ちひろ美術館コレクション 魔法の絵本=絵本の魔法 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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世界初の絵本美術館であるちひろ美術館。

そのコレクション作品の総数は、約28000点(!)にものぼります。

中核をなすのは、もちろんいわさきちひろの作品ですが、

それ以外にも、日本を含むアジアやヨーロッパ、アメリカなど、

35の国と地域、228名のアーティストの作品を収蔵しているそう。

そんなちひろ美術館コレクションから、

「魔法」という切り口で選りすぐりの名品を紹介してるのが、

現在、ちひろ美術館・東京で開催中の“ちひろ美術館コレクション 魔法の絵本=絵本の魔法”です。

 

ちひろ美術館コレクション 魔法の絵本=絵本の魔法

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 
 
本展の冒頭で紹介されていたのは、
1870年代に描かれたとされる 《魔女とほうき》

描いたのは、19世紀イギリスを代表する挿絵画家リチャード・ドイルです。

 

リチャード・ドイル《魔女とほうき》
リチャード・ドイル作「魔女とほうき」
リチャード・ドイル《魔女とほうき》 1870年代(推定)

 

 

魔女と言えば、とんがり帽子をかぶった鷲鼻のおばあさん。

そんなイメージ通りの魔女が描かれています。

しかも、マストアイテムのほうきまで。

少なくとも19世紀末には、魔女のパブリックイメージは形成されていたのですね。

 

さて、この絵を描いたリチャード・ドイルは、

ビクトリア期の妖精美術の第一人者とされています。

本展には、その代表作となる詩画集『妖精の国で』も出展されていました。

 

リチャード・ドイルの「旧世界」の挿絵、妖精と鳥たち
リチャード・ドイル『妖精の国で』 1870年刊

 

 

こちらは普段は安曇野館に収蔵されており、

東京館で展示されるのは、とても貴重な機会です。

なお、『妖精の国で』と併せて、リチャードの弟、

チャールズ・ドイルによる『妖精のダンス』も展示されています。

 

ドイル作「妖精のダンス」原画

チャールズ・ドイル《妖精のダンス》 19世紀後半

 

 

ちなみに。

ドイルという名前で、“もしや?”と思った方もいるでしょうが。

何を隠そう、チャールズ・ドイルの息子は、

『シャーロックホームズ』の作者コナン・ドイル。

コナン・ドイルといえば、妖精の合成写真を、

「本物だ!」と信じてしまったことでも有名ですが(俗にいう、コティングリー妖精事件)。

父と伯父が妖精画家だったのなら、信じてしまったのも納得です。

 

さて、本展には他にも、安曇野館で個展が絶賛開催中のユゼフ・ヴィルコンや、

 

魔法の絵本:まねっこねこちゃん

ユゼフ・ヴィルコン《夜のなかの夜『魔法の森で プーシキンからエセーニンまで』より》 1985年

 

 

東京都美術館で個展が絶賛開催中のエリック・カール、

 

リチャード・ドイル《魔女とほうき》

エリック・カール《こうもり『イソップの12の物語』習作》 1991年

 

 

“イメージの魔術師”と称されるエロール・ル・カインといった、

 

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エロール・ル・カイン『魔術師キャッツ』 1990年

 

 

絵本界の巨匠たちによって描かれた、

“魔法”に関する絵本の原画の数々が展示されています。

それらの中には、“ナンセンスの神様”と称された長新太の作品も。

 

ちひろ美術館の絵本「魔法」展の作品
長新太『まねっこねこちゃん』 1996年

 

 

紹介されていたのは、『まねっこねこちゃん』。
どんなものにも変身できる不思議な猫のお話です。
絵本では特に「猫=魔法使い」というわけではなさそうですが。
こうした現実にはあり得ない、ノンセンスな状況を、
すんなりと受け入れられるものにしてしまうのが、絵本の力。
そういう意味では、絵本そのものが一種の“魔法”と言えましょう。
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ちなみに。
ちひろ美術館・東京では現在、コレクション展とともに、
“いわさきちひろ「とても素朴なんだけれど たいせつなもの、それが絵本の中にはあるんです。」”が同時開催中。

B'zの『愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない』ばりに長い、

「とても素朴なんだけれど~」というタイトルは、ちひろが記した文章の一部を抜粋したものです。

 

ちひろ美術館の「魔法の絵本」展、展示風景

 


ちひろは生前、絵画やスケッチだけでなく、

日記や手帳、エッセイなどに多くのことばを遺しました。

本展はそれらの言葉とともに、ちひろの絵を紹介するものです。

 

ちひろ美術館、あごに手をおく少女
いわさきちひろ《あごに手をおく少女》 1970年
 
母の日の絵、母と子、カーネーション
いわさきちひろ《母の日》 1972年
 
 
紹介されていた言葉は、どれも印象的でしたが・・・・・
 

いわさきちひろの戦争体験と絵本への思い

いわさきちひろ、童画、リアリズム、モダニズム

 

 

個人的にもっとも印象に残っているのは、こちらの言葉です。

 

ちひろ美術館「魔法の絵本」展示文

 

 

「駄作でいいですよ。」と頼まれた結果、
ちひろは絵と文を初めて手掛けた絵本を作りました。
それが、『あめのひのおるすばん』。
ちひろの代表作にして、絵本史に残る傑作です。

 

ちひろ美術館の絵本展示風景
いわさきちひろ「あめのひのおるすばん」原画

 

 
「売れる本を作ってください!」や、
「渾身の一冊を描いてください!」では、
結局のところ、いい本なんて生まれないのかも。
「駄作でいいですよ。」というオファー、いつか僕のもとにも来ますように。
 
 
 
 

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