽三十六景」シリーズの20数年後、
1852年頃に刊行された「不二三十六景」シリーズ。
 
image
歌川広重《不二三十六景 安房鋸山》 すみだ北斎美術館蔵 前期展示
 
 
もう1つは、安政5年までに描かれ、
没後の翌6年に刊行された「冨士三十六景」シリーズです。
 
葛飾北斎 冨嶽三十六景「川」
歌川広重《冨士三十六景 さがみ川》 町田市立国際版画美術館蔵 前期展示
 
 
どちらも、三十六景。
北斎の「冨嶽三十六景」シリーズを意識しているのは、確実です。
ちなみに。
「不二三十六景」シリーズも「冨士三十六景」シリーズも、
本展では、前後期入替はあるものの、やはり全点展示されています。
しかも、摺りの状態がとても良いとされる町田市立国際版画美術館版。
浮世絵ファンならば、前後期ともに制覇したいものです。

 

 

さてさて、本展を締めくくる3章では、
いよいよ北斎と広重の直接対決(?)が繰り広げられています。
北斎の「冨嶽三十六景」と、広重の「不二三十六景」および「冨士三十六景」、
さらには、富士が描かれた「名所江戸百景」が比較する形で展示されていました。
 
北斎と広重の富士山展覧会風景

 

 

例えば、こちらは北斎の《冨嶽三十六景 甲州三島越》

 

広重「冨士三十六景」より 富士と大木

葛飾北斎《冨嶽三十六景 甲州三島越》 吉野石膏コレクション すみだ北斎美術館寄託 前期展示

 

 

巨木の太さを測ろうと手を繋ぐ旅人たちがユーモラスな1枚です。

実は、実際にこの場所に巨木があった記録はなく、

笹子峠にあった矢立の杉をモチーフにしたのでは?と考えられているそう。

何にせよ、北斎のイマジネーションによって生まれた光景というわけです。

 

そんな《冨嶽三十六景 甲州三島越》の隣に展示されていたのは、

広重の「不二三十六景」シリーズのうちの《甲斐大月原》という1枚。

 

北斎 広重 ふたりの富士、それぞれの富士展

歌川広重《不二三十六景 甲斐大月原》 太田記念美術館蔵 前期展示

 

 

描かれた場所こそ、違いますが、

富士山の手前に1本の木がある構図は、

北斎へのオマージュなのかもしれません。

 

そのように北斎からの影響を感じられる作品もある一方で、

北斎の《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》の隣に展示されていた、

広重の《不二三十六景 神奈川海上》のように、2人の作風の違いを感じられるものも。

 

広重「冨士三十六景」の富士山と帆絵

歌川広重《不二三十六景 神奈川海上》 太田記念美術館蔵 前期展示

 

 

同じ神奈川沖から望む富士山を描いた作品ながら、
広重のほうからは圧倒的に穏やかな印象を受けます。
こちらを観てしまうと、北斎はややオーバーなような?
広重が言ったように、北斎は構図の面白さを狙いすぎている気もします。
 
ところが、さらにその隣で、
広重の《不二三十六景 相模七里か浜風波》が紹介されていたのですが・・・。
 
冨嶽三十六景「尾張八幡」と富士
歌川広重《不二三十六景 相模七里か浜風波》 山梨県立博物館蔵(前期はパネル展示。後期に出展予定)

 

 

いや、お前もかーい!!

 

広重も時には、構図の面白さを狙っていたようです。

というか、この作品に関しては、むしろ北斎よりもやりすぎています。

 

他にも、北斎ばりに面白さを狙った広重の作品がいくつもありましたが。

その極めつけともいえるのが、「名所江戸百景」シリーズのこちらの作品です。

 

image

歌川広重《名所江戸百景 深川万年橋》 足立区立郷土博物館蔵 前期展示

 

 

亀越しの富士山て!

北斎よりも北斎していました(←?)。

結局のところ、広重も北斎の影響からは逃れられなかった。

北斎と広重の描く不二を対比することで、

いろいろな発見や気づきのある展覧会でした。

星星

 

 

 

 

1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ