物語のかけらを見つけに | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、三鷹市美術ギャラリーでは、

“物語のかけらを見つけに”という展覧会が開催中。

絵本、写真、絵画という異なる分野で、

それぞれ活動を続ける3人の作家を紹介する展覧会です。

 

三鷹市美術ギャラリー「物語のかけら」展3作家紹介
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

まず1人目に紹介されていたのは、酒井駒子さん。

『よるくま』や『金曜日の砂糖ちゃん』といった人気絵本で知られる絵本作家です。

 

酒井駒子展の絵本原画と会場風景

 

 

ちなみに。

『金曜日の砂糖ちゃん』は、世界最高峰の絵本原画展とされる、

ブラティスラヴァ世界絵本原画展で、名誉ある金牌賞を受賞しています。

2006年に“ブラティスラヴァ世界絵本原画展”が、

三鷹市美術ギャラリーで開催された際には、その原画が出展されたそうです。

あの展覧会から実に20年ぶりとなる本展では、

厳選された4作の酒井さんの絵本の原画が展示されています。

 

最初に紹介されていたのは、『はんなちゃんがめをさましたら』。

 

絵本原画:猫と子供の日常風景

 

 

夜中に急に目が覚めてしまったはんなちゃんが、

愛猫とともに、家の中でさまざまな体験をするというお話です。

はんなちゃんが絵本の中でする体験は、

トイレに入ったり、冷蔵庫のさくらんぼを食べたり、

と、ごくごくありふれた日常的な体験ばかり。

ただ、大人にとっては、ありふれたものでも、

子どもにとっては、どれも新鮮な体験だったはずです。

そういえば、子どもの時に夜中に目が覚めて、

親を起こさずに一人でトイレに始めて行ったときは、

怖くてドキドキしながらも、どこか誇らしいような気持ちもありましたっけ。

あの時にしか体験できない感情を、

この絵本の原画を通じてありありと思い出しました。

 

なお、その向かいで紹介されていたのは、『ぼく おかあさんのこと・・・』の原画。

 

酒井駒子 絵本原画「はんなちゃん」と「ぼくおかあさんのこと」

 

 

こちらの主人公は、男の子ということもあって、

はんなちゃん以上に共感するところが多々ありました。

子どもの時に抱いたこうした複雑で繊細な感情は、

そう言えば、大人になってから全く抱いていないですね。

何か大切なものを子ども時代に置き忘れてきてしまったような気がします・・・(汗)

 

 

続く2人目に紹介されていたのは、齋藤陽道さん。

Mr.Childrenのアルバムジャケットの写真や、

窪田正孝さんのフォトブックなども手がける人気写真家です。

 

三鷹市美術ギャラリー、齋藤陽道氏の写真展示
 
 

齋藤陽道さんは、「ろう者の写真家」 として紹介されることもありますが。

ろう者“だから”とか、ろう者“なのに”とかは関係なしに、

被写体の性格や本質を優しい目線で捉えた素敵な写真を発表してきました。

本展では、「七つまでは神のうち」という言葉をテーマに、

大自然と戯れる子どもの姿を捉えた『神話』シリーズが紹介されています。

 

齋藤陽道「神話」シリーズの展示風景

 

 

写真に登場する子どもは皆、齋藤さん自身のお子さんなのだそう。
言ってしまえば、人様の家の子なわけですが、
どの写真もまさに神話のごとき神々しさがあって、
大げさでなく、「神の子」のように感じられました。
子供は国の宝。いや、この世界の宝です。
 
なお、本展ならではの試みとして、
「神話」シリーズの1点が大きな薄い布にプリントされています。

 

幻想的な布にプリントされた、揺れる白い花の写真

 

 

人が通るたびにふわっと揺らぐさまが、なんとも幻想的。

写真を鑑賞しているというよりも、

誰かの記憶の光景を目にしているような感覚になりました。

 

 

3人目に紹介されていたのは、画家の成瀬麻紀子さんです。

 

成瀬麻紀子展の絵画とタペストリー

 

 

不勉強ながら、他のお二方と違って、

成瀬麻紀子さんのことは本展で初めて知りました。

実は、成瀬さんの父である成瀬政博さんも、

『週刊新潮』の表紙絵を30年以上描いている画家。

そして、その政博さんの兄に当たるのが、横尾忠則さんなのだそうです。

 

本展では、そんな芸術界の華麗なる一族の成瀬麻紀子さんが、

本格的に絵を描き始めた1990年代後半から新作までが紹介されています。

 

酒井駒子絵本原画展:はんなちゃん、魚、チェリー

 

 

成瀬は成瀬でも(←?)、あの小説の成瀬とは違って、

破天荒で猪突猛進にグイグイ突き進むような雰囲気ではありません。

むしろ、その逆で観ているだけで、穏やかな気持ちになれます。

しかも、どの作品も初めて目にするのに、

遠い昔、あるいは夢の中で見たことあるような、

どこか懐かしい気持ちになるものばかりでした。

 

 

さてさて、本展で紹介されていた3人は、

ジャンルだけでなく、年代も活動地域もバラバラで、

それぞれ直接的な交流も特には無いようです。

しかし、日常生活で見過ごされがちな、

でも、人にとって絶対に大切な体験や感情を掬い取り、

それらを作品にしているという点では共通していました。

観るだけで、“やさしい気持ち”になれる展覧会。

脳内ではずっとCharaの『やさしい気持ち』が再生されていました。

星

 

 
 
 
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