現在、東京オペラシティアートギャラリーでは、
“拡大するシュルレアリスム”という展覧会が開催されています。
20世紀最大の芸術運動ともされるシュルレアリスム。
その発端を作ったのは、画家や彫刻家ではなく、
フランスの詩人で文学者のアンドレ・ブルトンです。
彼は今からおよそ100年前の1924年に、『シュルレアリスム宣言』という書を出版しました。
本展の冒頭に展示されているのはもちろん、その『シュルレアリスム宣言』です。
本展は、全6章構成。
シュルレアリスムを分野ごとに紹介しています。
まず第1章は、「オブジェ」。
“現代アートの父”とされるマルセル・デュシャンは、
帽子掛けやシャベルといった既製の日用品を素材に選び、
その用途を奪うことで、「オブジェ」という新たなアートに生まれ変わらせました。
さらに、デュシャンの唯一無二の親友だったマン・レイも、
無数の鋲を取り付けることでアイロンとしての機能を無にした《贈り物》や、
メトロノームに別れた元カノの眼の写真を取り付けた《破壊されざるオブジェ》など、
シュルレアリスムを代表する数多くのオブジェを制作しています。
本展ではそれらオブジェの傑作も展示されていました。
さて、そのオブジェ越しに見えているのは、第2章の「写真」です。
19世紀前半に誕生した写真。
その当時は美術というよりも、被写体をそのまま写すための装置・技術に過ぎません。
しかし、シュルレアリストたちは、実験的な技法を駆使することで
写真を日常的なモチーフを斬新で謎めいたイメージへ転用させる美術へと昇華させたのでした。
ちなみに。
第2章で紹介されていた数々の写真の中で、とりわけ印象に残っているのが、
ドイツに生まれ、フランスで活動したヴォルスの《美しい肉片》という写真作品。
モノクロ写真なので、ぱっと見、石のようにも思えますが、
その被写体の正体はタイトルにもあるように、生の肉片です。
調理場ではなく、岩肌のようなところに置くことで、強烈な違和感が放たれていました。
なお、ヴォルスは38歳という若さでこの世を去っています。
その死因は、腐った馬肉を食べたことによる食中毒。
《美しい肉片》は何かの暗示だったのかもしれません。
さて、本展のハイライトともいえるのが、第3章「絵画」。
シュルレアリスムの絵画に多大な影響を与えたデ・キリコをはじめ、
シュルレアリスムを代表するダリやミロ、
そして、マグリットの絵画も取り揃えられており、
シュルレアリスファンにはたまらない空間となっています。
なお、第3章に限らず、本展の出展作品は、
思わず目を惹くシュルレアリスムのビジュアルは、
当時のポスターや雑誌の表紙などに多く採用されています。
過去に多くのファッションの展覧会を手掛けてきた、
東京オペラシティアートギャラリーの真骨頂とも言えるのが、第5章。
こちらの章では、ファッション界とシュルレアリスムの関係が紹介されています。
日常を非日常的に変えたいシュルレアリストにとって、
日常生活を営む室内空間は、重要な関心の対象でした。
それゆえ、彼らの作品にはたびたび室内が登場します。
さらに、シュルレアリストたちを支援した人々の中には、
シュルレアリストによるインテリアで自身の邸宅を飾るものや、
シュルレアリストに直々に室内装飾をオーダーするものもいました。
なるほど。
シュルレアリスムは拡大に拡大を続け、
最終的にはシュルレアリスムの住人になるものまでが現れていたのですね。
まるで『世にも奇妙な物語』のような。
シュルレアリスムは小説よりも奇なり、です。


ちなみに。
シュルレアリスムの展覧会の開催に合わせて、
1フロア上の収蔵品展では、寺田コレクションより、
“幻想の景色と不思議ないきものたち”が同時開催中。
いつもより余計にシュールな作品が展示されていました。
中でも強く印象に残っているのが、
ヒラキムツミさんによるこちらの作品です。
タイトルは、《やさしいトナカイ》とのこと。
こう見えて(←?)、やさしいようです。
ヒトもトナカイも見た目で判断してはいけませんね。















