美を味わう―懐石のうつわと茶の湯 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、静嘉堂文庫美術館で開催されているのは、

“美を味わう―懐石のうつわと茶の湯”という展覧会。

茶道具や陶磁器のコレクションにも定評のある静嘉堂文庫美術館ですが、

意外にも、「懐石のうつわ」を中心に取り上げる展覧会は開館以来初めてだそうです。

 

懐石料理というと、料亭で政治家や実業家が食べているイメージがありますが(←?)。

そもそもは、フルコースの正式な茶会とされる“茶事”において、

その後に提供される抹茶を美味しく味わうために空腹を和らげ、心身を整える食事のこと。

一汁三菜を基本として、最初にご飯と味噌汁、

続いて、椀物や焼物といったおかずや酒の肴、

最後に水菓子で締めくくる流れが一般的とされています。

本展の第1章では、そんな懐石の流れを、

静嘉堂が所蔵する「懐石のうつわ」を交えて紹介。

飯椀や汁椀などの参考出品もあったことで、

実際にどのような形で提供されるのかが、想像しやすくなっていました。

 

藍染付花鳥文向付と徳利

《伊羅保徳利》 朝鮮時代(17世紀)/《染付山水花蝶文三つ組盃》 中国・明~清時代(17世紀)

 

懐石のうつわ:染付花鳥文向付と汁椀
《祥瑞唐子唐草文向付》 中国・明~清時代(17世紀)
(注:展示は5月6日まで)

 

 

続く第2章が、ある意味で本展のハイライト。

懐石道具の華とされる「向付」にスポットを当てた章で、

静嘉堂コレクションが誇る「向付」が一挙展示されています。

向付とは、懐石で最初に出される料理、

主には刺身や酢の物といったものを盛るための器。

客の向かい側に置かれていたことから、「向付」と呼ばれるようになったそうです。

懐石のあいだ中、客の前に置かれ続け、

手に取って、顔に近づけて眺められることもある向付は、

季節感や亭主の意図を表現する重要な器とされています。

そのため、一口に「向付」といってそのバリエーションはさまざま。

有田の金襴手様式の豪華絢爛な向付もあれば、

 

懐石のうつわ、向付、茶道具

《色絵牡丹麒麟文向付》 江戸時代(18世紀前半)

(注:展示は5月6日まで)

 

 

織部の変形的な形状の向付、

 

懐石のうつわ 織部 向付

《織部角繋ぎ向付》 桃山~江戸時代(17世紀前半)

 

 

舟の形をした京焼の向付もありました。

 

舟形京焼向付5客

《錆絵舟形向付》 江戸時代(18世紀)

 

 

本展で紹介されていた向付の中で、

とりわけ印象に残っているのが、《阿蘭陀染付花鳥文向付》です。

 

阿蘭陀染付花鳥文向付と茶道具

《阿蘭陀染付花鳥文向付》 オランダ(17世紀)

 

 

「阿蘭陀」とは、江戸時代にオランダ東インド会社を通じて、

日本にもたらされたヨーロッパ陶器(主にデルフト窯)を総称する用語。

これらの向付は、大名家より発注されたものと考えられているそうです。

確かこの時代に、同じオランダ東インド会社によって、

古伊万里がヨーロッパ諸国より発注を受け、輸出されていたはず。

日本もヨーロッパも、隣りの芝生が青く見えたのか、

お互いそれぞれが海外の陶磁器を欲していたのですね。

 

 

さてさて、第3章では、鉢や銚子など、
懐石に使われる向付以外のうつわの数々が紹介されています。

 

阿蘭陀染付花鳥文向付
《呉洲赤絵花鳥文鉢》 中国・明時代(17世紀前半)
 

 

それらの中には、野々村仁清の《白釉輪花透かし鉢》や、

 

織部向付 舟形 懐石うつわ

野々村仁清《白釉輪花透かし鉢》 江戸時代(17世紀)

 

 

尾形乾山による《色絵定家詠十二ヶ月花鳥図色紙皿》など、

 

懐石のうつわ:鳥と植物の絵柄
尾形乾山《色絵定家詠十二ヶ月花鳥図色紙皿》 江戸時代(18世紀前半)

 

 

江戸時代を代表する陶工による名品も含まれています。
なお、意外なところでは、竹内栖鳳や堂本印象といった、
京都画壇を代表する絵師が絵付けを担った四方盆も展示されていました。
 
漆絵竹図四方盆と木製向付
 

 

 

こちらの章で紹介されていたうつわの中で、

ひときわ目を惹かれたのが、17世紀有田の《色絵丸文台鉢》です。

 

阿蘭陀染付花鳥文向付:色彩豊かな懐石の器

《色絵丸文台鉢》 江戸時代(17世紀)

 

 

大胆な構図にて、大胆な色遣い。

とても300年近く前の、それも、日本のデザインとは思えませんでした。

マリメッコとか北欧デザインと言われたら、疑うことなく納得してしまうと思います。

 

それから、もう一つ(正確には、一組)印象に残っているのが、

千家十職の一つ、一閑張細工師・飛来一閑による《溜塗紅葉張交々盛》です。

 

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飛来一閑《溜塗紅葉張交々盛》 明治時代(19世紀後半~20世紀前半)
 
 

一閑張(いっかんばり)は漆工芸の一種で、

木地に和紙を重ねて張り、漆を塗ったもの。

この15枚の《溜塗紅葉張交々盛》は、

パッと見、どれも同じように見えますが、

実は、木地と漆の間に紅葉が塗り込められています。

しかも、龍田川や高野山など、15枚すべての産地が違うのだそう。

ちなみに、宮嶋と日光の紅葉は他と比べて巨大でした。

大きな紅葉が必要になったら(←?)、宮嶋か日光がオススメです。

 

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さて、1章から3章で懐石気分をたっぷり味わった後、

4章では、いよいよ茶席の気分を味わうことができます。

それも、極上の茶席。

静嘉堂が誇る茶道具コレクションから、

今日の懐石の形に大きな影響を与えた茶人、千利休と、

その利休が使えた豊臣秀吉にゆかりある逸品が主に紹介されています。

 

青磁の象嵌風花鳥文水注
《青磁鯱耳花入》 南宋時代(13世紀)

 

 

中でも見逃せないのが、《黒楽茶碗 紙屋黒》

 

織部向付 歪んだ器

長次郎《黒楽茶碗 紙屋黒》 桃山戸時代(16世紀後半)

 

 

千家十職の一つである樂家の初代、長次郎による名品で、

いわゆる朝鮮出兵で九州を訪れた秀吉への献茶のために、

博多の豪商であった神屋宗湛が作らせたものとされています。

その後、宗湛が秘蔵したため、「神屋黒→紙屋黒」と呼ばれるようになったとか。

シンプルながら得も言われぬオーラを放っており、

「これぞ完璧な形」というような絶対的な説得力がありました。

 

なお、秀吉ゆかりといえば、足利義満が入手し、

その後、信長、秀吉、家康と天下人たちの手を渡った大名物。

《唐物茄子茶入 付藻茄子》も出展されています(展示は5/6まで)

 

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《唐物茄子茶入 付藻茄子》 南宋~元時代(13~14世紀)

(注:展示は5/6まで)

 

 

なお、静嘉堂のマスターピースというべき、

国宝の《曜変天目》も前後期ともに展示されていますよ。

これはやきものファンなら行くしかありません!

星星

 

ただし、本展を観ると、一つだけ困ったことが。。。

それは観終わった後、ほぼ確実に懐石料理が食べたくなること。

どうやって解決すればよいものやら(悩)

 

 

 

 

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