日本人はやっぱりゴッホが好き。
毎年、日本各地のミュージアムで、
趣向を凝らした展覧会が数多く開催されていますが。
結局のところ、今も昔も大人気なのは、
なんだかんだでゴッホ展であるような気がします。
そんな日本におけるゴッホ展の歴史にその名を刻むであろう、
空前絶後のゴッホ展が、2025年より全国3会場を巡回しています。
その名も、“ゴッホ展”ならぬ、“大ゴッホ展”!
現在、3会場目となる上野の森美術館で絶賛開催中です。
(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)
世界屈指のゴッホコレクションを誇るオランダのクレラー=ミュラー美術館。
その所蔵品から珠玉のゴッホ作品の数々を紹介する展覧会です。
・・・・・ただ、それだけを聞いた限りでは、
これまでのゴッホ展と大きな違いはないような気がします。
そもそも、クレラー=ミュラー美術館所蔵のゴッホ展は過去にも開催されていますし。
では、“大ゴッホ展”のどのあたりが“大”なのでしょう。
それは、第1期と第2期に分かれていることにあります。
現在開催中の第1期では、オランダ時代の作品から・・・・・
フィンセント・ファン・ゴッホ《白い帽子をかぶった女の頭部》 1884年11月-1885年5月
油彩/カンヴァス、44×36cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
フィンセント・ファン・ゴッホ《じゃがいもを食べる人々》 1885年4月、リトグラフ/網目紙、28.4×34.1cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
アルル時代までのゴッホ作品約60点を紹介。
具体的には、27歳で画家を目指した頃の作品から、
パリ時代を経て、ゴッホらしい画風を確立するまでの作品が紹介されています。
それに加えて、バルビゾン派のフランソワ・ミレーや、
印象派のモネやルノワールら、ゴッホが影響を受けた画家の作品も展示。
ゴッホがゴッホになるまで、を辿る展覧会となっています。
ジャン=フランソワ・ミレー《パンを焼く女》 1854年
油彩/カンヴァス、55×46cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
ピエール=オーギュスト・ルノワール《カフェにて》 1877年頃
油彩/カンヴァス、35.7×27.5cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
本展を通じて、何よりも実感させられるのが、「ゴッホは一日してならず」ということ。
展覧会の前半にあたる2階の展示室では、
フロアをまるまる使って、オランダ時代の作品が紹介されています。
この頃のゴッホはバルビゾン派の画家たちに倣って、
農民や労働する姿をモチーフにした絵を多く描いていました。
「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」展示風景、上野の森美術館、2026年
いわゆるゴッホらしさは、まだ感じられず、
かつ、色彩も作風も全体的に暗い印象を受けます。
とにかく暗いゴッホです。
ただ、華やかさこそありませんが
画面内には、清貧で実直、崇高な雰囲気が漂っていました。
そんなオランダ時代の作品でもっとも印象に残ったのが、こちらの素描作品↓
フィンセント・ファン・ゴッホ《大工の仕事場と洗濯場》 1882年5月下旬
鉛筆、黒チョーク、黒インクのペンと筆、茶色の淡彩、不透明水彩、引っかき傷、升目状の跡/簀の目紙
28.6×46.8cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
もしかして、アタックのジェルボールを使った?
と思ってしまうくらいに、洗濯物の白さが際立っていました。
さて、2階の展示室を観終えて1階に降りると、しばしゴッホはお預け。
まずは、ゴッホがパリにやってきた当時に隆盛していた、
印象派や新印象派らの画家たちの作品が紹介されます。
「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」展示風景、上野の森美術館、2026年
オランダ時代の絵画が、セピア調の画面であるのに対し、
印象派や印象派の絵画は、まるでフルハイビジョンのような鮮やかさ!
ゴッホが当時受けたであろうカルチャーショックを追体験したような気分になりました。
実際、ゴッホの絵はパリに来てから圧倒的に鮮やかに。
続く展示室では、パリ時代の傑作の数々が紹介されています。
フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》 1887年4-6月
油彩/厚紙、32.4×24cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
フィンセント・ファン・ゴッホ《レストランの室内》 1887年夏
油彩/カンヴァス、45.5×56cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
中でももっとも色彩が鮮やかに感じられたのは、
新印象派の画家シニャックと出逢った後に制作された《草地》という作品。
フィンセント・ファン・ゴッホ《草地》 1887年4月-6月 クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands
モチーフは、何気ない草地ですが、
絵を描くゴッホの喜びや楽しさといったものが、
画面全体からひしひしと伝わってきました。
多幸感に包まれる1枚です。
ちなみに。
パリデビュー(?)したからといって、
オランダ時代の性格がガラッと変わったわけではないようで。
オランダ時代を彷彿とさせる《燻製ニシン》のような作品も時には描いていたようです。
フィンセント・ファン・ゴッホ《燻製ニシン》 1886年夏 クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands.
燻製された表現が実に見事で、
画面からスモーキーな香りが漂ってくるようでした。
さて、パリ時代の後は、アルル時代へ。
約20年ぶりの来日となるクレラー=ミュラー美術館の至宝、
《夜のカフェテラス(フォルム広場)》が、いよいよ登場します。
フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のカフェテラス(フォルム広場)》(1888年9月16日頃)
キャンバスに油彩 80.7×65.3cm クレラー=ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum,
ゴッホの絵画作品は、本展に限らず、
これまで数えられないくらいに目にしていますが、
《夜のカフェテラス(フォルム広場)》の放つオーラは別格も別格。
目の端に入った瞬間に、心をグッと掴まれました。
作品の前に立って対峙した際には、大げさでなく、
1888年頃の夜のこのカフェにタイムスリップ&ワープした感覚に陥りました。
数あるゴッホの作品の中でも、傑作とされるのも納得です。
さぁ、《夜のカフェテラス(フォルム広場)》以降、
新天地のアルルで、ゴッホの作風はどう変化していくのか!
とても気になるところですが、“大ゴッホ展”の第1期はここまで!
めちゃめちゃイイところでシーズン1が終わるNetflixのドラマのようです。
こんなにも展覧会の続きが気になるなんて!
初めての体験であるような気がします。



┃会期:2026年5月29日(金)~8月12日(水)
┃会場:上野の森美術館













