83歳の時に初めて訪れてから亡くなる直前まで、
実に4度もわたって訪れ、制作活動をした長野県小布施町。
そんな“栗と北斎と花のまち”小布施にある北斎館は、今年にめでたく開館50周年を迎えます。
それを記念して今年2026年は例年以上に、
スペシャルな展覧会の数々がラインナップされているようです。
そのトップバッターを飾るのは、“北斎vs福田美蘭 小布施へのメッセージ”。
日本を代表する現代美術家・福田美蘭さんが、
葛飾北斎の作品に真っ向から挑んだ特別展です。
なお、現代アーティストとのコラボ展は、開館50年目にして初とのこと。
北斎館にとってもチャレンジングな展覧会です。
本展のために制作された新作は、実に約15点!
それ以外にも、北斎館に寄贈された福田さんの旧作も、本展で初お披露目となっています。
その中でも特に見逃せないのが、メインビジュアルでもある《怒濤図》。
本作の元ネタとなっているのは、北斎館が誇る至宝で、
北斎唯一の立体造形物とされる小布施上町の祭屋台の天井部分に描かれた、
「男浪(おなみ)」と「女浪(めなみ)」の2図からなる《怒濤図》です。
(注:祭屋台の天井に飾られているのは精巧なレプリカ。間近で鑑賞できるよう、実物は降ろされて展示されています)
男浪と女浪が激しくぶつかり合いながら、
一つになることで、新たな生命が生まれてくるような。
そんな生命のダイナミックさも感じられる作品でした。
ところで、こちらの福田さんによる《怒濤図》、
北斎の《怒濤図》をパソコンのソフトか何かで組み合わせ、
それをパネルに出力したものかと思いきや・・・・・すべて手描きなのだそう!
北斎が描いた波や波しぶきの再現はもちろん、
周囲を囲む縁絵やその表面の剥落した部分まで、完璧に再現されています。
男浪と女浪を組み合わせるアイディアもさることながら、
北斎に引けを取らない画家としての技量にも驚かされました。
さてさて、北斎による肉筆の天井画と言えば、
北斎館から約2kmの距離に位置する岩松院の本堂に、
北斎の最晩年の傑作とされる《八方睨み鳳凰図》があります。
新作の《岩松院本堂天井絵 鳳凰図》は、その鳳凰図を水の表現に変容させたもの。
岩松院の鳳凰図は色鮮やかな天井画ですが、
『北斎漫画』に登場する水の表現をモチーフにしているため、
本作は、あえてモノクロで構成したのだそうです。
なお、岩松院の鳳凰図は、畳21畳分もある超巨大な天井画。
さすがに、福田さんの作品はその大きさまでは再現されていないですが。
岩松院での天井画の鑑賞体験が味わえるよう、展示室の天井に、
《岩松院本堂天井絵 鳳凰図》を同サイズに拡大したものが設置されていました。
ちなみに。
このために、展示室に畳が敷き詰められ、
クッションやヨギボーも用意されたそうです!
鑑賞者は寝っ転がりながら、天井の絵を鑑賞することができます。
福田美蘭さんの発想力も素晴らしいが、
それを全力で受け止め、実現させた北斎館も素晴らしい!
まさに、50周年に相応しい最高のコラボレーション展です。



どの作品ももれなく最高でしたが、
最高傑作だと感じたのが、《日新除魔図》。
《日新除魔図》とは、83歳の北斎が、除魔(魔を払う)のために、
プライベートで毎日描いていたという獅子や獅子舞の絵の総称です。
北斎はそれらの絵を描き終えると、丸めてポイッと家の外に捨てていたのだとか。
それにちなんで、福田さんも思いつくままに、
魔や煩悩を払うものを半紙に描いてみたそうです。
それらの中には、おみくじや達磨のように伝統的なものもあれば、
迎撃ミサイルやゴキブリホイホイのように現代的なものもありました。
これだけでも作品として十分成立している気がしますが、
福田さんは令和版《日新除魔図》を制作するだけでは飽き足らなかったようで。
《日新除魔図》を画室から投げることの再現も試みました。
そこで考案されたのが、こちら↓
「これはきっと北斎の波の絵を意識しているに違いない!」
そう思い至った福田さんの頼みを受け、
担当学芸員さんは販売元のキリンを直撃!
しかし、その結果は、カジュアルなイメージにした、
日本人の好みに合わせただけで、特に北斎は意識していないというものでした。
・・・・・・どう見ても、波を意識している気がするけど。
富士山っぽい部分もあるし。
福田さんも同じく、なんとなく納得がいかなかったのでしょう。
その結果を踏まえた上で、来場者にアンケートを取っていました。
ちなみに。
この作品を通じて、北斎館とキリンは決して敵対しているわけではなく。
北斎館のミュージアムショップでは現在、フランジアも販売されています(笑)














